2022年12月 4日 (日)

『誰のために愛するか すべてを賭けて生きる才覚』(曽野綾子・青春出版社)の感想

 書籍『誰のために愛するか すべてを賭けて生きる才覚』(曽野綾子・青春出版社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 こちらの本は、以前にご紹介した、『生きるのはひとり その人に生命(いのち)を燃やそうとするとき』(戸川昌子)と同じ出版社で、奥付によりますと、発行時期は、「昭和46年11月15日 第463刷発行」で、当時のベストセラーであったのかもと、私は予想しています。
 内容は、やや恥ずかしいサブタイトルですが、難しい男女関係をいかにうまく乗り切っていくか、というよりも、充実した夫婦関係を維持できるコツを、作者様自身の実例を挙げて著したものです。
 私は現在、この作者様はあまりに右翼的で、かつ上から目線の論調に感じられてならず、さっぱり読まなくなっていたのですが、久しぶりに読んでみて、すんなり、すっきり頭に入り、夫の三浦朱門氏とのやり取りなどが楽しそうに思われました。
 女性著作者が、同性向けに描かれた作品は、かくあれかしとか、こうしなくてはいけない、みたいな説教調ばかりで、タイトルを見ただけで、私はうんざりさせられてきましたが(西原理恵子とか)、この作品は素直さと自然なユーモアがあって、好感が持てます。


 

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2022年11月26日 (土)

『零戦少年』(葛西りいち・秋田書店)の感想(追記)

 コミック『零戦少年』(葛西りいち・秋田書店)の感想の追記いたします。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 私はつい、かわいい絵柄に注目して見落としておりましたが、中心人物達は皆、一筋縄ではいかない性格と過去を持っております。
 たとえば、主人公の安男氏は、零戦パイロットになって成り上がりたい、つまり、大金をもうけて、大勢の女性とやり逃げしたいと、当初は希望していたのですが、表向きは日本男子として役立ちたいと、いい恰好をしておりました。コテコテの大阪人のはずだった逢坂は、裕福な実家に居場所がなく、家族は無関心(もっとも不幸な人物かも)。口数は普通ながらも無表情で、重要な質問を無視する悪癖の清水は、非常に家族思い、というわけです。
 私の一番のお気に入りキャラクターは、語り手の安男氏をおさえて、逢坂です! ストレートに安男氏にからむかと思えば、女子挺身隊の少女達をナンパしまくり(当然不成功)、浪費して空腹に苦しむと、おバカな面もありますが、特攻前のメッセージが泣かせます。
 

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2022年11月23日 (水)

『零戦少年』(葛西りいち・秋田書店)の感想

 コミック『零戦少年』(葛西りいち・秋田書店)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 この漫画は、太平洋戦争体験系作品として、かなりの傑作だと、私は思います。以前にレビューした、『この世界の片隅に』と対角線上をなす、零戦操縦士ならぬ特攻するはずだった少年の、痛切な青春物語です。
 大学受験に失敗した作者様が、大分でコンビニを経営する祖父の安男氏の元へ転がりこみ、零戦に乗っていた頃のことを聞き、十三年後にその体験談を漫画化したというもの。
 通常なら、私は主人公を呼び捨てにしますが、実在された方ですので、今回は安男氏と書かせていただきます。
 あらすじとしては、農家の十一人兄弟の末っ子として生まれた安男氏は、ひたすら成り上がるため、零戦パイロットを目指します。海軍の予科練に合格、入学し、出水航空隊へ配属されるうち、コテコテの大阪人で先輩格の逢坂広、リーダーとなる清水茂と知り合い、三人で隊を組むことに。
 三人が厚木、千歳と異動し、昇格していくのと裏腹に、日本の戦況は急激に悪化。偵察に行ったサイパンとテニアンは米軍に制圧され、北方では仲間が撃墜され、フィリピンではついに、特攻命令が。予科練の知人で臆病者だった寺岡が、真っ先に志願して戦死。安男氏はマラリアにかかって寝ついた時、逢坂、清水が特攻へ。生き残った安男氏は帰国し、茂原でB29相手に戦うことに。けれども、東京大空襲は間に合わず、「絶対に次の出撃(特攻)で死ぬ」と、決心した安男氏ですが、敵機を見つけられないまま、空しく帰還。そうやって、玉音放送の後、涙にむせ返るのでした。

