『昆虫惑星』(横山光輝)の感想
長い間、お休みしていて、申しわけありませんでした。『昆虫惑星』(横山光輝・講談社漫画文庫)の感想を申します。いくらかのネタバレを含みますので、ご注意ください。
この漫画文庫は、SF短編集です。『ポイント4』は1976年冒険王(秋田書店)に、『昆虫惑星』は1977年月刊マンガ少年(朝日ソノラマ)に、『宇宙船マゼラン』は1977年マンガくん(小学館)に、『91衛星(サテライト)SOS!!』は1980年月刊少年チャレンジ(旺文社)に、それぞれ掲載されていたそうです。海洋冒険ものの『ポイント4』をのぞいては、宇宙もの? なので、スペースオペラファンの方にお勧めです。
『ポイント4』、船や航空機の行方不明が相次ぐB海域に、超能力を持つ少年三人が挑みます。どうやら、海底の古代遺跡装置が、四次元に送りこむ仕組みになっているらしい?
バミューダ海域のことでしょうか。古代=未開というありがちな先入観は、横山光輝作品にはないようです。反発したり、協力し合ったりする少年達の活躍はおもしろいのですが、どうして、彼ら、任務中はサングラスをつけているのでしょう? 何か、不気味っぽいし、あまりかわいくないです。それだけに、少し残念。
『昆虫惑星』、ある一組の男女が、謎の惑星の調査を行ないます。そこは、かつて高度な文明が栄えていたのですが、今では凶暴で巨大な昆虫ばかりが支配しており、殺伐としていました。しかし、調査員が発見した、その惑星の住民のメッセージには、驚愕の事実が・・・・!
この『昆虫惑星』の正体は、あっという間にわかりますよ。非常に風刺的でビターなお話です。
『91衛星(サテライト)SOS!!』、地球から飛来した調査船は、データにない、91番目の衛星を発見します。惑星自体は住民が死滅しており、彼らは壊れた衛星の調査に入ったところ、ジョナサン、スミスが行方不明に。そして、船長と峰が救出に向かいますが、ジョナサンとスミスの姿はありません。ついに、船長までが行方を絶ち、峰一人が恐るべき衛星と立ち向かうことに。
初単行本化のお話だそうです。謎は、すぐに解けます。さらっと描かれていますが、かなりエグい内容です。しかしながら、最年少らしい隊員の峰が、とてもかわいい。バビル2世に似た感じで、衛星のシステムと戦っていきます。一応、無事でよかったというオチですが、これも『昆虫惑星』同様、苦い風刺と警告を含んでいるように思います。
『宇宙船マゼラン』、未来の地球は、宇宙のどこかから飛来する核爆弾に攻撃され、荒廃しきっていました。地球防衛軍の宇宙船、マゼラン号に配属された、士官候補生、草刈通は、だらしない船長や乗組員に悩まされ、反発しながらも、宇宙で未知の敵と激しく戦いますが、船長は戦死。草刈は大勢の乗組員と命運を共にしながら、宇宙の驚異や敵と対峙することに・・・・。
アニメの『宇宙戦艦ヤマト』をスライドさせ、横山光輝風にアレンジしたかのようで、四編のうちで、もっとも長いお話です。それでも、地球側や敵の宇宙船のデザインは、非常にすっきりして見事ですし、戦いのシーンは迫力があります。敵側の謎についても、なかなかおもしろい設定を生かしています。最初はバカそうだった船長や乗組員が、実はなかなかしたたかで、草刈と協力し合い、信頼をはぐくんでいくのは、お約束なのですけれども、やはり、ほっとします。彼らの行く先には、絶望しかないのでしょうか、それとも、新たな希望に満ちあふれている? これは一応短編なのですが、できれば、『スタートレック』みたいに、宇宙を放浪し、冒険していくシリーズにしてほしかったなと、ちょっと惜しく思います。それでは。
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