『シグルイ』12巻の感想
コミックス『シグルイ』(原作:南條範夫 漫画:山口貴由 秋田書店)12巻の感想を申します。ネタバレなので、ご注意下さい。
12巻は、はっきりサーチしていませんけれども、苦情や不満が多いのではないでしょうか。描かれているエピソードが、本筋の傍流っぽい内容で、詳細に描かれているというより、連載の引き延ばしをはかっているのでは? と、疑いたくなる内容ですからな。そのおかげで、あらすじを紹介するのは楽ですけれども。さあ、毎回申しておりますが、今度こそ、さらっといきますよ。
徳川忠長の後ろ盾により、昇り詰める伊良子といく。裏腹に、困窮して、さげすまれる藤木と三重。伊良子はかつて、虎眼流の弟子になる前、伊良子清玄という名の町医に骨子術の教えを受けたことがありました。彼は卑劣にも術を極めるや、医者を殺害してその名まで奪い取ったのです。町医の弟子、峻安は伊良子を討つべくして、旅の途中、藤木と出会って勝負となりますが、藤木の“無明”を察して、死んでしまいます。
藤木と三重は、星川生之助の手引きにより、駿府入りしますが、星川は実は、伊良子といくを救った人物、月岡生之助なのでした。そんな藤木、三重、星川は、いくと偶然出会ってしまいます。抜刀して、いくにせまる藤木と、制止しようとする星川は危うく一触即発になりますが、いくは藤木をいなして事なきを得ます。ところが、数日後、いくが拳銃を持って、藤木と三重にせまります。三重は動じず、伊良子との密通を責めます。三重に、亡き虎眼をオーバーラップさせたいくは動転し、一発撃ちますが、命中せず。ただならぬ女同士の闘いも起こりつつあるのでした。
武芸者にしては温厚な星川(月岡? どっちが正統?)のエピソードは、藤木VS伊良子編以降も続くであろう、シグルイの本編の伏線になるかもしれませんが、伊良子が誰に骨子術を習ったとか、藤木や三重の執念など、今さら何を、という感じがいたします。しかしながら、私は町医「伊良子清玄」と、黒髪の青年(後に藤木のライバルとなる伊良子)とのエピソードが印象に残りました。
青年の声を聞き、近づかれた際の、焦りというか苦悩に満ちた表情。二人きりで小舟に乗っている時、青年に見とれながらも辛そうに、「礼など要らぬ・・・・」「わ わしはただ おまえの事が・・・・」どう考えても、愛の告白です。
申しておきますが、町医は美青年でも美中年でもありません。普通のおっさんです。だからこそ、この表情の生々しさ、ぎこちない言葉が痛切です。愛している、体を触れ合わせたい、でも嫌われるくらいなら友人(師弟でもいいかな)のままでいいのでは、という、同性愛の情感に揺さぶられる心の内が見事に表現されています。使い捨てキャラクターとはいえ、もったいないですなあ。
以前から、山口貴由さんは両性愛者でなくても、男同士の同性愛を描くのにあまり抵抗のない、稀有な方だと思っていましたが(くわしくは、『平成武装正義団』『覚悟のススメ』をどうぞ)、やっぱりなという感じです(男性漫画家さんで、女同士の恋愛やエッチを描く人は大勢いますよ)。私は絶賛応援いたします。
13巻は本編に戻っていただくか、『がま剣法』の続きをしていただきたいですね。それでは。
ご協力お願いします。
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