『進撃の巨人』4巻(諫山創)の感想
『進撃の巨人』4巻(諫山創・講談社)の感想を申します。いくらかのネタバレを含みますので、ご注意ください。
巨人化によって、心地よい夢か幻に、心満たしてしまったエレンですが、アルミンの渾身の叫びによって覚醒。当初の計画どおり、巨岩を抱えますが、巨人の身でも持て余すほどの重量。抵抗も防御もできない状態で、巨人達が近づいてきます。ここで、ミタビ班や他の兵士達は、彼ら自身が地上に降りて、おとりになります。ようやく、巨人化エレンが岩で穴をふさぎますが、大勢が巨人に食い殺されてしまいました。当のエレンも消耗してしまい、生き残り巨人がせまって来ているのに、逃げられません。絶体絶命の危機を救ったのは、調査兵団の兵士長リヴァイでした。
次から、エレンが昏睡状態になるのと合わせてか、三年前の847年の過去編になります。つまり、エレンの母の死から二年後ですね。1巻で紹介されていた、エレンやミカサを含めた成績上位10名の名前、個性、厳しい訓練等のエピソードについて語られました。
そして、現在に戻り、訓練兵達は、巨人に初勝利を治めた、その犠牲の大きさに慄然とします。ジャン・キルシュタインは、仲間のマルコ・ボットの死体を発見し、サシャ・ブラウスとアニ・レオンハートは、巨人が吐き出した、身元不明の死体の山に、ただ立ち尽くします。やり切れない思いのまま、ジャンは安全だったはずの憲兵団から、調査兵団へと志願を変えることを、仲間達に告げました。
昏睡から回復したエレンは、鎖につながれ、囚人のような扱いで、調査兵団のエルヴィン団長とリヴァイ兵士長の尋問を受けます。「調査兵団に入って・・・・とにかく巨人をぶっ殺したいんです」と、エレンが答えると、リヴァイは、「俺はコイツを信用したわけじゃない/裏切ったり暴れたりすれば すぐに俺がコイツを殺す」と念押しします。かくして、エレンの調査兵団入団は認められましたが、うまくいくのでしょうか。
悪いところから申しますと、ストーリーはいいのですが、絵が今一歩。相変わらず、線が弱く、全身のバランスが変。第18話の前半、過去編で、ジャンに語りかけようとしている、マルコの顔がゆがんでいて、興をそがれて、がっかりです。作者様、『進撃の巨人』は基本、シリアスなのですから、もっとていねいに描いてください。お願いします。
いいことろは、今回、予想外な見どころが増えています。まず、臆病っぽかったアルミンが、巨人化エレンを鼓舞し、絶叫します。これはアルミンの友情が、エレンを救ったということでしょうね。かっこいい!
次に、今後の展開に大きく関わっていくことが確定的なリヴァイですが、憎たらしい態度、上から目線、団長の前でも容赦なくエレンを罵倒するなど、本当にいやな男です。絶対に、エレンと衝突するでしょうが、最強であるだけに、エレンに勝ち目はなさそう。どうなるのでしょう?
今回は、アクションシーンよりも、学園ドラマのように、食い意地のはったサシャと、エレンと衝突していたジャン以外は目立ちにくかった、訓練兵士の面々がおもしろいです。ジャン、実はミカサに好意(それとも恋?)抱いているようで、そんなミカサとエレンが親しくしているのが気に食わない→エレンにつっかかる、という構図だったようです。
例によって、あらすじではカットしましたが、毎度、サシャの食道楽ぶりは徹底していて、笑わせてくれます。さらに、4巻では、アニ・レオンハートのエピソードが、ワタシ的にヒットでした。ミカサも陰りがあっても単に口下手ですが、アニは閉鎖的という感じです。それでいながら、エレン、ライナー・ブラウンを対人格闘術で倒してしまうから、あなどれませぬ。彼女はどうやら、父親から屈強になる術を教わったようですが、「私はもうこれ以上 この下らない世界で 兵士ごっこに興じれるほどバカになれない」と、うそぶいて、背を向けます。ミカサと似ているようで、完全に異なる個性の持ち主ですね。作者様、リヴァイといい、くせ者の描き方、描き分けが絶妙です。
ところで、私は今頃になって、『進撃の巨人』の、王道というか、定番破りの表現を見つけましたよ。本当に、「今さらかよ」と思われるほど、当たり前なので、興味のない方は、すっ飛ばしてください。
(エレンは主人公ですが、訓練兵の成績5位なのですよね。少年漫画の主人公って、スポーツや格闘では成績トップか、せいぜい3位まで、あるいは9位や10位といった、最後の方にいるのでは? そして、ライバルと切磋琢磨して、のし上がっていくというパターンが王道というか、定番ですよね。
それなのに、エレンは10名中の5位という微妙な位置。しかも、ミカサはトップだし、アニも4位。男女混合の戦闘チームというのも、珍しい設定だと思います。しかも、一般女性は家事や育児、家業などをやっているらしいのに、兵士となれば、強さが重要で、男女差は関係なし、というのは、なかなかおもしろい。まあ、勝敗は問題ではなく、相手が奇怪で謎めいた巨人であり、敗北、すなわち死であるからこそ、各人の優劣や強弱よりも、いかに巨人を効率よく、数多く倒せるかということにポイントがあるからでしょうけれども)
エレンはこれから、どのように戦い、生きていくのでしょう? ミカサとの関係、アルミンとの友情、仲間達との信頼を保っていけるのでしょうか? 新たな調査兵団との関わりも含めて、見逃せない物語であることは確かだと思います。それでは。
参照
『進撃の巨人』5巻(諫山創)の感想
『進撃の巨人』3巻(諫山創)の感想
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