 それでは、まず、いただけない点から挙げますね。
1.良くも悪くも、かわいくてギャグタッチの絵。
 四コマ漫画風というのでしょうか。内容の重厚さ、深刻さに反比例しており、特に前半は、不謹慎な戦争コメディか? と、誤解されそうです。実際、私もそうでした。零戦コクピットの構造と登場人物の体格との比例も、あれ? という部分があり、かわいい絵柄とのミスマッチは、個性ともいえるのでしょうけれども。
2.少しだけですが、下ネタっぽい描写があります。
 ふんどしや、いわゆる、かっこ悪い姿ですね。
 

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2022年11月19日 (土)

『生きるのはひとり その人に生命(いのち)を燃やそうとするとき』(戸川昌子・青春出版社)の感想

 書籍『生きるのはひとり その人に生命(いのち)を燃やそうとするとき』(戸川昌子・青春出版社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 発行年度が昭和49年と、なかなか年季の入った本です。そして、「その人に(以下略)」が、サブタイトルっぽいのですが、恋愛論というよりも、歌手で小説家である作者様のエッセイです。
 それにしても、「前章1 女が忘れようとしている実感-何が得たいために生きるのか」「中章3 自己愛を持たない自分はダメになる-自分のためにどう考えればいいのか」等々、恋愛に悩む若い女性向けらしく、章タイトルも凝っていますが、やはり、作者様による等身大エッセイです。だから、恋や結婚に悩む方が読むには、拍子抜けするかもしれませぬ。
 でも、私は結構好きです、けれども。
  ↑
(称賛しているのか、批判しているのか、どっちなんだよ←自主ツッコミ)

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2022年11月 6日 (日)

『図説 日本戦陣作法事典』(笹間良彦・柏書房)の感想

 書籍『図説 日本戦陣作法事典』(笹間良彦・柏書房)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 これは、時代小説の構想や設定を練ったり、戦国時代の背景を考えたりするのに、非常に役立つ資料です。
 説明文はもちろん作者様でしょうが、詳細なイラストも、そうなのでしょうね。
 巻末の合戦用語集(文字ばかり)と八章の軍装(イラストメインで説明少々)を除けば、見開き右ページに説明、左ページが図画と、見やすく、目的の項目を探しやすい、親切構造です。
 だだ、例によっていただけない点を挙げましょう。
 合戦用語集ですが、三段組の細かい字で、使用例として現代語訳でなく、原文を取り上げられていますので、読み辛くて、退屈でした。よく読むと、なかなかおもしろい内容が多かったのですが、これは私の日頃の不勉強ゆえでもあります。
 もう一つ、第二章の着到。奈良時代、源平時代、小田原北条氏までは、すんなりと、興味深く読めます。けれども、「江戸幕府規定の着到「となりますと、二百石、三百石……三万石、四万石、五万石と、読んでいるというより、読む修行を強いられているような……。スケールが大きいこと、必ずしも石高の多さによって人馬や装備も増えていくものではないのは、充分にわかったから! と、私は心の中で叫んでしまいましたよ。
 しかし、難点はこのくらいで、この本は古代から続く、戦い、武士の戦を知る上で、大変参考になると思います。

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2022年10月23日 (日)

『夢喰見聞』全9巻・『夢喰見聞 妄鏡堂』(真柴真 スクウェア・エニックス)の感想(追記)

