『賭博黙示録カイジ①−弱肉強食編』の感想
漫画『賭博黙示録カイジ①−弱肉強食編』(福本伸行・講談社)の感想を申します。ネタバレまみれですので、ご注意ください。
これは2009年9月30日第一刷発行の、コンビニ限定本です(レビュー遅っ!)。第1話から第27話まで収められています。カイジシリーズは、この後、賭博破戒録、賭博堕天録、賭博堕天禄−和也編と続きますが、最初のこのシリーズあってこそ次回がありますし、私が読んだ限りでは、黙示録こそもっともおもしろいと思います。
あらすじは、1996年2月、失業中の伊藤開司ことカイジは、むしゃくしゃする毎日を、外車を傷つけてイタズラをするという愚行に走りながらすごしていました。そこへ、遠藤という金融業者が訪ねてきます。彼は古畑という男が借金を焦げつかせて逃げたため、保証人であるカイジの元へ取り立てに来たのでした。14ヶ月の複利で積もり積もったその借金は、385万という大金。カイジに返済するあてはないため、遠藤は晴海埠頭から出るエスポワールという船で行なわれるギャンブルに参加するよう、巧妙に勧めます。もちろん、カイジに選択の余地はありません。
一ヵ月後、エスポワール号で、カイジは自分とほぼ同じ立場の債務者が大勢乗りこんでいるのを見ます。早速、エスポワール側は、ギャンブルの軍資金の貸付を行ないます。最低百万、上限一千万、4時間ほどのクルーズ時間に4割の金利を上乗せという、法外なものでしたが、債務者達は拒絶できません。けれども、船井という関西弁の男とカイジだけは、あえて一千万円を借りたのでした。
次に、ホールマスターを名乗る利根川が現れ、その夜のギャンブルのルールを説明します。カイジ達に課せられたのは、二人一組で行なう「限定ジャンケン」。勝ち負けのルールは、通常のジャンケンと同じですが、グー、チョキ、パー各4枚、合計12枚のカードを出し合い、勝った方は負けた方の持っている星1つを奪います。勝負に使ったカードは、あいこであろうとも破棄され、電光掲示板には残りカード枚数が表示されます。各人の持つ星は3つ。
限定ジャンケンの勝利条件は、カードをすべて使いきった上で星3つを獲得すること。また、負けパターンは3。①星をいくつ獲得していても、カードを使いきれなかった場合②時間終了時になっても、星2個以下しか持っていない場合③時間途中であろうとも、星をすべて失えば途中退場。退場者のカードは、係の者が破棄(参加者が破棄するのは、ルール違反として退場)。以上を説明した後、利根川は質問には受け付けられないと言い、それでも食い下がる参加者に、勝たなければゴミだと、檄を飛ばして退場します。
ついに、限定ジャンケン開始。早速、カイジは先ほどの船井から、生き残りの秘策、「12回連続あいこ」を持ちかけられて承知します。が、船井は10回、11回で、うっかりカードを間違えたふりをしてだまし、カイジから星2つを奪います。カイジは星1つ、カード1枚という退場寸前の状況に立たされ、頭を抱えて後悔していたところ、自分に借金を背負わせた古畑を発見、後を追います。カイジは起死回生のため、古畑を責めずに共闘を持ちかけます。そして、星2つでカード0の男、安藤と合流し、3人で金、カード、星を分かち合うことを約束します。けれども、カイジが油断したわずかの間に、安藤が1枚しかなかったパーを勝手に持ち出して勝負し、案の定、敗北。3人の手持ちは星3つ、金一千四百万、チョキばかりのカード4枚と、崖っぷちに立たされてしまいます。
しかし、カイジはフロアー内を見渡し、星が1つか2つしかない男に闘う「逆張り」タイプと勝負します。相手はカイジ達のグループと異なり、すべてのカードを持っているから、余っているカードを出すだろう、との予測は見事的中。相手の焦りもあって、3勝1敗(このあたりの駆け引きもおもしろいのですが、省略しなければいけないのが残念!)。
一方、エスポワール側が勝利者側の星の買占めを行なうなど、カイジ達はなおも油断ができません。確実な勝利のために、カイジはこっそりと、星3つでカードが余っている連中の、グーのカード買占めに走ります。フロアー内でチョキが余っていたためで、結果、グーは30枚になり、気づかれないよう、一人ずつ、フロアーに行って勝負する予定のはずでした。ところが、突如として、チョキが激減し始め、パーよりも少なくなります。再び、古畑と安藤は焦って勝負に出てしまい、そろって敗北。星を3つに減らしてしまいます。
悄然とする彼らに声をかけてきたのは、北見という男。彼の仲間は古畑と安藤を敗北させ、彼自身はパーを買い占めていたのでした。北見はカイジに、500万という高額で星の買取を持ちかけますが、カイジは拒み、最後の勝負に持ちかけます。今度は北見が拒絶しますが、カイジは星3つと600万を上乗せし、古畑や安藤も承諾したので、応じます。北見は負けても星3つを失うのみ(彼の手持ちは5つ)ですが、カイジ側は負ければ、3人そろって地獄行きならぬ、別室送り。さあ、どうなる?
おもしろかったです! もう、お腹一杯。次はどうなる→よかった、起死回生→えーっ、また大ピンチ! このようなパターンが連続して、もう心臓バクバクですよ。賭博は駄目だ、ギャンブルの借金は最悪だとはよく言われますが、結婚や起業、独立、上京だって、人生における賭博みたいなもの。だからと言って、私はギャンブルを推奨しませんが(第一、ど下手だし)、「勝つことは偶然ではない」と、しみじみ考えてしまいます。
しかしながら、欠点というか、違和感がないわけではありません。デフォルメの効いた独特な絵の癖(カイジの横顔なんて、妖怪みたいです。しかも、このデフォルメ、連載が続くほどに強くなっていくように思います)、「ざわ・・・ざわ・・・・」という、いささかワンパターンの擬音語は、どなたも目につくことでしょう。けれども、連載開始直後、しょぼい賭博でダレダレして、外車を傷つけてうっぷん晴らしをしていた若者ならぬバカ者のカイジが、エスポワール号では古畑や安藤をリードし、人生の機微に触れているような言葉をモノローグにするというのは、普通、考えられません。不自然なように思います。
しかし、まあ、カイジはお人よしだけれども、勝負どころでは思わぬ強さを発揮するとは、破戒録の中でも語られてきたし、致命的設定ミスではないから、スルーしましょうか。それに、カイジは全登場人物の中でも、かなりまっとう、善良なタイプに入るのです。読み進むにつれて、人間の醜さ、弱さ、したたかさ、すばらしさというものも感じ取れますよ。次回も(いつになるの? ←自主ツッコミ)お楽しみに。この後、恒例(?)の名セリフ集を投稿しますよ。それでは。
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