『凍牌』(志名坂高次)10巻の感想
漫画『凍牌』(志名坂高次・秋田書店)10巻の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
きりのいい10巻ということで、登場人物紹介がデザインごと一新され、巻末には志名坂高次さんのあとがきまで入っています。今回、Kは流血沙汰にあっていますが、命の危険にはさらされていません。しかし、今までにない苦境に立たされ、彼らしさが失われています。
あらすじとして、9巻で大辻から、前歯一本をたたき折られたKは、31(サンピン)というゲームで、4枚目の牌で31(ピン)を出しますが、大辻は6枚目で31を出してしまいます。しかし、Kは3枚ハクを引けば自分の勝ちだと言い放ち、実際に引いてしまいます(同点の場合は、枚数が多い方が勝ち。ハクは0または11として計算されます)。が、大辻は何とハクを引いて同点、引き分け。唖然とするKですが、実は大辻、Kの牌を取り上げる、イカサマをしていたのでした。Kは大辻の前歯と引き換えに、竜鳳位戦の裏側を話すように言ったところ、大辻は「名簿」のことだけを打ち明けます。さらに、彼は総入れ歯で、最初からリスクゼロだったのでした。
ある日、Kは高津に(場所は高津組内か? バーのようなカウンターがあります)、アミナの異常に気づいたことを話します。彼女は必死で隠していましたが、腎芽腫(じんがしゅ)という悪性腫瘍にかかっており、今すぐ腎臓移植をしなければ、一ヶ月で死んでしまう、最悪の状態でした。Kは絶対にアミナを助けると言い、高津に最優秀の医療を求めます。高津はいったん、ことわったものの、「名簿」があれば話は別だと告げ、Kは、「殺してでも奪い取る!!」と、意気ごみます。
竜鳳位戦第2ラウンド、アイと堂嶋が同卓。そこで、堂嶋は心因性視覚障害(堂嶋の説明では、「ストレスみたいなもん」だそうです)で、右目に眼帯を当てており、加えて、15位から7位にまで順位を上げました。一方、1位だったKは2位の前川プロと同卓でしたが、狙い打ちされて、3位へと後退。次の決勝第2ラウンドで、Kは大辻と同卓(息つく暇もありませんな)。相変わらず、ふてぶてしい言動を取る大辻ですが、Kは、「今の僕には明確な目標がある/そのためには 卓上の感情は全て無視される」と、自らをいましめようとするものの、大辻はわざと差し込んできて、Kを安い手であがらせ、親のホンイツとKの三色を同時につぶしてしまいます。これが、卑劣かつ合理的な、大辻のやり方でした。さらに、大辻は、Kにサインを送って、自らに差し込ませます。2位を死守すべく、闘病中のアミナを思い浮かべて、応じてしまうK。1度目は大辻のみがあがりましたが、2度目にあがったのは、3位の長谷川。大辻はKを4位に落とすつもりで、だましたのでした。辛うじて、裏ドラは乗らず、Kは3位。Kは顔中から冷や汗をかくほど動転しますが、「最後に笑うのは この僕だ」と、心中で苦しい強がりを言ってみます。
総合5位まで落ちたKですが、最終戦で同卓したのは、眼帯の堂嶋。別のところでは、アイと大辻が同卓。Kと同じ高津組メンバーですが、当然、堂嶋は容赦しません。あがり続ける堂嶋に対して、Kは凡ミスの連発。しかも、アイの動向などが気になって集中できません。またたく間にラストになったKは、苦し紛れに、上家と組んで堂嶋をあがらせないという、大辻と同じ手を使います。堂嶋はこれを見抜いて、やにわに卓上に立ち、Kの顔を蹴りつけました。鼻血を出してうろたえるKと、厳しい表情の堂嶋。さあ、この宿命対決の行方は?
ね、こんなに苦しそうでもあり、見苦しいKは、初めてでしょう? 私も読んでいて、苛々してきましたよ。落ち着こう、非情になろう、勝負に徹しようと心がけているにも関わらず、判断が狂いっ放しで、裏目裏目なのですからね。
考えてみれば、『ベルセルク』のガッツも、再会したキャスカを守りながら戦っている時が、一番大変でした。『バビル2世』も、伊賀野というパートナーに助けられる部分はありましたが、彼を守るために、これまでになく消耗していましたからね(唐突なたとえで、ごめんなさい)。守りながら戦うとは、かなり大変なことなのでしょう。
アミナの病気のことは、高津が以前から承知していたはず。どうやら、アミナは高津から鎮痛剤のようなものをもらっていたことを、Kに打ち明けていないのは、高津から、「Kには絶対言うな」と、強く命じられていたからでしょうね。しかし、Kに対して、相談に乗るふりをする高津は、とんでもない食わせ者です。あらすじでは省略しましたが、Kはアミナのことを思って激昂し、コップを握りつぶして、右手が血まみれになる場面があるのですが、ここでも、高津は親切そうに、傷ついたKの手に自分のハンカチを押し当てます。このあたり、何だかエロくて、精神的鼻血。高津はKに気があるな、と、思いましたね。
そして、以前にも書いたでしょうが、堂嶋に蹴られて、鼻血を出して珍しく動揺する(氷のKが! ですよ)Kの表情にも、精神的鼻血噴出。堂嶋自身も凄みを増していますけれども、彼こそKの本来のあるべき強さを復活させられるのでしょうか。高津にせよ、眼帯堂嶋にせよ、Kに執着しているように見える私は、やっぱり危ない腐女子でしょうが、そう見えるのだから仕方ないですよ。果たして、Kは、堂嶋はどうなるのでしょうか。大辻やアイと、どのように戦っていくのでしょうか。ますます、目が離せませんね。次間も楽しみ!
ところで、なぜか最近、ワタシ的秋田書店様フェアを実施中ですが(ツイッターのおかげでしょうか)、また様々なジャンル、出版社、作家様の著作、絵本、写真集(?)についても述べるつもりです。それでは。
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