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2010年5月10日 (月)

『夕凪の街 桜の国』の感想

 漫画『夕凪の街 桜の国』(こうの史代・双葉社)の感想を申します。ネタバレが含まれますから、ご注意ください。
 ダンナの実家で豆の収穫をしてから、紅林家に配るなどしていたために、どっと疲れて、投稿しそこない、すみませぬ。でも、早速、トライしてみた豆料理(スナックえんどうといかの炒め物)はおいしかったし、伝説の巨大ミミズに遭遇せずにすみましたし、よしとしておきましょう。
 おっと、また話がずれました。なぜ、私はこの薄い絵本のような漫画本(A5版・中味は104ページ)を読み終った途端、涙が止まらなくなったか、ということですね。では、くわしく申し上げます。


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 お話は、『夕凪の街』『桜の国(一)』『桜の国(二)』の3編から成っており、『桜の国(二)』は書き下ろしですが、他は漫画アクションに掲載されていたそうです。これらのストーリーは独立しているようで、続いています。初版は2004年10月20日で、これは第8刷。こういう本を所蔵しているとは、I図書館は本当にあなどれません。テーマは、広島の原爆投下を生き延びた女性と、その家族のきずな、ですかね。
『夕凪の街』は1955年のお話で、主人公は広島市に住んでいる、平野皆実という、23歳の会社勤めの女性。皆実には、打越という気になる男性がいるのですが、彼にキスされても、向こうに見える川にさえ、どうしてもあの地獄の日の光景が重なってしまう。父や姉、妹も被爆して死に、皆実は心にわだかまりを持っていたが、打越から、「生きとってくれて ありがとうな」と言われて、うれしくなります。ところが、翌日から、皆実の体調は急変します。目が見えず口もきけないまま、皆実は最後のモノローグで、(ああ 風・・・・ 夕凪が終わったんかねえ・・・・)と告げますが、ナレーションは『このお話は終わりません/何度夕凪が 終わっても 終わっていません』と、締めくくられます。
『桜の国(一)』の舞台は一転して、東京都内。西武鉄道新井薬師前駅とあったけど、どのあたりでしょうね? 小学校高学年で、おてんばであり、姓が石川であるために、ゴエモンとあだ名をつけられはしまいかと、困っている少女、七波(ななみ)が主人公。七波は親友の東子と、入院している弟の凪生(なぎお)の見舞いに行き、桜の花びらをまき散らして、おばあちゃん(平野フジミ。皆実の母)に叱られます。けれども、お父さん(石川旭。皆実の弟。伯母の養子になったので、姓が異なります)は叱りませんでした。その理由は、おばあちゃんの体の検査結果がよくなかったためであり、その夏、おばあちゃんは亡くなり、七波達の一家は引っ越したので、東子と離れ離れになります。
『桜の国(二)』の石川家は、定年退職した父の旭、医者の凪生、勤めながら家事を行なっている七波の三人暮らし。七波は妙な行動を取る父を尾行しますが、偶然にも、東子と出会い、彼女達は一緒に父を追って夜行バスに乗り、広島へ。そこから、七波は東子と別行動を取りますが、東子から借りていたジャケットのポケットには、何と凪生からの手紙が入っていました。凪生が被爆二世(母の京花は胎児被爆しており、38歳で死亡)であるためか、東子の両親は結婚を反対しているので、別れようというシビアな内容。広島市内を回り、何人かの人と話をする父を追いながら、七波は凪生と東子、二人の秘密の手紙は細かく引き千切り、花びらのようにして風にまきます。父と母の出会い、ぎこちないプロポーズの情景をありありと思い浮かべ、(母からいつか 聞いたのかもしれない/(中略)生まれる前 そう あの時 わたしは ふたりを見ていた/そして確かに このふたりを選んで生まれてこようと 決めたのだ)と思い、東子と合流して帰ります。翌々日、父は七波の尾行を、ちゃんと気づいていました。そして、本当の目的は、彼の姉、皆実の五十回忌であるため、知人に会って昔話を聞いていたことであると打ち明け、「七波はその姉ちゃんに 似ているような気がするよ/お前が幸せになんなきゃ 姉ちゃんが泣くよ」と、告げるのでした。

「お前が幸せになんなきゃ 姉ちゃんが泣くよ」これを読んだら、ぐわっと、私は涙が止まらなくなったのですよ。「この人達、かわいそう」というのではなくて、「家族はやはり、家族だ。さりげなく、互いを思いやり、支え合うことで、人間は生きていけるし、本来の美しさがあるのだ。このシンプルさこそ、原爆や戦争に打ち勝つ、最強で最高の手段なのだ」というものでした。
 なぜなら、『夕凪の街』では、被爆者と思われたくないのか、伯母の養子になった旭が、『桜の国(二)』では、皆実の死後に広島に戻って、京花と出会って結婚し、七波と凪生が誕生しているのですから。皆実と打越の広島弁の会話もよかったですが、標準語で話す旭と、やはり広島弁の京花のやり取りも、春の陽だまりのように温かくていいものです。
 しかし、あっさりした絵柄や台詞などの演出で、柔和にされていますが、川の中で折り重なって流れる無数の遺体、急激に衰弱する皆実、墓碑に8月6日やその数ヶ月後の文字が目立つ墓地など、悲惨な描写はあります。それだけに、登場人物達のやさしさ、軽口、カープ愛が胸にしみます。
 私は作者様が年配の方だと思ったのですが、1968年生まれと知って、驚きました。1955年頃の広島が、よく調べられていると思います。スクリーントーンがないように見え、細かく描きこまれている感じです。表紙の、桜を見上げながら、気持ちよさそうに靴を手に取って裸足で歩く皆実、作中の七波や東子など、登場人物達が自然体で愛らしく、好感の持てる絵です。
 反戦漫画を越えた良作です。子供にも読めるでしょう。こうの史代さんの他の作品も、また読んでみたいです。それでは。

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