『仲良し手帖』『新やじきた道中記』の感想
2日間、投稿せずにいましたね。ですから、漫画『仲良し手帖』『新やじきた道中記』(両方とも長谷川町子全集31巻に収録・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレですから、ご注意ください。
『仲良し手帖』は、雑誌「少女」に昭和24年2月から昭和26年8月まで連載されていたものを、姉妹社より発行されたもの。主人公は、ウメコ、マツコ、タケコの女子学生。高校生っぽく見えるのですが、家庭教師に簡単な英単語を教えられるエピソードからすると、中学生なのでしょうか? 物語は、両親が北海道に転勤したため、祖父母を頼って、ウメコが上京して転校してきたところから始まります。1ページ3コマ、ページをいっぱいに使う格好で、8から10ページ前後のエピソードが語られます。一話完結で、ラストがラストっぽくなく、唐突に終わっているのも、今までの長谷川さんの作品どおり。
さて、この『仲良し手帖』、おもしろくないわけではないのですが、何度も読むつもりにはなれません。三人の元気な女子学生が主人公であれば、学園コメディっぽくなるはずが、学校の外や家のお話が多いからでしょうか。何となく説教臭いというか、かっ飛んでいる感じがしないのです。彼女達の制服が黒のベストに長いプリーツスカートで、重く見えるからでしょうか。長谷川さんはこのお話をものにしておらず、どのようなギャグを書くべきかと、無理をしながら描いていたような気がしてなりません。
それでも、「間違った切符を切った」「代用パン」といった表現や言葉、また、彼女達が家で私服姿でいる時、いつも下駄をつっかけて出かけるのが、やはり時代を感じさせます。当時に女子学生だった人はなつかしいし、昭和史を知りたい方にはいい資料になると思います。
『新やじきた道中記』は、何の物語がベースで、登場人物は誰で、とか、言わずもがなですね。雑誌「週刊朝日」に昭和26年11月から昭和27年12月まで連載され、姉妹社から発行されたものです。1ページに3つの大コマ、唐突なラストは、『仲良し手帖』に似ていますが、人物が割りと大きく描かれています。そして、なぐる蹴る、びっくり仰天するなど、表情も造作も大きい大きい。とてものびのびしています。
以前、私は付録のまげものの漫画が今一歩だと申しましたが、これはテンポがよくておもしろいです。どれほどアレンジしているのか、原作をよく知らないので、わからないのですけどね。
『仲良し手帖』には、他の長谷川作品のキャラクターは影さえ登場しませんでしたが、『新やじきた道中記』には、磯野家の面々が時代劇調の姿で登場し、サザエが途中まで同行します。『エプロンおばさん』には、いじわるばあさんが登場し、磯野家ファミリーもちらりと。『いじわるばあさん』にも、磯野家の人々とのエピソードがありました。これは単に、長谷川さんがネタにつまったから、偶然にできたのかもしれませんが、「長谷川作品」という独特の世界を形作っていますね。ちなみに、今、読んでいる『別冊サザエさん』には、エプロンおばさんとそのダンナが登場しています。作品群は皆、割とすらっと読めて軽いタッチですが、なかなかディープな味が秘められているようです。それでは。
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