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2010年8月 6日 (金)

『バビル2世』『その名は101』(横山光輝)両作品の感想の締めくくりに(加筆修正版)

 漫画『バビル2世』』(横山光輝 秋田書店・秋田文庫全8巻と、『その名は101』(横山光輝 秋田書店・秋田文庫全3巻)の両作品の感想の締めくくりを申します。例示している巻数はすべて文庫本によるもので、単行本とは異なります。それから、ヤングチャンピオンに連載中で、最近、単行本1巻も出版されている、『バビル2世 ザ・リターナー』(漫画:野口賢)に関しても、批判的に言及しています。ご注意ください。

1.浩一(バビル2世)の未来は?

『バビル2世』第3部を読了した時点で、私は浩一の未来はそんなに暗くなかろう、と思いました。伊賀野、五十嵐、由美子と、皆好意的で、たぶん、浩一は会いに行こうと思えば、いつでも彼らに会えるだろう、と。
 ところが、『その名は101』の設定で、浩一の血を輸血した者は、危険な超能力者になってしまうから、CIAやS国諜報機関がねらうことになる。→浩一の周辺の人々が争いの巻きこまれる危険が及ぶ。→大切な人に迷惑をかけたくないから、浩一はもっとも安全であろうバベルの塔に、一生、閉じこもっているしかない。
 このように、私は考えますので、残念ながら、浩一の未来は暗澹としていると思います。もし、彼が二百年以上生きる長寿の血をも引き継いでいたら、三つのしもべとコンピューターだけに最期を看取られて(いや、ロプロスは破壊されているから、二つのしもべか)、ひっそりと息を引き取るのでは? 悲惨ですね。私としては、「なぜ正しいことをやった彼が、こんな悲しい一生を送らなければならないのか」と、かなりやり切れない気分です。
 それで、ご存知のとおり、このブログで『ザ・リターナー』をかなり批判してきましたが、浩一を幸せに、心からの笑顔を見せてくれるようにしてくださるならば、設定やキャラクターや設定の矛盾など無視して、野口賢さんに大いに感謝するでしょう。逆の場合は! 今までセーブしていた批判を解き放ち、ワタシ的「もう二度とレビューしない作家」というブラックリストに載せるでしょうね。頼むから、この期待だけは、裏切らないでくださいね、野口さん。
 ところで、『その名は101』は3巻の巻末のみに、藤川桂介さんの解説が載っていますが、いやはや、元々好きな作家様ではありませんが、相変わらず、的外れのひどい解説ですな。クローン人間と、浩一の血による超能力者は別次元では? 何よりも、「教えてやる」的、上から目線は、どうにかならないでしょうか。

2.ヨミと浩一に、よい競争相手としての友情は、成立しているか?

『バビル2世』を読みますと、「あの少年が わしにとっても この世でいちばんおそろしい」と、部下に正直に告白する(4巻)、悪人なのに、もっとも悪人らしくないヨミ。そんなヨミは、バビル2世に対して、「そうすれば よきライバルとして 花のひとつも投げてやろうぞ」(4巻)、「むうう 好敵手と思っていたが こんなぶざまな姿を見せるとは」(7巻)、「さらば よきライバルよ」(8巻)と、好敵手として尊敬していたのは間違いありません。
 しかし、バビル2世の方は、ヨミの遺体は砂漠に埋めっぱなしにし(3巻)、「よし 今こそ ヨミにとどめをさすんだ」(7巻)に、悪名高い、部下を水責めにして、ヨミを消耗させる(7巻)と、情け容赦なしで殺る気満々のように思われます。
 けれども、『その名は101』の最終回近くで、ヨミ復活を知った浩一は、一応動転しますけれども、今までのCIA超能力者追跡を投げ出して、ヨミの行方を追う過程では、心なしか、生き生きしているように見えました。きっと、浩一自身は断固として否定するでしょうが、心の奥ではヨミとの戦いを臨んでいたに違いありません。
 浩一とヨミは、文字通り、好敵手だったのでしょう。

3.三つのしもべのベストシーン

 ロプロスは、『バビル2世』2巻、6巻と、他にもあったでしょうか。バビル2世とヨミ、双方の正反対の命令が下されているシーンです。まあ、機動力に破壊力と、もっとも使い勝手がよいしもべだったからでしょう。
 ポセイドンは、7巻のV号爆発直後で瓦礫に全身が埋まり、右足? だけ宙へ突き出しているシーン。悪いけど、ちょっとおかしかった。
 ロデムは、1巻で、超能力を発現しきれていないバビル2世が、改造人間に銃撃されて重傷を負って倒れたのを、懸命に守り、安全な場所へ運ぶシーン。これは、割と長く表現されていました。ロデムの焦りまくっている様子が、表情豊かでかわいかったです。

 結びに、『バビル2世』4巻の巻末にある、小説家、鳴海丈さんの解説の一部を引用いたします。
 

 彼を闘争の場に駆り立てるのは、純白の正義感というより、自分が宇宙人の末裔であるという、抗いがたい〈宿命〉だ。
 その宿命の重さゆえに、浩一は、時として敵のヨミよりも非情に見える時がある。それは〈選ばれた者〉(「プロフェッショナル」とルビがふられています)の哀しみでもある。
 本来ならば、読者に敬遠されるはずの、自己抑制型の主人公を立てた横山作品が、かくも長きにわたってヒットしてきたのは、奇抜な小道具やダイナミックなストーリー展開の魅力もさることながら、そんな戦いのプロの悲哀が鮮やかに描写されているからだろう。
 横山光輝は、そういう希有な漫画家(ここも、「プロフェッショナル」とルビがふられています)なのである。

 さすがです。私はこれを読んで、目が覚まされた思いになりました。確か、『乱愛の館』という官能小説の感想をこちらにアップしたかと覚えていますが、おかげで、鳴海丈さんをいっそう好きになりました。また、レビューさせていただきたいと思います。
 そして、再び、『バビル2世』1巻を読み直しますと、飛来したロプロスに、ほとんどためらいもなく乗り移ろうとした浩一の姿が感無量に見えてまいります。最初に読んだ時は、違和感ありありで、「浩一って、まるで、かぐや姫みたいだ」と、思いましたが、ロプロスは強引そうに見えて、実は無理矢理、連行しておらず、待っているだけなのですよね。あれは、浩一が普通の中学生から、超能力者バビル2世になってしまう、重要な場面でした。しかも、浩一はロプロスを拒否しようと思えばできたかもしれないのに、そうしなかった。自ら進んで、宿命を受け入れた、ということです。あれこそ、息つく間もないF市攻防戦(『バビル2世』6,7巻)、部下の危機に驚愕するヨミ(『バビル2世』7巻)、『その名は101』における血みどろの戦い、すべてのエピソード、名場面の始まりだったのですね。


 それでは、『バビル2世』『その名は101』、長い感想におつき合いいただき、ありがとうございました。これで終わりですが、横山光輝作品は手元にかなりありますから、また機会がありましたら、レビューいたします。


参考 鳴海丈さんの本の感想です。
『乱愛の館』の感想
『乱愛の館』の感想・補足


(追記)鳴海丈さんの解説を読んだ後のことと、『乱愛の館』感想を加筆。また誤字を修正しました。ごめんなさい。2010年8月11日17時33分



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