『しんかいの奇妙ないきもの』の感想
書籍『しんかいの奇妙ないきもの』(太田秀・株式会社G.B.)の感想を申します。ネタバレ・・・・といっても、ネタバレしないと、次がありませんので、ご了解ください。
タイトルからすると、児童用みたいですが、れっきとした普通の本です。図鑑というには、フルカラーが巻頭の4ページで、あとは大半が左ページが深海の生物の名前と解説、右ページがその白黒写真とその説明という具合になっています。
(ちなみに左とじで、約150ページながら、約1.5センチの厚みがあります。同人誌製作者だから、つい気になる)
巨大ダンゴムシみたいなオオグソクムシ、作者の太田秀さんは「ほおずりしたくなる」ほどかわいいと言っておられますが、私にはグロな芋虫にしか見えないムラサキハゲナマコなど、虫とナマコ、ゴカイが苦手な方は、ご用心した方がいいでしょう。私は虫好きですが、それでも、ちょっと引いてしまうものもありましたから!
それでも、一応に、紹介されている深海生物はかわいくて、おもしろいです。そして、地上の私達からすると、壮絶で過酷な生存環境であるにも関わらず、すべてが肉食で貪欲な種類も多いのに、どことなくのほほんとしているのは、どうしてなのでしょうね? そして、人間なんぞよりずっと長く活きてきた種類もおります。深海生物達の体の秘密、進化の謎、生態系をさらにくわしく調べてみたら、また驚天動地の真実がわかるかもしれませんね。
あ、ちなみに、私はきれいなウリクラゲと、キュートなバケダラ(笑うところじゃありません。本当に、丸っこい頭がかわいいのです)、おもしろい格好をしたナマコ類が好きです。
この本は、2005年6月10日に発行されたものです。著者の太田秀さんは、東京大学海洋研究所の教授にして理学博士という経歴を持っていますが、本文中の語りは、たまにベタなオヤジギャグが入ります!
たとえば、「ダーリアイソギンギャク」のページで、外見はきれいなこのイソギンチャクのことを、「上等なクッション・ソファーと間違えて座ろうものならスワローswallow(丸飲み)されてしまいますのでご注意を」と、書かれています。おっかしーい!
それが、あとがきでは一転、「そもそも暗黒中の外貌は現場の生物にとって第一義的な問題ではない。彼らは現場での生活の必然として、また地球史とともになぞった進化史の帰結として生活スタイルの生存価を追求したのであり、外容はおのずと滲み出た風貌というべきであろう」と、思わず眉間にシワを寄せたくなるような、眠れない夜に読むにはちょうどいいような・・・・とにかく、この方は頭がよくて有能で、おもしろい文章を書かれるようです。
私は海洋生物好きですから、次こそはウミウシ図鑑をねらっていますが、また太田秀さんの著作があれば、読んでみたいと思います。それでは。
ご協力お願いします。
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