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2011年2月24日 (木)

『影丸と胡蝶 ほか七編』(横山光輝)の感想

『影丸と胡蝶 ほか七編』(横山光輝・講談社漫画文庫)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
『稚児地蔵』、1968年「クレイジー」集英社に掲載。岡っ引きの佐七が主人公の、推理物。人物関係、愛憎模様が少々複雑なのは、横溝正史の原作だから? 冒頭の佐七の立ち姿が粋というか、かっこいいです。

『仇討ち始末』、1968年「増刊漫画サンデー」(実業の日本社)、仇を討つ者が正義のはずが、討たれて死んだ男の方こそ立派だった、というお話。シビアながらも、ここまで徹底していると、すがすがしく感じられます。
『ほらふき陣左』、1972年「別冊漫画アクション」(双葉社)、辻真先原作。関ヶ原の戦いで功を立てたといばっている陣左は、実は小心者。長屋の住人を立ち退かせようとする、ならず者どもと戦うのですが、さて!? 最初はおかしくて、ラストはしんみり。例が出せませんが、昔の映画を見ているようでした。
『カニの赤槍』、1972年「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)、槍の名手で、大名達が欲しがった、可児才蔵(かに さいぞう)の風変わりな生涯。可児が女好きで、しかも、反則的にモテまくり。不細工なオッサンなのが、ワタシ的に惜しい!
『ムササビ』、同一タイトルで、まったく別のお話が二編。一つは、1969年「週刊少年キング」掲載で、主人公のムササビは、秀吉に仕える忍者。一族を殺されて、織田信長に恨みを持つ、凄腕の伊賀者、竜山坊の一味と戦います。ムササビは、格別の身軽さが身上。不死身と言われる平次と組んで戦うところが、なかなか痛快ですが、お話自体は皮肉な結末に。ムササビは『暗殺道場』の鷹丸が忍者装束になったようで、なかなかかわいい美少年ながら、敵を斬りまくっています。私は、こちらの『ムササビ』の方が好き。
 もう一つの『ムササビ』は、1976年・1977年「マンガ少年」(朝日ソノラマ)に掲載されており、江戸時代、身が軽いためにムササビと呼ばれた、お尋ね者の少年のお話。父を死に追いやった代官を殺し、また、逃亡する農民を追いかけようとする家老を斬殺し、と、今までの横山光輝作品にはなかった、激しい反逆者の姿を描いています。ラスト近くで、岡っ引きが死を覚悟で、悪人なら斬ってよいわけではないと、道理を説き聞かせるシーンが印象的でした。ムササビの髪型が妙な感じなので、少し残念です。
『影丸と胡蝶』、1964年「別冊少女マーガレット」(集英社)、タイトルを見、また少女漫画雑誌に掲載ということで、ラブロマンスと予想されるでしょう。ところが、これは薄幸の美少女、胡蝶がメイン。影丸は彼女を気づかって助けようとしますが、力及ばず、悲劇の運命を避けられませんでした。結局、二人に恋愛感情なし。この作品が影丸外伝のベスト1なのは、やはり全体にただよう切ないムードがあるから? 当時の女の子達はきっと、胡蝶に同情して、泣いて感動したでしょうね。私からすると、こんな悲劇を全身に背負ったような女には、絶対になりたくないですが。
『恋と十手とお銀ちゃん』、1975年「プリンセス」(秋田書店)、捕物小町と呼ばれ、気風がよくて町内に人気の、お銀ちゃんが、大店のだんな殺しの謎を解こうとがんばる推理物にして、ラブコメディ! ふだんのお銀ちゃんは男勝りのくせに、前髪の美少年、錦一郎が大好きで、なつきまくります。錦一郎も、それを承知しているのか、とぼけているのか? とにかく、二人のやり取りがかわいいですが、犯人追い詰めの場面は、きっちりと緊迫感があります。ワタシ的一押しですね。ところで、この漫画と、マンガ少年版の『ムササビ』、当時の雑誌をコピーしたかのように、線が荒いのが気になります。原稿を紛失したのでしょうか? おもしろかっただけに、惜しいなあ。とにかく、読み応えのある時代漫画短編集でした。それでは。

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