『月刊化石コレクション』(朝日新聞出版)no.09、10の感想
『月刊化石コレクション』(朝日新聞出版)no.09、10の感想を申します。ネタバレまみれですので、ご注意ください。
no.09の付録は巻貝で、ポーランド産の「ミューレックス・フリートベルキイ」、新生代の第三紀(約6550万年前から260万年前)にいた、ホネガイの古い種であるそうです。そう説明されても、よくわからない・・・・。ちっこくて白い、巻貝の化石としか見えませんですって。
特集は、『巻貝が語る、月と地球の不思議な関係』。巻貝の化石に残る成長線から、数千万年前の海、月の運動の様子が推測できるそうです。それによれば、月と地球の距離は今よりも近く、一日の長さも短かったらしい。そこで、月の起源に関する仮説のうち、「ジャイアントインパクト説」(火星ほどの大きさの星が地球に衝突したことにより、その膨大な破片が集まって月が生まれた)が有力視されているそうです。
・・・・残念。わざわざ解説してくれなくても、以上のことは、多くの人に知られていることですよ。私はそれよりも、古代の規則的な天文運動、ミランコビッチサイクルは、どのようにして判明したか(23,000年、41,000年、100,000年ごとに地球の地軸の傾き、公転軌道のずれが変化しており、地球規模の環境変動を起こしているという説)、説明してほしかったですね。巻末の、歯医者を勤めるかたわら、およそ5万点のアンモナイトの化石を収集している方のお話は、化石好きなら、すごく納得できるでしょう。要するに、no.09のおもしろかったのは、最後の方だけ、だったようで・・・・。
no.10は腕足類特集で、付録は古生代のデボン紀(約4億1600万年前から3億5920万年前)の、私の手持ちはアートリバという種類です。腕足類とは、一見、二枚貝そっくりなのですが、正面から見た殻が左右対称で、細長い肉茎があって、環形動物(ミミズ、ゴカイ)や肛動物(コケムシ)に近い軟体動物です。古生代で繁栄したものの、ペルム紀末の大絶滅で大幅に数を減らしましたが、辛うじて現在まで生き延びています(その理由は謎。やはり、似て非なるカイ類が増えたせいでしょうか)。
あまり動かない、目立たない、おもしろみがない感じですが、殻の内部に海水をろ過する仕組みが発達しており、その解説、カラー写真、イラストは興味深いものでした。もっと腕足類を研究すれば、無駄の少ない水質浄化ができるのではないでしょうか。彼らは誰に教わったわけでもないのに、ちゃんと工夫した生き方をしていて、本当に不思議です。
巻末には、私も大好きな、福井県立恐竜博物館、国立科学博物館が紹介されています。カラー写真もいいけれども、本物の化石、大勢の専門家によって丹念に再現されたレプリカを間近で見るほど、古代のロマンを感じさせるものはありませんよ。また夏休みに、見に行きたい! それでは。
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