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2009年9月14日 (月)

『エプロンおばさん』の感想

 長谷川町子全集(朝日新聞社)26~29巻に所収されているマンガ、『エプロンおばさん』の感想を申します。ネタバレですから、ご注意下さい。
 この『エプロンおばさん』は、雑誌「サンデー毎日」に、昭和32年1月から昭和40年7月まで同名のタイトルで連載されていたものを、姉妹社が1~11巻として発行されていたそうです。
  登場人物は、たぶん50代の下宿屋のおばさん、「エプロンおばさん」こと、「敷金(しきかね)なし」。彼女は着物に割烹着か、アッパッパ(たぶん死語。ウエストの緩いワンピースです)にエプロンという格好で、メガネをかけ、古式ゆかしい(?)ひっつめ髪です。タイトルの割りに、登場人物からは、あまり「エプロンおばさん」とは言われません。ただの「おばさん」と呼ばれています。家事全般が得意で、明るく気立てもよいのですが、少々お節介で、おっちょこちょい(死語)という性格です。
 それから、エプロンおばさんの夫で、彼女からは「あなた」と呼ばれている、下宿屋の主人。おばさんより年上に違いないのですが、勤め人です。晩酌や飲み屋で楽しむのが大好きな男性です。
 二人の娘の、「トク」。下宿人からは、「トクちゃん」と呼ばれています。女子高校生。かわいくて元気ですが、勉強は苦手なようです。連載当初は目立っていたのに、夫婦や他の下宿人に押されて、影が薄くなってしまいました。

「ひとあしちがい」という、なしがりに行こうとする一家に、いろいろと邪魔が入るというエピソードでは、この親子三人が一緒に着替えているシーンが延々と続き、私は笑いを忘れて、呆気に取られました。父親のすぐそばで、下着姿になる十六か十七歳の女の子って、今は信じられません。当時は、当たり前だったのでしょうか。
 他に、エプロンおばさん夫婦には、幼児か小学生頃の孫が数人いるようですが、名前も、息子か娘の子供なのか、詳細は一切不明です。
 下宿人は、レギュラー出演していたのが、大学生のクスノキさんとカシマくん。探偵の鵜野目たか助ですが、結婚したはずなのに、不思議と新妻とのエピソードがなく、後半は独身のようになっています。
 他の下宿人としては、誰彼構わずいやみを言いまくるキザな男、伊矢味。彼は三回ほど登場したきり、いなくなってしまいました。連載後半に登場する、九州出身の夫婦といったところです。
 それから、後半に現れる、その名も「いじわるばあさん」。エプロンおばさんの近所に住んでいて、いたずらをして騒ぎを起こすのが大好きという、困ったばあさん。これは単なるゲストキャラクターの予定のはずが、読者の希望に応じて、後に単独のマンガとなったのでしょうか。それとも、ほんの習作のはずが、予定外に・・・・ということでしょうか。
 先の『似たもの一家』で申したとおり、連載スタイルやページ数はよく似ています。欠点としては、長期連載の弊害か(上記登場人物を参照して下さい)、設定はブレまくり。伏線はあるようで、ないのでは? ラストも、他のエピソードと変わらない、らしくない締めくくり方をしています。
 しかしながら、私は『エプロンおばさん』の方が好きです。三頭身風の体やオーバーな表情と、デフォルメされた絵、小さな笑いや苦笑をともなったエピソードに、いい意味の余裕を感じ、ゆったりと読めるからです。「はくさい」みたいに、エプロンおばさんと近所の主婦が差し向かいで、はくさいの漬物をお茶請けにしている時の擬音語や二人の表情など、シンプルでおいしそうでした。
 反面、目立たない毒が盛りこまれてもいます。ネタに苦しんだのか、長谷川町子さん自身が登場して、「孫子の代まで 絶対にやらせたくないのが漫画家」と宣言したり、エプロンおばさんのネタが平凡すぎると苦情をいう編集に、「人生とは本当はこんなに平凡なもの」と応じます。さらに、「あなたの精神かんてい」などは、いつもの登場人物が欄外にしか登場しないまま、人々の奇異な言動を皮肉っているというわけで、私は笑っていいものか、それとも、逆に長谷川さんに笑われているのかと、妙に不安な笑いになってします。
 長谷川町子さんの作品は、笑いが大きな要素になっているのでしょうが、果たしてすべてが「憂さを忘れさせてくれる」「軽い」ものなのかどうか。以降の『いじわるばあさん』、大本命の『サザエさん』と、研究の価値はありそうですね。それでは。 

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