« 即売会も、あと10 分ほどで終わり | トップページ | 『ほんとにあった怖い話 テレビ版「ほん怖」原作特集号』の感想 »

2010年8月23日 (月)

『恐怖コミック傑作選』(秋田書店)の感想

 コンビニで購入した、『恐怖コミック傑作選』(秋田トップコミックス・秋田書店)の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
 何と480ページの厚みで、漫画の神様から恐怖漫画のベテラン、旗手までそろえた内容です。恐怖系を読みたいけれども、どれを読もうかと迷っている方、とにかく、怖い思いがしたい、刺激的なものが読みたい、という方にお勧めです。
 収録されているのは、8作品。まず、これはワタシ的にいただけないものから、申し上げましょう。

『学園百物語』(日野日出志)、ごめんなさい、この作家様は生理的に駄目です。若く愛らしい女性が、見るも無残な姿になり、喰い尽くされた挙句、おぞましい死体になるなんて・・・・きつすぎます。
『絶叫劇場』(谷間夢路)、かわいい少女漫画タッチと、半腐れの死体、異様な婆さんとのギャップがすごい。たぶん、それが特徴なのでしょうけれども、エグいとしか感じられませんでした。
『プレゼント』(犬木加奈子)、プレゼントは中味や金額でなく、心がこもっていることが大切、といったテーマはいい。でも、魚の目玉みたいな瞳の登場人物達は、怖さよりも、下手すると、ギャグっぽい感じがしてしまいます。恐怖漫画は、リアルタッチがいいのでは?
『恐怖実験室』(御茶漬海苔)、ストーリーはいいし、怖さも出ています。でも、私は作者様の自画像がもっとも印象づけられてしまい、「えっと、どんな話だっけ?」になりがちです。もったいない。

 おもしろかったお話は、次のとおり。
『お姉さんが死んじゃった』(千之ナイフ)、私はこの方の『闇のシルエット』の単行本を、実家に持っています。かなりファンです。描かれる美少女が、お人形のように端正で、メタリックなのがいい。
 でも、肝心なシタローは、キモいので好きではありませんけどね。たぶん、悪意のかけらもない無邪気な悪魔、シタローのデビュー作ではないかと思います。
『犬神博士』(丸尾末広)、この方の画、雰囲気ともにクラシックでいい感じですね。
『人形供養』(永久保貴一)、すっきりした絵柄なのが惜しまれますが、後半のエピソードの、ちょっとしたミスから集団いじめになる陰湿な流れは、少女の霊、人形の謎よりも怖く感じられます。
『エコエコアザラク』(古賀新一)、3話収録。たぶん、当時のチャンピオンを読んでいたはずなのに、『エコエコアザラク』とは、こういう話だったのかと、ようやく思い出しました。
 悪魔を呼び出す魔術、「黒魔術」をあやつる美少女、黒井ミサが妖しく怖いです。キリスト教にくわしい方が読めば、また感想が変わるでしょうが、何分、私は不勉強ゆえ、悪魔アスタロト等の名前、おどろおどろしい踊りなどに、たじろぎ、先行きが見えないゆえに、怖くなります。第1話、ミサが全裸になって、真面目な少年、菱田に、「抱いて」と、抱きついた後、秘密を知った彼を抹殺するため、「ゆるしてね 菱田くん」と告げる表情は、極上の怖さと美しさに満ちていました。
『女郎蜘蛛(じょろうぐも)』(手塚治虫)、クモが生理的に駄目な人にはお勧めできませんが、あまり怖くない、叙情的なお話です。
 美少女、由紀をめぐって、画学生の真島と丸橋が対立しますが、由紀は軍部に協力しない、真島と恋仲に。丸橋は特高に要請して、真島の目をつぶさせます。それでも、真島は由紀の手助けを得て、奇跡的に絵を完成させますが、彼女は失踪。軒下には、女郎蜘蛛の糸に包まれた、由紀の白骨死体がありました。
 このようなお話なのですが、恐怖漫画であるよりも、反戦漫画といった方が近いでしょう。けなげに尽くす由紀、盲目でも幸せそうな真島など、激甘な場面もありますが、全体のトーンが暗めなので、なかなか心温まるものです。とっくに死んだはずの由紀を、真島の元に送っていた女郎蜘蛛は、一体、どういうものなのでしょうか。女という文字があるゆえ、蜘蛛は由紀の魂と通じ合ったのかもしれません。いろいろ想像して、恐ろしくも悲しい恋物語を感じ取ってはいかがでしょうか。それでは。

ご協力お願いします。
人気ブログランキングへ

| |

« 即売会も、あと10 分ほどで終わり | トップページ | 『ほんとにあった怖い話 テレビ版「ほん怖」原作特集号』の感想 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『恐怖コミック傑作選』(秋田書店)の感想:

« 即売会も、あと10 分ほどで終わり | トップページ | 『ほんとにあった怖い話 テレビ版「ほん怖」原作特集号』の感想 »