『御石神落とし』8巻の感想
漫画『御石神落とし』(原作:永久保貴一 作画:増田剛 白泉社)8巻の感想を申します。ネタバレがありますから、ご注意下さい。
『御石神落とし』も、ついに最終巻。今回は、カタツムリの不思議な生殖、江戸時代の笠森お仙の恋物語、そしてメインとなる、藤原道長と彼をめぐる女性達の物語の3つが収録されています。特に、平安時代編では、主人公の豪はもちろん、彼女である美幸、豪に気がある留学生メアリーに、神主のアイラ、恩師の孫娘の知帆まで、ほぼオールキャラクターが御石神によってタイムスリップし、道長(豪)、倫子(美幸)、紫式部(メアリー)、大納言の女(知帆)、百太夫の巫女(アイラ)へ、各自が憑いて成り代わり、雅やかにも大胆な恋や習俗を実体験する、というもの。そして、御石神はついに満足して、全員が現代に戻ると同時に、落ちて(豪から離れて)しまいますが、また水珠神社に出現してしまいました、という、ちょっとおもしろいオチがついています。
『御石神落とし』全体を通じて、これは豪、美幸、メアリー他の三角関係を楽しむのではなく、あくまで日本の様々な時代、場所における性風俗を説明する、薀蓄ものです。童貞や処女は問わず、祭の日にはほぼ乱交状態になるのですから、表面的には、「日本の性風俗って、何ていやらしい! 最悪!」となるでしょう。
けれども、古代から昭和初期頃の山村まで、少しずつ変化はありますが、概して皆、大らかであり、セックスという本能の営みを精一杯楽しんでいて、私はうらやましくなります。年上の女性が童貞の少年を優しく導き、女性の体のしくみをレクチャーしていた(3巻)のに比べ、「割り切りの関係がいい」「セックスして○万円もらえた」という、現代の性の、殺伐として味気ないこと。これはセックスを楽しんでいるというより、不要におとしめているのではないでしょうか。
そして、主人公の豪は、御石神が憑いているために、女性を惹きつけるフェロモンをいつでも放てる状態にありながら、「テクニックではなく、心の結びつきが一番だ」と、何度も感じ、最終回でも同じように語られているのは、大いに好感が持てました。
私が一番度肝を抜かれ、おもしろかったのは、6巻の33~34話。御石神に村人の一員であることを認めてもらうため、神前、いや、衆人環視の真っ只中で、新郎新婦が様々に体位を変えて、セックスを実践してみせるというもの! か、感想も何も・・・・すごすぎっす。
登場人物は、私はアイラとメアリーが好きですね。二人のよがり声が特徴的なのです。
アイラ「あーん いいのぉ いいのぉ」
「アイラ いいのぉー」
「やーん いっちゃう いっちゃう アイラ いっちゃう いやぁー」
メアリー(早苗に憑依しながら)「OH ウァァ モスーケ(茂作)/OH NO/タケェシ カマン カマン」
「OH イエース/イエス/OH グレイッ」(6巻)
いかがでしょうか?
さあ、日本の性風俗を楽しく知りたい方は、購入して読んでみてくださいね。
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