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2010年8月17日 (火)

『横山光輝時代傑作選 珠玉短編集 鬼火』の感想

 漫画『横山光輝時代傑作選 珠玉短編集 鬼火』(講談社漫画文庫)の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
 この漫画文庫は、あるHPの管理人様からの情報によって知りました。『暗殺道場』がお目当てだったのですが、他の短編も非常におもしろかったです。が、残念ながら品切れの模様。飯城勇三という横山光輝研究家の方が詳細な解説を行なっておられまして、1982年に双葉社から『横山光輝時代傑作選 鬼火』として刊行されていたそうです。横山光輝さんのお言葉も引用されていますけれども、できれば、すべて載せてほしかったですね。
 掲載された作品は、『野火』(1971年)、『暗殺道場』(1969年)、『ひも』(1969年)、『風夜叉』(1969年・今回が初の単行本化)。それでは、簡単なあらすじと感想を述べましょう。

『風夜叉』羽柴秀吉に使える忍者、白虎は、伊賀者10名を殺した、柴田勝家配下の謎の忍者、風夜叉の行方を追います。幻術と炎の戦いの末、判明した風夜叉は、何と若い女性でした。
 白虎も風夜叉も、あの忍者装束でして、あんた達、全然忍んでないだろう、とツッコミたくなりますが、忍者同士の戦いは、なかなか迫力に満ちています。

『ひも』忍びの源蔵は、命がけの仕事をしているのに、わずかな給金しかもらえず、不満を抱いていました。唯一の慰めは、里の美しい情婦、おつたとの触れ合い。ついに、源蔵は里を抜けることを決心しますが、たちまち追っ手がせまります。深手を負った源蔵は頭(かしら)に一太刀浴びせたところ、頭の正体は、愛しいおつた。おつたは源蔵にとどめを刺し、翌日は別の情人に甘えるのでした。
 優しげなおつたが、ものすごい豹変ぶりを示します。彼女、なかなかなまめかしく、和風美女といった趣ですから、男性の方にオススメです。横山光輝さんは、現代風より、おつたや『鬼火』の側室のような古風な女性を描く方がうまいように思います。

『鬼火』戦国時代のある国で、手強い盗賊の集団が現れます。首領は、鬼頭丸(きとうまる)で、彼らが略奪した屋敷は片っ端から殺され、放火までされます。僧侶の説得さえも、「地獄というのはな 現世のことをいうのだ・・・・」「おれが貧しい者にほどこすのは さげすみの気持ち以外何者もない」と言い放つや、首をはねます。領主(ヨミにそっくり!)は、厳戒態勢を命じますが、それをあざ笑うかのように、鬼頭丸は領主の側室を強姦、殺害。激怒した領主は兵士を出動させ、鬼頭丸はついに捕らわれるものの、彼は楽な処刑を拒絶します。かくして、凄惨な責めの後、鬼頭丸は絶命し、その死体は木につるされたまま、白骨になるまでさらしものにされました。
 これは、ニヒリズムの極致というか、陰惨にして凄惨なお話です。短編でなければ、読むに耐えないかもしれません。戦国時代って、ひどい時代だと思われますか? 現代だって、餓死の恐れがなくなったというだけで、鬼頭丸の時と変わらないのです。年収8億円も稼ぐ人がいる一方、年老いても年金がもらえるかどうか、先行き不明の大勢の人々。読了した後、私達って、何のために、なぜ生きているのかと、暗い気分になってしまうでしょう。文句なしの傑作です。ただ、粉砕される頭、生首、全身に矢を浴びせられる鬼頭丸など、強烈な残酷描写が頻出しますので、苦手な方にはご注意ください。ところで、領主の気の毒な側室ですが、彼女の乳やお尻が生々しいです。横山光輝さんは、あまり女性を描かれないため、かえって新鮮に感じられるからでしょうか。

『暗殺道場』江戸時代初期のある日、天真流の道場主が何者かに暗殺されます。愛弟子の鷹丸は、秘密の書置きによって、下手人が道場の四天王であることを知り、そして、彼らに天真流が暗殺術として活用されないよう、道場主に代わって倒せとの指示を受け、実行に移します。四天王もまた、鷹丸を敵と見なして殺しにかかりますが、鷹丸はすりの銀次の助けも借りて、満身創痍になりながらも四天王を抹殺します。
 あらすじとして書くとシンプルですが、これはかなりおもしろいです。解説によれば、横山光輝さん自身も気に入って、後に長編の『闇の土鬼』という作品の土台になりましたから。四天王と鷹丸が戦う手段は忍術でも剣戟でもなく、武芸、武術と言うものです。参考までに、四天王の得意技を挙げますと、一の太刀(相手の脳天をねらって、小刀を高く投げ、同時に自身が切りこむ技。頭上の小刀を防げば胴を貫かれ、前面の刀を防げば小刀が降ってきて突き刺さるのです)、隠し玉(小さな玉を鉄砲のように撃つ)、双條鞭(両手で使う、長く強力な二本の鞭。相手を殺傷するばかりでなく、木の枝に巻きつけて素早く飛び移ることもできる)、鉄線(目に見えないような細さだが鋭利で、相手に巻きつけたり打ったりして殺傷する)。対する鷹丸は、14から16歳くらいの最年少の弟子で、技量は高いものの必殺技はなく、自身も四天王の技を知っている程度。ですから、かなり危なっかしい戦い方で、知恵を絞り、万全の体制で備えますが、毎回負傷して、相棒の銀次の方が気をもむほどです。
 しかし、このお話、短編ながらも先行きの予想がつきにくい点ですぐれていますが、何といっても鷹丸がエロい! また紅林のワンパターンが出たぞ、とお思いでしょうが、本当ですよ。ふだんの姿からして、袴をはかず、草履に太股まで見せた短い丈の着物で、思いきり素足を露出していますから。加えて、私がHP、7月分の『WILD LIFE』で絶賛していた、黒目がちの、丸くて愛らしい、利発そうな瞳=つぶらな瞳! 鷹丸のこの特徴的な目がまた表情豊かで、道場主の前では純真そうだったのに、書置きを読んだ直後に四天王と顔を合わせた時は、明らかに敵対する様子でしたし、怪しげな銀次の前では、おどしつけるかのように、薄笑いとともに、にらんでいましたね。しかも、銀次と初めて会った時の鷹丸はずぶ濡れで、ふんどし一丁の姿。さらに、四天王との戦いで傷だらけになりながらも奮戦する様子には、私はもう、つぶらな瞳にも悩殺されて精神的鼻血っ! りりしい和風の美少年が好きな方には、きっと眼福でしょう。
 この短編集が品切れなんて、まったく惜しいことです。早く、復刊ドットコムにリクエストしておきますわ(まだしてなかったのか! ←自主ツッコミ)。それでは。

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