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2009年9月 8日 (火)

『似たもの一家』の感想

 長谷川町子全集29巻(朝日新聞社)に収録されている漫画、『似たもの一家』について感想を申します。ネタバレですから、ご注意下さい。
 これは雑誌「週刊朝日」に昭和24年4月~12月まで、同名のタイトルで連載されていた作品です。登場人物は、主人で小説家らしい、「いささか なんぶつ」、その妻(名前不明)、長男で高校生の「じんろく」、長女でじんろくの妹、「うきえ」(高校生か中学生か、不明)、女中さんという一家に、たまに「のんすけおじさん」(じんろくやうきえにとって、父方か母方のおじに当たるのですが、詳細は不明)が加わって、思わずクスリと笑みが漏れるような騒動が起きる、というものです。
 大方の話が、1ページに均等な大きさの横長3コマというスタイルで、4ページにて1エピソード終了です。
 そりゃあ、あなた。天下の大家、長谷川町子さんの作品ですから、おもしろくないわけがありませんよ。
 ただ、私は日々、ズームアップの繰り返される漫画を見慣れているものですから、均等な大きさのコマ、キャラクター達は大方全身像で描かれる点に、違和感を感じました。漫画というよりは、絵物語という趣です。

 人物はスクリーントーンがない分、極めて平面的ですが、一コマごとの書き込みが細かいし、多いです。ストーリーに関係のない人達までもが、ちゃんと動いて、表情をつくっています。
 エピソードごとのタイトルは写植でなく、遊び心を加えた手書きです。さらに、最後に余った一コマがあれば、登場人物のかわいいカットが入ります。
 以上、実は『似たもの一家』だけでなく、近日中にご紹介する予定の『エプロンおばさん』にも共通する特徴です。『似たもの一家』は書き込みがよくなされているものの、人物が小さめ、『エプロンおばさん』はキャラクター大きくなって、デフォルメもされるようになってきた、など、同じ長谷川さんの作品ながら、変化というか進歩が見られます(当たり前ですけどね)。
 それでも、「この感覚には、ついていけない」と思う点もありました。預かった近所の子供が、うっかりヒロポンを飲んでしまい、すっかりハイになったという『ヒロポン』。覚醒剤や大麻もいけないのに、自宅にヒロポンを置いているなんて、当時は珍しくなかったのでしょうね。 他に、戦災孤児らしい子供が、街角で煙草を吸っているカットも、仰天してしまいました。
 難を申せば、なぜタイトルが『似たもの一家』なのか、よくわかりません。夫、妻、長男が眼鏡をかけているからでしょうか? それから、読み切り連載の形のせいか、ラストは何の余韻もなく、「本当に終わりか? もっと続くのでは?」と疑うような終わり方をしています。
 しかし、笑いに包まれながらも、昭和の庶民生活がリアルかつ細かく描写されているのは、本当におもしろいです。やたらと、「昔はよかった」みたいな回顧漫画は反発を覚えますが、私はこれなら、すんなりと読めました。長谷川町子作品は、非常に奥深く、意外な部分に味わいがあるようです。その謎を解くため、またおつきあい下さいませ。次は『エプロンおばさん』をご紹介しますね。それでは。

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