『進撃の巨人』2巻(諫山創)の感想
漫画『進撃の巨人』2巻(諫山創・講談社)の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
お話は、まず、推定約60メートルの超大型巨人が破壊した壁から、15メートル、7メートル、4、5メートルといった様々なタイプの巨人が多数侵入(巨人の体格については、P148の情報による)。人類側は、ぶどう弾などで対抗しますが、巨人の速やかな再生能力により、劣勢におちいります。エレンの死で放心していたアルミン(本名判明。アルミン・アルレルト)ですが、辛うじて兵士達と合流。彼らも大勢の仲間の死で動揺しており、住民の避難も遅々として進まない、暗澹とした最中に、奇行種の巨人が素早く疾走してきます。あわやという瞬間、ミカサがその巨人の急所を切り裂いて、一発で仕留めました。呆れるばかりの沈着さを示したミカサは、844年(エレンの母が巨人に食い殺された前年)のことを想起するのでした。
ミカサの両親は、エレンの父、グリシャ・イェーガーが往診に来る寸前、ミカサの目の前で三人組の人身売買グループに殺されます。さらに、東洋人の末裔であるとして、ミカサは彼らに拉致されて森の中の小屋に監禁されますが、訪れたエレンが隙を突いて、二人を一気に倒します。けれども、三人目に絞め殺されそうに。その瞬間、脅えて泣いていたミカサは、「この世界は残酷なんだ」と認識して、ナイフで強盗を殺害。このようにして、ミカサはエレンの家で一緒に暮らすことになったのです。そして、今もエレンを思いながら、巨人への一撃をふるうのでした。
ところが、住民の避難が完了して撤退命令が出たのに、兵士達の立体機動装置がガス欠寸前。ガスのある本部は、大勢の巨人が群がっていて、近寄りたくともできないのです。怪訝に思ったミカサが、移動してきてたずねたところ、アルミンはついに、エレンの死を告げます。しかし、ミカサは平然と、「落ち着いて 今は感傷的になってる場合じゃない」「戦わなければ 勝てない・・・・」などと言って、先陣を切ります。彼らの意気も上がり、本部突入を試みるものの、ミカサの機動装置が先にガス切れ。彼女は街路に倒れこんだところを、左右から一人ずつ、巨人が挟み撃ちのようにして近づいてきます。刃は折れており、ミカサは絶体絶命の危機になりますが、突如として現れた巨人が、彼女をねらっていた巨人を、またたく間に倒してしまいます。奇行種の一つなのか、その巨人を殺す巨人は、人間のように格闘術を使い、弱点をねらっているような戦い方をして、人間には目もくれません。そんな巨人達の混乱を突いて、ミカサ、アルミン達七人は本部に突入します。さらに、アルミンの作戦も成功して、ガス補給が可能に。皆が喜び合う中、猛烈に強かった、あの巨人殺しの巨人が、巨人達に襲われて力尽きてしまいます。通常のように、その巨人も大量の煙を出して燃え尽きかけた瞬間、ミカサは、その首の後ろから、半身を起こしかけているエレンを発見して抱きしめ、号泣します。アルミンは、エレンの左足と左腕が再生しているのに呆然とし、仲間は多数の巨人の死体を見下ろして、「これをエレンが やったってことか・・・・?」。
ミカサ、目立ちまくり。2巻は、彼女のためのお話ですね。1巻で首席卒業とありましたから、強かろうとは思っていましたが、まさか、一人で巨人を倒せるほどのパワーがあろうとは思いませんでした。ほとんど表情がないままで攻撃するシーンは、結構迫力でした。エレンの死を聞いても、泣くアルミンを逆に励ますなど、その落ち着きようは怖いほどでしたが、ラスト近くで子供のように大声で泣くのは、私も胸が熱くなります。きれいな見かけに反して、猛烈に強い女性は好きです。格闘ゲーム、KOFのレオナみたいでいいですなあ(わからない方は、スルーしてください)。
ミカサの過去は壮絶ですが、しかしながら、強盗に対して問答無用で殺しにかかったエレンは、もっと恐るべき子供のように思われます。もちろん、父のグリシャ・イェーガーは叱責しますが、エレンは、「有害な獣を駆除した!!」と言い返して、反省しているふうではありませんでした。私はエレンがいかにも主人公らしい、勇敢で優しい少年と思っていたのですが、彼もまた心に何かの傷を負っているのでしょうか?
エレンの謎といえば、今回の復活も言わずもがなで・・・・。人類の反撃は、いよいよ本格化した反面、新たな謎が増え、深まったような気がします。次回予告に描かれていたエレンは、明らかにおかしい! 巨人の殺戮本能を、持ってしまったのでは? ミカサやアルミンは、彼をかばってあげられるでしょうか。
たぶん、『進撃の巨人』は、恐怖という感覚に訴えかける表現をされていると思うのですが、2巻のミカサの過去、また、あらすじでは省略しましたが、金と権力に明かして大勢を危険におとしいれる強欲な者など、人間のディープな内面、ダークな部分も描かれていて、怪物と人類との戦いという一枚岩ではありません。エレンの敵は巨人ばかりでなく、本来味方であるべき人類も、なんてことになったら悲劇ですね。3巻は楽しみですが、エレンが心配です。それでは。
訂正 ミカサの両親を襲った三人組を、「強盗」と説明していましたが、本日、読み返したところ、どうやら人身売買をやっているらしいとわかりましたので、「人身売買グループ」と訂正いたしました。申しわけありませぬ。(2010年11月7日23時50分)
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