『進撃の巨人』3巻(諫山創)の感想(加筆修正版)
漫画『進撃の巨人』3巻(諫山創・講談社)の感想を申します。ネタバレは抑えながらも含まれており、また、『デビルマン』(永井豪)についても述べている箇所がありますから、ご注意ください。また、作画に関して、かなり批判口調になっています。そういうのが苦手な方、どうもすみませぬ。
さて、素早く購入、読み終えておきながら、何をしていた? と、詰問されそうですね。すみませぬ。3巻で、ワタシ的にテンションが下がってしまい、言葉が出なくなってしまいました。なぜなら。
もう3巻、100ページ以上、作者様は描かれておられますよね? しかし、人間や巨人の、全身像のバランスの悪さという作画上の欠点が少しも改善されていませぬ。まあ、実際、作者様を紹介したフライデーの記事に、巨人をアンバランスに描くことによって、その異様さをうまく表現されている、みたいに解説されていましたから、私は一応、納得しました。それでも、第11話はひどい。アルミン大活躍の重要なエピソードなのに、エレン、ミカサ、アルミンの全身が、人間というより、出来損ないの人形のようです。手足の先が小さすぎ! これでは、体を支えられないって! また、爪先や足首の角度がおかしいようにも感じられます。第11話では、復活したエレンが、巨人の仲間でないかと、疑心暗鬼におちいった人々を、アルミンが一歩もひるまず、堂々と論破するという(ミカサにはこういう役割は無理でしょうね)、迫力があり、彼らの厚い信頼と友情が示される見せ場だというのに! せっかくの効果線が雑というか、汚い! 作者様は、今や主流となっているCGやスクリーントーンによる、人工的な効果でなく、ラフで荒々しい、手作りのよさをねらっていると予想されるのですが・・・・週刊マガジンに出張版を描く余裕があるのなら、試行錯誤して、描き直してほしいです! さらに、欲を言えば、キャラクターにもっと、視覚的魅力が欲しい! ミカサとアルミンは、予備知識のない方が見ると、姉弟だと勘違いされるのではないですか? 新キャラクター、リヴァイ兵士長とエレンは似ているし、ピクシス司令はいい性格をしていますが、妙に薄っぺらく感じられます。ああ、本当に惜しい。
はい、長々と失礼しました。苦情はここまでです。お話は、特別編と銘打たれた、宣伝っぽい『リヴァイ兵士長』と、第10話から第13話までを収録しています。リヴァイ兵士長は、これから本編と絡んでくるかどうか、不明ですので省略。要するに、ミカサよりも強い英雄がいるということですね。本編では、エレンの巨人変身(!)能力について、エレンのモノローグで語られます。ただし、その力は制御が難しく、エレンの心身に負担を強いる上、巨人への殺戮本能ともいうべきものが芽生えてしまうらしい? それでも、ピクシス司令は、これ以上の巨人の侵攻を防ぐため、トロスト区奪還作戦を強行。エレンの役割は、自らが巨人化して、巨人が開けた穴を大石でふさぐ、というものでしたが、即座に見境なく、ミカサを攻撃。彼女は辛くも逃れ、次に、アルミンが、自分を失っているらしいエレンに向かって説得を試みます。けれども、エレンは心地よい夢の中にひたって、アルミンの声に耳を貸そうとしません。このままでは、突入してくる巨人達に、全員食われるぞ!
と、3巻のお話はここまでです。ストーリー的には、アクションは少なめながらも、現在、やたら増えている、引き延ばしや中だるみはしていません。「アルミンは有能」という2巻からの伏線をしっかり回収していますので、今後にも期待できます。願わくば、印象的な台詞も欲しいところですが。
最大のポイントは、エレン巨人化の謎ですが・・・・ネタバレ以上に、私にもよくわかりませぬ。『激マン!』(永井豪)を愛読しているゆえ、私は『デビルマン』を連想しましたね。強大で無数の敵(デーモン)→デーモンの能力を自らに取り入れ、正義感あふれる、人間の心と、強靭でたくましいデーモンの体を持つ存在になるべきだ。→デーモンと合体した人間、デビルマン誕生という、『デビルマン』の初期エピソードが強烈でしたから、エレンはきっと、巨人と合体したのだと予想していたのですが。
エレンは、巨人に変身していたのですね。
これには、驚きました。しかも、父親が注射した謎の薬物の影響があるとはいえ、「巨人を殺す」「仲間を救う」という、切実ながらもシンプルな感情の高ぶりによって、エレンは全身の細胞を変化させ、巨人になった、らしい? だとすると、恐ろしい仮説が成り立ってしまうのですが、それは後ほど。
トロスト区奪還作戦は、実は、巨人を駆逐するのが目的ではありません。ピクシスの説明によれば、ウォール・ローゼが破られれば、食料が足りなくなり、人類は巨人でなく、互いに殺し合って滅びるであろう、というもの。ここで、疑わしい存在だった王政府が、ダークグレーの存在になりました。もしかして、巨人は、人類の人工調節に役立っている? それを承知で、王はもっとも安全なところに居座っているの? 王と巨人達は、極秘の取り決めをしていうのでは? 謎が深まりましたね。
その他の印象的な箇所としては、今回、やや出番が少なかったミカサについて。第13話、エレンが巨人化したまま暴走して、騒然とする兵士達をまとめたイアン班長が、ミカサをねぎらう会話。イアンが、おまえは自由に動け、「恋人を守るためだからな」と言うのに対して、ミカサは、「・・・・家族です」と、恥ずかしそうに言い直します。この表情がいい! 巨人は平然と倒すくせに、エレンに関しては弱いのですね。そんな君が、すごくかわいいよ、ミカサ。私は応援するぞ。
最後に、第12話終わりに、ピクシスのモノローグか、ナレーションのような言葉があります。
「(もしトロスト区奪還作戦が成功すれば、人類が初めて巨人に勝利したことになり)それは人類が奪われてきたモノに比べれば・・・・小さなモノかもしれん/しかし その一歩は我々人類にとっての 大きな進撃となる」
まさに、『進撃の巨人』のタイトルは、巨人と人類が激しく争い、進撃していくストーリーというわけですか! もう一度、エレン巨人化の謎を思い出してみてください。
人間は簡単に巨人化できる、あるいは簡単に巨人化できる人間もいるわけですよね。ここで成り立つ、とんでもない仮説とは。
巨人化しやすい者は、奇行種の人間といえるだろう。
すなわち、巨人の正体は、人間である!
ああ、ますます『デビルマン』と、かぶってきました。エレンが巨人化したり、その理由が解明された程度で、すべての謎は解けませんよね? 人々の猜疑心、虚偽、一致団結、無私の愛情といった、人間の持つ清濁すべてが混沌となって、今後も怒涛のストーリーが「進撃」されるものと、私は大いに期待しています。とにかく、作画面は創意工夫していただきたい。それさえクリアできれば、間違いなく、まれに見る傑作だと思います。それでは。
(追記)くどい箇所、誤字、巨人についての仮説を修正。また、「その他の印象的な箇所」として、ミカサのことを加筆いたしました。すみませぬ。2011年2月10日16時03分
参照
『進撃の巨人』5巻(諫山創)の感想
『進撃の巨人』4巻(諫山創)の感想
『進撃の巨人』2巻(諫山創)の感想・訂正と加筆
『進撃の巨人』2巻(諫山創)の感想
『進撃の巨人』1巻(諫山創)の感想
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