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2009年9月21日 (月)

『いじわるばあさん』の感想

 漫画、長谷川町子全集24~25巻(朝日新聞社)、『いじわるばあさん』の感想を申します。ネタバレですから、ご注意下さい。
『いじわるばあさん』は、雑誌「サンデー毎日」に昭和41年1月から昭和46年7月まで同名のタイトルで連載されていた漫画を、姉妹社が発行したものだそうです。
 登場人物は、まず、いじわるばあさん。夫は死別しています。他に、55歳頃の長男で会社勤めの順一、次男で医者のシゲル、三男で漫画家のトシアキ、四男は名前不明で会社勤め。息子たちは、全員既婚で、四男は新婚ほやほやでしたが、いつの間にか、いなくなってしまいました。いじわるばあさんは、その通り名どおりの悪癖ゆえに、いやがられながらも、長男、次男、三男のうちに居座り続け、思いつくまま気のむくまま、やりたい放題のいたずらをして回る、という四コマ漫画です。

『いじわるばあさん』とありますが、このばあさんは、いじわるというより、いたずらをして、家族、近所のみならず行きずりの人まで、驚かせたり、またはいい気分でいたのを台なしにしたりするのが好きなようです。現在、たまに聞く、隣家を監視していわれのない誹謗中傷をする人、ゴミ屋敷の主人の方が、いじわるばあさんより、ずっと迷惑だと思うのですが。
 いじわるばあさんは、いやなやつというより、読んでいて、なぜか不思議な爽快感を味わってしまいます。「こんなに思うがままにできたらいいな」と、うらやましく感じるからでしょう。一方、いじわるばあさんのいじわるは、万能ではありません。ばあさん自身がひどい目にあったり(土管に閉じこめられて衰弱、ブランコを独占したはいいが、乗りすぎて酔ってしまい、寝こむなど)、逆に感謝されたり(カップルにパチンコを打ったら、女の子は「痴漢だったのよ」、男は「記憶喪失が治った」と、泣いて喜ばれる)、気まずい思いをしたりします。さらに、「今日もだれもたずねてこなかった」と、つぶやき、「家族のだれにもさそわれない」と、一人嘆き、「なんにもするアテのない一日て つらいでしょう」と語る言葉は、とても重いです。
 ばあさんのいじわるゆえの自業自得ばかりではないでしょう。だから、ばあさんはいじわるをせずにいられないのです。それが唯一のコミュニケーション手段だから・・・・なぁんて、ありきたりの感想なんざ、やめにします。この部分は大ウソですからね(笑)。
 それでも、いじわるばあさんはタフです。外国旅行に行っても、そのペースは変わりません。いじわるのネタを考えたり準備したりするのだって、気力体力が充実していないと、できるものではありません。ある意味、いじわるばあさんは、私たちの理想に近いのかもしれませんね。
 他に、短編漫画『いじわる看護婦』『いじわるクッキー』『まんが幸福論』も、なかなか毒が満載でおもしろかったです。『サザエさんうちあけ話』によれば、長谷川町子さんは小学校時代、相当ないたずら好きのやんちゃ娘だったそうで、ここに『いじわるばあさん』の原型があるというか、長谷川さん自身がいじわるばあさんそのものだったのでしょうね。それでは。 

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