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2011年2月28日 (月)

『クイーンフェニックス』(横山光輝)の感想

『クイーンフェニックス』(横山光輝・講談社漫画文庫)の感想を申します。ネタバレを含みますので、ご注意ください。

 この文庫本は、上下巻とありまして、初単行本だそうです。『週刊少女コミック』(小学館)の、1975年3月16日号から7月13日号までに連載されていました。そう、ミステリー仕立てとはいえ(サブタイトルに、「横山光輝SF傑作選」と添えられているのが納得いきません)、少女漫画なのです。でも! 正直言って! 巨匠でも、こういうことがあるのでしょうか? あまり魅力を感じられないのです。
 あらすじは、古代エジプト時代、カクラテスという僧侶と女王が禁断の恋におちてしまったために、神は激怒し、醜いバステトという少女に二人を殺すよう、命令します。バステトはカクラテスに一目惚れするものの、神の命令に従って、彼を女王ともども暗殺し、その代償として、永遠の美と生命を得たのでした。そして、現代の東京で、カメラマンの加蔵春彦は、ある既婚女性、鳩子と恋におちいる一方、世界各地で発見される、鷲の頭の雲がどうしても気にかかり、妹の真理を一緒に、アフリカの奥地へ旅立ちました。艱難辛苦の旅の末、そこには、不思議な女人国があり、それを統治するフェニックスと呼ばれる女王、あのバステトが待っていました。カクラテスの生まれ変わり、春彦を迎え入れ、ともに永遠に生きるために。しかし、鳩子もまた春彦を求めて到着し、女王へ反乱を起こす男達、莫大な財産をねらう暗黒街の親分と、様々な思惑が入り乱れ、あのバステトの美貌が失われていき・・・・というもの。
 こうやって説明すると、おもしろそうなのですけどね。ところが、ツッコミどころが満載で、どうもストーリーにのめりこめないのです。何と言っても、登場人物とそれぞれの関係にあまり惹きつけられません。春彦は、前世では女王、現世では鳩子(女王の生まれ変わり)と恋するのはわかりますが、王国の女兵スティンにもキスをされてしまうし、あやつられているとはいえ、バステトともキスをするし、ろくに抵抗もしないし、こんな優柔不断な男のどこがいいのだか。
 加えて、バステトが永遠の美と生命の持ち主であるのはいいにしても、人や動物をあやつる能力を、いつの間に持つようになったのか? 元は、一介の女奴隷か庶民のように見えるのに? そして、バステトは自分の力をフル活用するのでなく、何かというと、神におうかがいを立てるので、大して怖いというか、不気味な感じがしません。そして、エジプトの神々のうち、誰がバステトをそのように変えたのかも不明。せっかく、なかなかおもしろいエジプト神話を下敷きにしているのなら、最初にもっとくわしく説明してほしかったです。上巻では女兵が、下巻では王国の男達が反発、反乱を起こしますけれども、彼らの先祖はどうして、二千年もの間、女王に服従していたのでしょうか? とってつけたようなストーリーのように感じられます。
 割とよく描かれているのは、鳩子と真理ですね。しかしながら、鳩子は、バステトと三角関係になるところを、バステトが老婆になったためにリタイア。惜しい! 真理も、おてんばで明るい、兄思いの女子高生のはずですが、あまり目立っていませぬ。
 いいところは、もちろんありますよ。元々、乱れの少ない横山光輝漫画ですが、これはことさらに非常にていねいに描かれていると思います。これまた、今までの作品になく、台詞がかなり多いです。雰囲気、ムードを重視し、恋愛をテーマにした、野心的で画期的な少女漫画になる・・・・はずだったのですが、持ち味であるストーリーのおもしろさ、息つく間もないスピーディーな展開が殺されてしまったような気がします。単に、横山光輝さんは恋愛メインの漫画が苦手だったのかもしれませんね。なかなか、残酷描写は多いのですが、異国ミステリーにひたって、バステトのその後を想像するもいいかと思います。とにかく、横山光輝さんの意欲作であることは、間違いないでしょう。きっと、この失敗? 教訓? は他の作品に生かされていると思います。見つけ次第、報告しますね。それでは。

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