『激マン!』2巻(永井豪&ダイナミックプロ)の感想
漫画『激マン!』2巻(永井豪&ダイナミックプロ・日本文芸社)の感想を申します。いくらかのネタバレを含みますので、ご注意ください。
デビルマンの章、進行中で3巻へ。不動明の合体→デビルマン誕生→シレーヌとの戦い開始、というストーリーですが、単行本のペースより遅いですがな。大丈夫かなあ。
もう一つの危惧は、1巻でも述べたかもしれませんが、ダイナミックプロのスタッフ(タカシ、ヤスタカなど、ながい激の兄弟も含む)、各編集者がすべて、物分りがよすぎること。人気絶頂の『ハレンチ学園』や『ケダマン』の連載をやめたいと、ながい激が主張したら、どうして皆、すんなり通すのでしょう? 一人ぐらい、「おまえは何年も続かせると言ったじゃないか!」とか、「先週のデビルマン、あの表現は何だ!」とか、反論する人もいてよさそうなのに。自叙伝やそれに類した創作物に多い、ナルシシズムに取り憑かれないとよいのですけどね。
今回は、ながい激が漫画家を志したエピソード、そして、『デビルマン』のバックグラウンドについて語るシーンがながい、いや、長くて印象的でした。だから、まあ、デビルマンの進行が遅いのも、仕方ないかなとも思います。
ながいが漫画家になろうとしたのは、すぐ上の兄の、悪趣味な冗談が発端でした。最近、命の大切さを当たり前のように主張されていて、その割に、命や死とは何か、よくわかっていないような風潮がありますが(わかっていたら、自殺なんてしないはず)、ながいの、死に対する不安と恐怖は、なかなか身につまされます。そして、自らの生きてきた証拠として、漫画の道を選んだ、というのも納得できます。応援したくなりますよ。
次に、編集者に語る、隠された『デビルマン』の意味について。もちろん、あの作品を恐怖SF、伝奇バトルとして読んでも間違いはないし、私も『デビルマン』ファンとして自信はあったのですが、ながい激の台詞に目からウロコが落ちる思いでした。
「だから この作品『デビルマン』における悪魔(デーモン)はみな 強力な軍事能力を持った兵士を抽象的な姿に表現したものだと思ってもらえるといいかも・・・・」
(デビルマンって何だ、という編集者の質問への答え)「不動 明は 日本の若者代表ってことでしょう それがデビルになるってことは・・・・/日本が軍事化するってことでしょう!」
「今は平和を楽しんで のほほんと青春を謳歌している青年が 国の方針で強制的に兵として特別訓練されて人殺しの武器を持たされる! そして敵国の兵を殺しに行く それがデビルマンになるという事!!」
「戦争の時 一番に活躍出来るのは 善良な正義を愛する若者じゃないですか!? (中略)国家が利用しやすい“最強の戦士”こそが 彼ら純粋な若者なんです!!」
編集者は、「・・そ・・それが・・・・デビルマン!?」と、愕然として言いますが、私の感想もまさにそのとおり! 恐れ入りました、永井豪先生(精神的土下座)。上記のながい激の説明に対して、私はただ息をのむのみです。
私の抜粋した台詞よりも、購入して全文を読まれることをお勧めいたします。ながいの周囲は生真面目に話し合っているか(仕事だから当然ですが)、あるいは、冗談を言い合って仲よくしているかと、緊張とほのぼのが交互に来る、「売れっ子クリエイターモード」ですが、『デビルマン』は精緻な絵で、シレーヌ、その手下、入浴中の美樹が襲撃されるエロ恐ろしいシーンと、これでもかと盛り上がっています。こんなにダブルで楽しめる漫画は、あまりないと思いますよ。それでは。
参照
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