『信長の忍び』3巻(重野なおき)の感想(加筆修正版)
四コマ漫画『信長の忍び』(重野なおき・白泉社)3巻の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
今回は1568年の織田信長の上洛と松永久秀の服属から、1569年の六条合戦(斉藤龍興と三好三人衆が、将軍の仮御所を急襲)、やや戻って1565年の永禄の変(松永久秀と三好三人衆による将軍御所襲撃事件)で第十三代将軍、足利義輝討死(信長は直接的関係なし)。1569年の伊勢平定戦の織田軍勝利と、1570年、年号が元亀に変わるまで(信長は早速、「元気が出そうな年号だな」と、オヤジ臭いシャレを言って、まったくうけなかったために、家臣達に火縄銃を向けます。P124)。
おわかりのとおり、3巻は初登場の「大和国大名 松永久秀」の出番が多いです。そして、写メにありますように、インパクトも絶大! これは「40 松永台風上陸」の回の、出だしの上半分のページに描かれた松永。すぐ下の四コマ「これで完成」で、信長は即刻、「降伏に見えねー・・・・」と、モノローグっぽく言っていますが、誰もがそう思うでしょうね。ヒロインである無敵の忍び、千鳥も、松永にはペースを狂わされっ放し。二度、お尻をさわられています(P27、P50)。それに、松永は今までにない、そしてこれから登場する人物も発するとは思えない、とんでもないことを言いました。千鳥へ、「男に抱かれた事があるのか」と、たずねて、うろたえさせ、フォローに入った助蔵には、「お前 この女を好いておるのか?/これを読んでおくがいい」と、黄素妙論、つまり「Hのハウツー本」を渡して、助蔵を赤面させてしまいます(P18)。千鳥、彼の居城、多聞山城に忍びこめはしたけれども(P7)、助蔵ともども、信長の忍びでありながら、松永に歯が立たないとは!
しかし、大仏を全焼させたため、わが郷土では、松永は嫌われています。私はダンナのように土着しておりませんので、松永の有能さ、パワフルさ、そして筒井順慶との争いに大いに惹かれていますし、茶道をやっている者として、彼の動向が見逃せません。第一、私が苦手な日本史をもう一度見直そうと思ったのも、この『信長の忍び』で松永久秀を呼んだからです。今後の展開に期待いたします。
ダンナは松永よりも、後半の伊勢平定戦における、北畠具教(きたばたけ とものり)・具房(ともふさ)父子に関心があるようでしたね。塚原卜伝に教えを受けた剣豪大名、具教は、織田軍の夜襲に、鬼のような迫力と強さで挑み、撃退しますが、肥満した息子の具房は、餅にしか見えない迫力ある巨体で、織田軍を恐怖させます(「怒りの親子」P77)。ついに、滝川一益でも相手にならず、千鳥との長い一騎打ちになりますが、最終手段として、具教は、新当流奥義「一の太刀」を試みます。結果は、スピードにまさる千鳥が、ぎりぎりで勝ちましたけれども・・・・「一の太刀」って、実在したのですね! 私はてっきり、『暗殺道場』か『闇の土鬼』という、横山光輝作品のみのフィクションだと思っていましたよ。横山光輝さん、重野なおきさん、失礼いたしました。
今回、松永久秀が目立って、竹中半兵衛、森可成の印象や出番が少なくなってしまったのは、少し惜しい気がします。それでも、実は松永の次に驚いたのは、元美濃の大名で、だらしないブサメンだった斉藤龍興が、とても有能なイケメンに変貌して、信長へ復讐をしようと、将軍御所を襲撃したことです(六条合戦)。他に、マルチ才能の持ち主なのに、いちいち句を詠まずにいられない細川藤孝、極度の忍びアレルギーの滝川一益など、おもしろく個性的な武将達が盛りだくさん。松本あやかちゃんが帯カバーと、感想文を寄せていますが、とても楽しく戦国時代がわかる四コマ漫画だと思います。ただ、3巻だけ、谷口克広さんの解説が巻末にないのですよ。おもしろおかしく笑った後、このビターな語り口でビシッと締める感じが、私は好きだったのに、惜しいことです。4巻は、信長の苦難の始まりだそうですが、見逃せません。買いますよ。それでは。
(追記)北畠具教が千鳥に対して放った、「一の太刀」は、「なお秘伝なので技の詳細は一切不明!!」(P100)であり、本文中でもあいまいに表現されています。たぶん、『暗殺道場』『闇の土鬼』に登場する「一の太刀」も、作者様のアイディアによるものでしょう。「一の太刀とは、こういう技だ!」と、結論づけていませんので、ご注意ください。もっとも、真似ようにも真似られませんが。(2010年9月8日17時50分)
参照
『信長の忍び』4巻(重野なおき)の感想
『信長の忍び』2巻(重野なおき)の感想
『信長の忍び』1巻(重野なおき)の感想
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