 前回の感想は、ちと不親切仕様でしたので、追記いたします。
 私の一番気に入っている、作中の登場人物は、2巻の「第拾弐夜 獏」でデビューする、三角一二三(みすみ ひふみ)です。成金でまわりから高等遊民と呼ばれている、チャラい外見の青年で、霧霞に一目惚れして銀星館の下宿人になりました。一方的に蛭孤を恋のライバル認定して張り合いもしますが、人外の彼と普通に会話し、世話を焼くこともある、意外と面倒見が良くて常識人であるところがいい、と思います。
 それでは、お気に入りのお話をいくつか挙げます。

 第壱夜 下り階段(1巻)
 いわゆる一発目から、びっくり仰天のお話でした。一人きりで死んでいる「お嬢様」を思いやる、純粋な少年。彼の見る悪夢は不可解でしたが、彼自身も人でなく、名前さえもない存在だったという……。彼の願いはかなえられましたが、不思議な寂寥感が残りました。

 第伍夜 文字(1巻)
 作者様もお気に入りのお話だそうです。
 十年前、父を殺したのではないかと、悩む少年。寸前の記憶がなく、父の命日のたびに、現場だった蔵の中の物が、文字に変じてしまい、特に、父の字に押さえつけられて動けない。そのわけは……というお話。不気味なビジュアルに反して、心温まる結末だったのが、実に意外でした。他にも、ヒントになった鼠がかわいいです。

 

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2022年10月15日 (土)

『夢喰見聞』全9巻・『夢喰見聞 妄鏡堂』(真柴真 スクウェア・エニックス)の感想

 コミックス『夢喰見聞』全9巻とその外伝『夢喰見聞 妄鏡堂』(真柴真 スクウェア・エニックス)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 ジャンル的には、伝記というより、怪奇幻想でしょうか。いくつかの部分は首をひねりましたが、まず、おもしろく読めました。
 時代は大正末期で、舞台は関東大震災の記憶が生々しい帝都の一角にある、喫茶「銀星館」。そこを経営する少女、霧霞(みづき)とともにいる、悪夢を糧に生きる「獏(ばく)」の蛭孤(ひるこ)。一見、風変わりな少年の外見ながらも、悪夢に悩む来訪者の相談に応じて、その夢の中に入って解決し、代償として、悪夢を小さな玉状にしてもらい受け、食べてしまいます。依頼人は老若男女さまざまであるどころか、人でない存在もいますし、秘密の願望や恋、犯罪まであって、おどろおどろしい世界なのですが、蛭孤としては、「さあ眠れ しばし現(うつつ)にお別れだ」と、声をかけて依頼人を眠らせ。
「血染めの悪夢は 特に美味いんだ」
「尤も僕は悪夢を喰えるなら それに越した事ないけどね」
 などと、言うのでした。
 2巻以降、騒々しい下宿人、一二三、妄想に憑かれた者が訪れる妄鏡堂の主人の戒吏と使用人(?)のシマ、温厚そうな外見でありながら残忍な性格の獏の月白、霧霞の兄で先代の獏、梓など、個性的な人物達も加わっていきます。そして、蛭孤が人間だった頃の凄惨な過去と、彼が対峙する悪夢等々。
 ほぼ一話完結ですけれども、前後編にわたるお話もいくつかあり、最終の9巻は、蛭孤自身の悪夢をめぐって、蛭孤の過去を知っているらしい少女、神志名が現われ、月白、梓が暗躍するというもの。
 こうやって説明すると、まさに怪奇で猟奇、純愛であるかと思えば、皮肉な結末になることもありで、ストーリー的には、おもしろかったのですが。
 ただ、いくつかの点については、どうも納得できず、熱中できなかったのは事実です。そのことについて、次に挙げましょう。





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2022年10月10日 (月)

