『バビル2世』(横山光輝)5巻の感想
漫画『バビル2世』(横山光輝 秋田書店〈秋田文庫〉)5巻の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
4巻までは、I図書館から借りていた愛蔵本から読んでおりました。文庫本にはやはり、巻末に様々な分野のスペシャリスト達の解説が載っていることもありますが、借り物でないから気楽に読める、1巻をあらためて見直すこともできると、喜んでおります。唯一のデメリットは、読むほどに、『バビル2世 ザ・リターナー』との差異が際立ってしまうことでしょうか。しかも、原作のこちらは、ツッコミどころはあっても、設定やストーリーに矛盾がないのに(以下省略)、いや、平常心、平常心。
いつもなら、ここで5巻の見どころについて語るのですが、いっぱいありますから(うれしい悲鳴!)、後半へ飛ばして、先にあらすじへ行きます。
東京の国家保安局へ行ったバビル2世は、危うく暗殺されそうになります。ヨミの攻撃が活発化していると予想して、ロプロスに乗って、ヒマラヤ山脈らしい高山地帯を監視しますが、そこの基地内で秘密兵器を製造中のヨミは、バビル2世に察知されまいとして、超能力で雹(原文ではヒョウ)。と強風を起こし、妨害します。一度は退いたバビル2世ですが、ロプロス、ロデムとともに再調査。ヨミは天変地異、幻覚を生じさせ、さらにはロプロス、ロデムにバビル2世を襲わせますが、超能力使いすぎによる体力消耗状態になり、倒れます。ここで、基地から対空砲が出現し、バビル2世との本格的な戦闘状態になりますが、ロプロスが圧倒的に強く、基地はまたたく間に崩壊します。
安堵してバベルの塔へ帰還したバビル2世ですが、実はガレキと化した基地こそ、ヨミがまた見せた幻覚。コンピューターにそれを指摘されて、今度はロデムを供に徒歩で現場に向かいます。
ヨミも、ロボットの監視鳥を飛ばしてバビル2世の居場所を突き止めようとし、RRFロボットを向かわせます。これが正確にバビル2世やロデムをサーチする上、飛ぶ、ビーム攻撃を行なう、テレキネシス程度ではびくともしないという、やっかいなもの。たまらず、バビル2世はロプロスを呼びますが、それこそヨミのねらい。レーダーでロプロスをとらえたヨミは、ミサイルの集中攻撃を行ない、山が崩れて、バビル2世はロプロス、ロデムと一緒に姿が見えなくなります。
バビル2世生死不明のまま、7日目、突如として、ポセイドンがやって来て、岩を片付けるや、ロプロスに乗って、バビル2世が地中から無事に生還。「よし ロデム ポセイドン ヨミの基地になぐりこむぞ」と、意気が上がるものの、ヨミとその部下、そして、感染すれば超能力を持つことが確認されたビールス人間(例の宇宙ビールスに感染し、生き残った人間)はすべて、巨大鳥のような形の新型兵器「V号」に乗りこんでしまいます。たちまち、V号としもべ達との戦いになりますが、バビル2世は超高熱線を受けて重傷を負い、ロプロスは外殻? 毛皮? が焼けはがれて、ロボットの姿になります(私は翼竜が大好きなので、少し残念)。V号でしもべに対抗できても、破壊することはできないと察したヨミは、ロプロス、ポセイドンをミサイルを浴びせます。基地まで爆発したために、ロプロス、ポセイドンは完全に埋まってしまいました。
