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2011年2月15日 (火)

『火盗斬風録ほか六編』(横山光輝)の感想

『火盗斬風録ほか六編』(横山光輝・講談社漫画文庫)の感想を申します。いくらかのネタバレがありますので、ご注意ください。

『伊賀の影丸-百舌(もず)の藤蔵(とうぞう)の巻』(1977年プレイコミック)、『伊賀の影丸-外伝-』(1970年別冊少年マガジン)、どちらも『伊賀の影丸』の外伝ですが(もう一つ、人気ベスト外伝『影丸と胡蝶』がありますが、これは別の短編集の感想にて)、出版社が違いますな。さらに、絵柄も異なっています。どうやら、横山光輝さんは、執筆時期ごとに、絵がかなり変わる方でいらっしゃるようです。『外伝』の絵は、『野火』の主人公、鷹丸に近く、『百舌鳥の藤蔵』の影丸は、どう見ても、時代劇コスをした、101(『その名は101』の主人公。要するに、16歳のバビル2世)。なぜ、こんなに出版社が違うのか、謎ですが、作品の出来はどちらもいい感じです。やはり、敵を倒して一件落着、みたいな単純明快なものではなく、苦く重い雰囲気です。私としては、これが初めての影丸との出会い(笑)になりますが、彼が上司(服部半蔵?)には「わたし」、仲間の忍者達には「おれ」と使い分け(しかも、タメ口)なのは、おもしろかったです。
『忍鬼』(1969年プレイコミック)、エロい女忍者が暗躍する、大人風味の短編。
『魔剣』(こちらも1969年プレイコミック)、奇怪な剣法を使う、茂作という醜悪な男と宮本武蔵の対決を描いています。ところで、『シグルイ』のがま剣法が、茂作のものと妙に似ているのが、気になりますね。茂作に拉致され、しばしば暴行を受けているであろう、妙(たえ)が、『忍鬼』のヒロイン、朱実(あけみ)と同様、エロいです。別に、サービスシーン満載でもなく、むしろ少ないくらいなのですが、ここが横山光輝作品の不思議なエロスであるようで。
『座っていた男』(1970年漫画アクション)、江戸時代の、道場主の娘とその母、主人公の武士、そして、母と主人公にだけ見える、謎の美男子をめぐるお話。三角関係っぽい、時代劇ミステリーですね。結局、座っていた男は何者なのか、読者の判断にゆだねる形になっています。最後の一コマが、横山光輝作品には珍しく、とても幸せそうです。
『飛猿斬り』(1972年別冊少年マガジン)、幕末、天狗党の残党を追う、岡っ引きの主人公は、手配中の「飛猿の山田」を見つけます。けれども、山田はうわさされるような卑劣な男ではなく、単身、天狗党との決着をつけようとするのでした。山田も主人公も、なかなかかっこいい。クールな山田、熱くて気風のいい主人公、どちらを選ぶか迷いますなあ(笑)。
『火盗斬風録』(1979年カスタムコミック)、本短編集のタイトルになっていますが、私は横山光輝時代劇短編の中でも、トップクラスのおもしろさだと思います。『時の行者』にも描かれていましたね。放火と盗賊の横行から、御先手組(将軍家の先鋒隊)組頭、中山勘解由(かげゆ)に、「火付け盗賊改め」という役目を申しつけられます。彼は江戸の悪人を根こそぎにしようとして、罪の軽重を問わず、斬るようになります。小悪党に密告を奨励したり(従わぬ者は、即刻首をはねました)、巨大な鉈包丁で複数の罪人の首を斬ったり、残酷な拷問を行なうなど、その行為はエスカレート。刑場に引き出された下手人が、「おまえは鬼だ!!  何人殺せば満足するんだ!!」と絶叫しても、勘解由は冷徹に、「地獄へ行って閻魔に伝えてこい!!  現世にも鬼がいるとな!!」と、言い放って、斬首。こうして、勘解由は鬼の勘解由と言われるようになった、というもの。私の身内は警察関係者なので、正義のために悪人を処罰するのは当然だと思うのですが、ストーリーが進行していくにつれて、勘解由が人間らしい表情さえ失っていくように見えるのは怖いです。「仲間を売れるか」と、突っぱねた悪人が人間らしいのか、徹底的に悪を征伐するためには、人間を捨てなければならないのか。人間のどす黒い業が、容赦なく描かれていますね。池波正太郎の時代小説、『鬼平犯科帳』との関連はあるのでしょうか? また、調べてみたいし、『鬼平犯科帳』も読みたいですが、この作品のニヒリズムにひたって思案するのもお勧めですよ。それでは。

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