『信長の忍び』19巻(重野なおき・白泉社)の感想

 四コマ漫画『信長の忍び』19巻(重野なおき・白泉社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 もう19巻! なのですが、安定のおもしろさでした。何度も繰り返しているでしょうが、やっぱりすごい、すばらしい。
 あらすじとしては、戦国大名(織田信雄)VS忍びという、前代未聞の合戦、天正伊賀の乱が開戦されます。織田軍にも、柘植保重という、勇敢で忠実な重臣がおりましたが、11人の精鋭忍び達に苦戦した挙句、柘植は討死して敗退。千鳥さえも負傷します。
 次に、荒木村重が脱出した有岡城が落ち、黒田官兵衛は助けられました。けれども、荒木側の妻のだし他の家族、城兵、下人らが、信長によって無惨に処刑されます。
 さらに、10年間も敵対し続けてきた本願寺が、ついに降伏。ただし、息子の教如は頑強に反対していたため、顕如は彼を義絶しました。
 四か月後、教如がやむなく退出した後、その石山本願寺が放火か失火か、とにかく全焼してしまいます。その責任を取らされる形で(他にも19条の失態あり)、重臣の佐久間信盛が追放されます。
 有岡城関係者の処刑、佐久間他の三人の重臣叱責、追放といった信長の処断に、明智光秀は、一人ひそかに衝撃を受けていたのでした。ここで終わり。
 次は、第二次天正伊賀の乱に続くそうです。

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2022年10月 9日 (日)

『吉村昭の平家物語』(講談社文庫)の感想

『吉村昭の平家物語』(講談社文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
 他に、注意事項として、今回の感想は、かなり辛辣です。日本文学と平家物語に強い思い入れがあって、それを批判するのは許せないという方は、絶対にお勧めできません。そのため、コメントは受け付けない設定にいたしました。ご了承ください。

 あらすじは、もう説明するまでもありませんね。
 私は学生時代、この平家物語の原書をテキストとして学習しましたが、どうにもこうにも退屈で、腹立たしくてなりませんでした。
 いい加減に内容もうろ覚えになっているし、名著として評判のいいこの本なら、きっと感動できるだろうと期待したのですが。
 駄目でした(泣)。
 それでは、いただけない点から参りましょう。

1.戦記物としてなら、超退屈。
 三国志演義や太平記の方が、はるかにおもしろいです。
 前者は、主人公のライバルさえ、何度も命の危機におちいりながら、復活しています。後者は、南朝寄りですが、どちら側にも人格者や問題ある人物、見事な策略を描いています。
 ところが、平家物語では、義経は奇襲ばかりだし、それならば、平家側にも対策があろうはずなのに、どちらも何をしていたのやら。

2.仏教を持ち出して、自殺を美化するな!
 壇ノ浦で、負けた平家側の入水なら、わかります。一族と自らの名を惜しみ、敵に捕らわれて、あざけられたくなかったからですよね。
 しかし、小宰相や維盛の脆弱さには、うんざりいたしました。
 念仏は、極楽へ向かうための方便ではありませぬ。

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2022年10月 1日 (土)

『現代漫画7 小島功集』(筑摩書房)の感想

 漫画書籍『現代漫画7 小島功集』(筑摩書房)の感想を申します。些細ながらネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 奥付の発行年月日が、1969年8月20日第一刷だそうで、かなり古い本です。そのせいか、作者様の現住所まで載っていますが、今ではこれ、アウトでしょうに、昭和は大雑把だったのですね。
 小島功とは、週刊誌に連載されていた『仙人部落』が有名ですが、要するに、以前に、黄桜の河童イラストと言えば、大半の方は思い出されるのではないでしょうか。
 掲載されている作品は、次のとおり。

 仙人部落
 俺たちゃライバルだ!
 あひるヶ丘77
 2コマテレビ
 日本のかあちゃん
 うちのヨメはん
 MY NAME ナツ子
 手品師のハンカチ
 7-8=1
 赤ずきん
 黒ねこどん

 他に、カラー絵、一枚絵漫画など。

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