『土竜の唄』16巻の感想
コミックス『土竜の唄』(高橋のぼる・小学館)16巻の感想を申します。いつものようにネタバレですから、ご注意下さい。
モグラ(潜入捜査官)玲二は相棒の月原、海老塚とともに、ロシアン・マフィア、シベリアンスコーピオ(シベリアのサソリ)こと、サルマン・ヌレイエフとその部下四人に会い、108万錠という大量のMDMAの取引に入ります。ところが、前約束では1錠800円のはずだったのに、ヌレイエフは、「価格が上がった」「チャカを向けた」と難癖をつけて巧みに値を吊り上げ、1200円にしようとします。100円上がれば、1億円の上乗せゆえ、月原は交渉決裂を告げますが、ヌレイエフは、ならば蜂乃巣会の若頭、鰐淵(わにぶち)に売る、と言います。玲二達の所属する数奇矢会と抗争中の宿敵に、数十億のシノギを渡そうとするのです。早速、海老塚が銃を向けてヌレイエフにせまりますが、四人の部下の攻撃で逆に殺されかける始末。玲二も懸命に、丸腰で取り成そうとするのですが、ヌレイエフの銃撃を受けて倒れます。月原は近づき、玲二が死んでいることを告げるのでした。
一人だけ無事な月原は、ヌレイエフからの再度の交渉に応じて握手を交わしますが、逆に頭へピストルを突きつけます。四人の部下が色めき立つものの、死んだはずの玲二が起き上がって目潰しを見舞い、海老塚の加勢もあって、形勢は一気に逆転。玲二は腰に入れていた石に銃弾が当たったため、実は死んでいなかったのでした。こうして、月原はヌレイエフから価格を800円に下げさせ、交渉を成功させます。
浮かれる月原や海老塚の目を盗んで、玲二は潜入捜査官養成係の赤桐、麻薬取締部課長の福澄と出会い、経緯を語ります。しかし、肝心なMDMAの密輸入の方法と隠し場所がわかりません。赤桐と福澄は、大至急、取引の日の昼までにそれらを調べておくよう、厳命します。
やがて、玲二は海老塚の経営するSMキャバクラに戻ります。酔って上機嫌の月原に、玲二は、税関にもバレない方法とは何か、自分にだけ教えてほしいと、たずねたところ、月原の態度が豹変。「お前、サツの犬か?」と、玲二にせまり、海老塚をうながして、玲二を車に乗せ、防波堤に向かいます。到着するや、月原は銃にサイレンサーをつけ、玲二を防波堤の突端まで歩かせて、逃げ場をなくしてから、再び詰問します。
突然、玲二の携帯にメール着信音が鳴ります。月原が取り上げて見たところ、組織犯罪対策部刑事、桃川千晶からの、玲二の連絡をうながす内容。キャバ嬢モモコのふりのメールを送るよう、玲二が先に告げていたのを、まったく無視していました。
「おまえは私の犬」「全国指名手配犯」の文句に、玲二が警察の犬だと判断する、月原と海老塚。玲二は死に物狂いで、自分は「モモコの犬」で「マゾ」だと叫び、さらに「モモコ女王様はポリスディーバ」と、続けます。海老塚は大笑いし、シロと断じます。ところが、月原の疑いは晴れません。ついに、玲二は両手を高く掲げ、「撃てよ、相棒。」と、捨て身の行動をとります。ここまで。
あーっ、相変わらず、いいところで終わっています。今回はほとんど感想をはさめないほど、息をのむ展開の連続でした。玲二がヌレイエフから銃撃された時、私はまさか死ぬはずないと思いながらも、月原の「死んでいる。」に、血の気が引きかけました。土竜の唄はほぼ全巻を通じて(玲二と純奈のエッチ話は別ですな)、余裕で進めると思えばピンチ、そしてピンチを予想外な方法で切り抜ける、というこのパターンに、読み手ははまってしまい、引きずりこまれてしまうわけです。
初登場のヌレイエフもそうですが、赤桐、福澄、海老塚、すべて一筋縄ではいかないキャラクター達ですね。今回は、それまであまり目立たなかった、月原がナンバーワン。冷たい表情に、情け容赦のない言動が光っていました。
さて、恒例の「土竜の料理」ですが、今回はジンギスカンです。食事をしたばかりの玲二ですが、ひと口頬張った途端、「肉の味がすんげぇ旨い!!」「元気が出る!!!」と、目を輝かせて大絶賛。即座に、赤桐がにやっと笑い、「柔らけぇだろ。/ラムっていってよ、生後一年未満の仔羊よ。」。このやり取りも、すごくおいしそう。私も、北海道のジンギスカンが食べたくてたまらなくなりました。それでは。
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