『月刊化石コレクション』no.08の感想
『月刊化石コレクション』(朝日新聞出版)no.08の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
今回の表紙は、割と浅い海底に沈んでいる、緑色のたくさんの石。よく見れば、石は気泡を発しているようです。これは、先カンブリア時代(約5億4200万年以前。絶句・・・・)に、地球を酸素で満たした、ストロマトライトの想像イラストです。ストロマトライトとは、約27億年前(あぅ・・・・)に誕生した、珠やカプセルのような形をしたシアノバクテリアが、砂や泥を巻きこんでドーム状に固まったものの化石です。今回のno.8に封入されている、化石ちゃんでもあります。これがもう、繊細で美しい! もしかしたら、シリーズ中、もっともきれいな化石かも。
見本写真は茶色ですが、私の手元にあるストロマトライトは、ビターチョコレートとミルクチョコレートをマーブル状にミックスしているようで、おいしそうにも見えます(笑)。細かな縞模様は、山の等高線というより、油や染料が流れたあとに似ていて不定形で、側面、裏面にも及んでいます。ちょいと細工をすれば、ブローチ、ペンダントヘッドにできるかも? 私はもったいないから、しませんけどね。そして、この美しい縞模様はストロマトライトの特徴で、赤、ピンク、ベージュなどもあります。
それでは、気が遠くなる年代史を簡単に申しましょう。約46億年前に地球が誕生し、およそ38億年前には最初の生命の萌芽がありましたが、地球環境を劇的に変えたのは、約27億年前のシアノバクテリアが生まれたことによります。シアノバクテリアは光合成を行なって、酸素を爆発的に増やしていき、生命(単細胞生物)にとって、酸素は生存に必要不可欠なものになっていきます。しかし、酸素は細胞を構成する物質を破壊してしまう、危険物質でもあります。そこで、当時の生命は、膜に包んで酸素から遺伝情報を守る形=真核生物へと進化。こうして、生命から生物が誕生し、単細胞生物が多細胞生物へと進化したわけです。シアノバクテリアがなければ、人間も生まれなかったわけです。しかし、後に誕生した生物達によって、シアノバクテリアは食べられ、一気に減少。辛うじて、現在は、ごく一部の海岸だけに生き残っているそうです。酸素を創り上げた大役を果たしたと言うのに、気の毒な生き物です。
このシアノバクテリアによる環境変化を、この本では「酸素汚染」とも表現しています。うーん、どうなのでしょうね。酸素は、がんの原因になる活性酸素もありますから、善悪両面を持っていますが、酸素なしの地球が進化していく過程が、私にはちと想像できません。今もたぶん、ストロマトライト、シアノバクテリアの研究はされているでしょう。さらにドラマチックで、私達の想像を越える、生命(生物)誕生の秘密が発見されるかもしれないかと思うと、私はもう、ゾクゾクしますね。それでは。
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