『失踪日記』の感想
コミック『失踪日記』(吾妻ひでお、イースト・プレス)の感想を申します。ネタバレですから、ご注意下さい。
私自身も、「サイト(激情ざっくばらんのことです)を閉じる」と、こちらでわめいたり、「しばらく休みます」と告げながら続けていたりと、両極端かつ混乱した状態が続いております。だから、ずいぶん前に読了した『失踪日記』が、最近、妙に気になっているのです。
内容は、最初の「夜を歩く」の内容は、漫画家である吾妻ひでおさんが、突如として自殺したくなって出かけたまま失踪。ホームレス生活を送るも、警察に保護される、というもの。2番目の「街を歩く」は、原稿を落としてしまった吾妻さんはまたホームレスになるも、ひょんなことから配管工にスカウトされます。とんでもない人々に困らされながらも、もう一度漫画家に復帰。続いて、デビューからの経緯に関する秘話。3番めに「アル中病棟」、つまり、アル中になった吾妻さんの闘病記と病棟の個性的な医者、看護師、患者達のお話。最後に、とり・みきさんとの対談で締めくくるという、内容のすさまじさもさることならが、ゴージャスな作りになっています。
あらすじを紹介すれば、かなり悲痛というか、すさまじいものに思われるのですが、全編コメディ仕立てであり、絵もかわいらしいので、拾い食いをしているシーンも笑って見られます。
私は吾妻さんのような、主線のかっちりしてスクリーントーン少なめの、白黒濃淡はっきりした絵が好きですから、この方がヘタだと批判されているのには驚きました。ちと記憶がはっきりしないのですが、吾妻さんは男性向けの萌え絵の原型になったのではないでしょうか? ちょこちょこ入っている作品や体験記の女性達が、みんなきれいでかわいいです。特に、作品「ふたりと5人」のヒロイン(?)の女子学生は、下品な主人公の学生(?)にスカートめくりをされようが、お風呂をのぞかれようが、どことなく品があって、しかも色っぽい! 私のような女性が見ても好感の持てる、いい萌え絵です。
今でも、私はこのお話を時々、パラ読みしています。ホームレスに偏見を持つ一般人、子供、OL。スーパーのおばさん、ガス会社のおかしな面々、くせ者ぞろいの編集者。優しくも厳しい病棟スタッフ、アルコールと闘ってはいるけれども奇妙な患者達と、個性派を挙げればきりがありません。
世界は狭いようで、広いです。世間は厳しくも冷たいですが、いい加減かもしれません。こんな痛ましくも、おもしろい世界を自ら捨てる、つまり自殺するなんて、もったいないです。中島らもさんは急逝なさったのですから、吾妻さん、どうぞ、うんと長生きして下さい。
私は心から、そのように思いました。では。
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