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2010年1月 2日 (土)

『サザエさんの東京物語』の感想

 エッセイ集?『サザエさんの東京物語』(長谷川洋子・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレですから、ご注意ください。
 これは、今までずっと感想を投稿してきた、『サザエさん』の原作者、長谷川町子さんの妹さんによる、町子さんや長谷川家をめぐる裏話のような作品です。だから、このタイトル、正確ではありませんね。『サザエさん作者、わが姉町子とは』などといったふうにした方がよかったのに。せいぜい、マスオのモデルが作者さんの早くに亡くなられた夫である(「元祖マスオさん」)と、『サザエさん』創作については、少しの記述しかありません。
 そもそも、長谷川洋子さんとはどういう方かと申しますと、長谷川家三女で末っ子、娘さん二人がいらっしゃいます。長谷川町子さん自身による『サザエさんうち明け話』にも載っていますが、あまり目立たなかったお方です。
 当然、『うち明け話』よりも、さらにディープで、どろどろした長谷川家事情が語られます。洋子さんは望んで東京女子大学国文科に入学したのではなく、本当は数専科に行きたかったのに、「お嫁のもらい手がなくなる」「国文科の方が女らしくていい」という、町子姉の強引な指図によって決定されたというエピソード(「方向音痴」)には、驚きました。生涯独身を通し、自立した女性であるはずの町子さんなのに、まったく不可解です。
 他には、町子さんの胃潰瘍手術は、本人には伏せられていたけれども、れっきとした胃がんの手術であったこと(「町子姉の大病」)も、印象に残りました。そして、洋子さんは、二人の姉が新築の家に引っ越した際、古い家にとどまって、初めて独立を果たし、出版社まで設立したこと(「別れ」「一人あるき」)なども、興味深いです。お母さん、まり子さん、何よりも、いたずら小僧のような町子さんにふり回されて、疲れてしまったのでしょうか?

 後書きで、「この本は、私の初めてで最後の本」と、おっしゃっておられますが、残念なことに、文章が硬いです。難しい表現や語句はないのに、リズム感が乏しく、エッセイというよりは評論のようです。加えて、驚きの内容ですから、好き嫌いがあるかもしれません。
 祖母から孫、伯母まで、すべて女性というのは、特殊な家庭ですが、それでも悲喜こもごもの光景が目の前に浮かんできて、私は思わずクスリと笑ったり、ぱかーんと、口を開けっぱなしだったりしました。『サザエさん』ファンの方、作者サイドのダークストーリーとして楽しんでいただけると思います。それでは。

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