『殺し屋さん』(タマちく.)の感想
2010年12月6日に発行された、コンビニ本、『殺し屋さん』(タマちく. 双葉社)の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
まず、内容は、本名、佐藤竜一という20代の青年殺し屋が主人公のコメディ。イケメンぶりが際立っていて、冷酷非情が当たり前の殺し屋なのに、シャイで動物好き、しかも妄想癖があって、よく鼻血を出して倒れます。登場人物は、小学校高学年ほどの年齢の、殺し屋の弟子、父を殺されたため、父の仇と殺し屋をねらう、ホームレス女子高生(父が亡くなって着の身着のまま、セーラー服で家を飛び出してきています。しかも、ドジっ娘で、言動が妙にエロい。当分、父の仇を討てそうにない)。定年間近なのに、殺し屋に心奪われてボーイズラブ展開の、デカ長。殺し屋専門学校(実在しませんから!)の同僚や先輩達、スズメバチやネズミ退治をしてくれるので、殺し屋を慕う、ご近所の人々、殺し屋の影武者青年など。
このコメディは、四コマ漫画であることが多いですが、たまに普通の漫画の形にもなります。どのスタイルにせよ、ストーリー的に続くというより、独立しているように思います。ハードボイルド的設定、展開、台詞の応酬のはずが、ほのぼの、エロ、鼻血ギャグになるというオチが猛烈におもしろい! 刺激が足りない、思いきり笑いたいという方へ、熱烈にお勧めいたします。
なお、この本は、双葉社のACTION COMICSに同名で発行されている単行本、1巻(2005年8月28日発行)および2巻(2007年1月12日発行)を再収録したものだそうです。作者のタマちく.さんとは、代表作『B.B.Joker』のギャグ原作者、「タマ(一條マサヒデ)」のネタに、ヤングチャンピオンで連載されている『センセ。』や『秘書課ドロップ。』などで有名な、セクシー漫画家「春輝」さんと合わせているからだそうです。ギャグとリアル+セクシー絵の質の高さは、太鼓判ものでしょう。単行本は現在、4巻まで発行されています。
ところが、ですね。こんなにおもしろい漫画なのに、現在、『週刊アクション』で休載中なのです。まあ、父の仇をねらう元女子高生と、殺し屋の妄想が、ややワンパターンな漢字変換ギャグなので、私は危ぶんでおりました。問題は、春輝さんの絵よりも、アイディア切れにあり? コメディ、ギャグというものは本当に難しい! 新鮮なネタを、読者の予想を上回るパワーと勢いで、表現し続けなければなりませんからね。
私の一番のお気に入りエピソードは、「第13章 俺の耳たぶはアルデンテより若干硬め」の冒頭のお話です。デカ長が、ひん死の被害者を見つけて介抱していたところ、背後から殺し屋が後頭部に銃口を突きつけ、二人の問答が始まります。デカ長:「なぜ おまえは人を殺すのか」殺し屋:「では あんたは何の為に生きている?」→殺し屋:「俺が海外へ逃げたら?」デカ長:「追うさ 宇宙の果てでも」殺し屋:「俺が息をしていなかったら!?」デカ長:「人工呼吸をする!(中略)俺はおまえを逃がさない! おまえが全てなんだ!」 と、互いに激高したように語り合います。ひん死の男は、「あんたら つきあっちゃいなよ」と、たしなめますが、デカ長と殺し屋は、恥ずかしがって、同時に逃走。オッサンと美青年のBL(ボーイズラブ)は、たまに読むと楽しいですね。とにかく、タマちく.さんのお早い復帰を熱望いたします。それでは。
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