ロデムに山の安全な場所まで運ばれたバビル2世は、翌日に回復し、ロプロス、ポセイドンに呼びかけて、またテレキネシスによって、彼らを地中から助けてやります(埋まっていただけで、故障していませんでした。すごい)。態勢立て直しのため、ロプロスに乗って、バベルの塔へ戻る途中、サルダン国の空軍を発見しますが、彼らはいきなり攻撃してきます。ふりきって、バベルの塔そばまで向かうと、バラビア共和国の爆撃機が塔を攻撃しており、バビル2世は驚きます。急いで、降下し、コンピューターに質問したところ、ヨミのV号が自分の味方でない国を攻撃したためでした。V号が遠目にはロプロスに似ているため、各国は勘違いして、バベルの塔およびロプロスを襲撃しているというわけです。バビル2世は激怒し、近くに隠れているであろうV号を見つけようとします。しかし、先に、ヨミはビールス人間をバベルの塔内に潜入させようとしますが、バビル2世は彼ら唯一の欠点、ニンニクエキス弾を撃って射殺。マイクを奪って、「この塔の総力をあげて 今度こそ とどめをさしてやるぞ」と、ヨミに宣言します。
こうして、バベルの塔の総攻撃が開始され、V号も全力で応戦します。砂を固めるコンクリート弾、操縦者を眠らせる催眠ライトで、バベルの塔が優勢に働くと見るや、ヨミ自らがV号を操縦して、ミサイルを放って、形勢逆転。バビル2世は、「いくらヨミでも、V号操縦、ミサイル投下、ロプロスの命令の三つは同時にできないはず」と言って、ロプロスを呼びます。またもや、バビル2世とヨミの命令に翻弄されるロプロスですが(哀れです。それだけ、ロプロスが有能ということでしょう)、その間、コンピューターはV号の弱点を調べ上げ、爆弾投下口へレーザー光線を集中して浴びせます。途端に、大破、炎上するV号。この圧倒的に有利な状況で、コンピューターは新たな危機の訪れを告げます。思わず叫び、顔色さえ変えて立ち尽くすバビル2世。一体、何が起きた?
ヨミと宇宙ビールスの仲違いは、やっぱり、4巻の終わりだけでしたね。この面倒な両者は、バビル2世こそ敵ということで、共闘しているようです。それから、ヨミは今まで改造人間を造っていたけれども、まさか、それで環境保護活動をするのではないかと、私は危ぶんでいましたが、どうやら彼の目的はオーソドックスに世界征服のようです。「細かい配慮で組織を引っ張る、頼れるボス」から、やっっと、悪人らしくなりましたな。
また、三つのしもべのうち、リーダー格らしいものはロデムのようです。ロプロスに、「今 おまえがやられたら ご主人さまがあぶない なんとかがんばってくれ」と、檄を飛ばしています。この時、バビル2世が大火傷を負って動けなくなったため、非常に動転しているのが、ごめんなさい、ロデムに悪いのですが、とてもかわいいです。たぶん、私はロデムが表情豊かなので、お気に入りなのです。見かけは黒ヒョウで、中味は犬なのでしょうか?
他に、バビル2世が久しぶりに(1巻で、浩一という普通の少年だった頃)自分を「おれ」と言っていました。しかも、その台詞が、「ロデム ロプロスはまだこんか/このままでは そのうち おれのほうが ぶっ倒れてしまう」と、珍しく弱音を吐いているものでした。それに対するロデムも、「ご主人さま もう少しのしんぼうです がんばってください」とあって、やはりこの二人? 一人と一匹? は、特に仲がいい・・・。のかな? だったら、うれしいです。3、4巻で出番が少なかったのを埋め合わせているかのようです。まあ、5巻はバビル2世側もヨミ側も、よく埋まっていましたからね。主従関係萌の方にはお勧めです。
今回のバビル2世の戦闘不能(負傷回数というべきか)は、2回。ケガはしていないようでしたが、ロプロス、ロデムと一緒に埋められたのと、V号の超高熱線を受けた時。あらすじに挙げたいくつかの台詞からして、このお子様、わかってはいますが、ヨミに対しては本当に情け容赦なしですね。そのせいか、絶対にクールでないけど、冷たいイメージがあります。そんなバビル2世が、バラビア共和国によるバベルの塔爆撃に叫ぶ、また、最後のページの驚愕した表情や身ぶりが、ふだんの大人っぽさを捨てて、年相応の少年に返ったようで、要するに、エロいな!! と思います。本能に従った感想で、すみませぬ。それでは。
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