『かつおちゃんとわかめちゃん』②の感想
漫画文庫本『かつおちゃんとわかめちゃん』(長谷川町子・朝日新聞社)の感想を申します。ネタバレがありますから、ご注意ください。
これは姉妹社版『かつおくんとわかめちゃん』を元に、再編集したものだそうです。割と昔風の絵で、1ページにつき3コマの大きな横長の絵で、1エピソードは4ページ以上続いています。「どうぶつえん」という、カツオ、ワカメ、サザエ、波平の4人が動物園見物に出かけるお話など、一見、年取った波平と若いサザエの夫婦に、二人の子供であるカツオとワカメがついて行っているようです。よく磯野家は、超メジャーとか平凡、平和な一家と見なされていますが、サザエと、カツオやワカメの、激しい年の差は謎めいていますなあ。
「おとしもの」では、落し物をして泣いているワカメを、二人の交番のおまわりさんが一生懸命、世話をしてくれるというもの。今時、あり得ないような、平和なお話です。一番長いエピソード、「きしゃのたび」では、サザエが汽車に乗りこんできたおばあさんに、「あら おばあさん/ここがあいていますよ/おかけください」と言い、おばあさんは、「さようですか/ありがとうございます」。少々引用が長くなりますが、続けましょう。
おばあさん「まごが つくってくれた おむすびです/おひとつ あがってください」
サザエ「では いただきます」(中略)「ほしがきですけど めしあがってくださいな」
ええ、これは、お父さんやお母さんが子供に読んであげるための絵本なのでしょう。下品な表現がないし、大げさな表現かもしれません。わかっていますが、私は、「何ときれいな日本語! 奥ゆかしいやり取り!」と思わずにいられませんでした。昔の人は偉いだなんて、盲目的に思いませんが、お金さえあればいい、自分だけはタダ得をしたいという、現在に広まっている風潮は、まったく恥ずべきものです。
さて、これで、『サザエさん』『いじわるばあさん』を代表作とする、長谷川町子さんの作品の大半を、私は読了できました。全体を通じての感想は、戦後からの昭和史を研究する上で、長谷川さんの作品は欠かせないものだな、ということです。さらに、全体を通じて、登場人物すべての言動が上品ですから、全年齢対象でいいですね。ただ、私は『新やじきた道中記』等のまげものは、今一歩のような気がします。お勧めは、別冊を含めたすべての『サザエさん』シリーズと、『いじわるばあさん』『エプロンおばさん』ですね。
長谷川さんのエッセイ話や『サザエさん うちあけ話』も、秀逸だと思います。ただ、実妹の長谷川洋子さんの内情本は、賛否が分かれるかも。長谷川作品の研究をしたい方には、向いていると思います。作者が善人でも悪人でも、私は、作品がおもしろかったらすべてよし! だと考えておりますから。
長いシリーズ感想でしたが、おもしろかったので、また別の作家さんの作品でやってみたいです。漫画か小説かそれ以外か、まだ決めていませんけどね。それでは。
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