『怪眼』(伊藤三巳華)の感想
漫画『怪眼』(伊藤三巳華・朝日新聞出版)の感想を申します。いくらかのネタバレがありますので、ご注意ください。
朝日新聞出版様の『HONKOWA』や『ほんとにあった怖い話』なら、コンビニ版も含めて、長らく愛読してきましたが、単行本の購入はこれが初めてです。やはり、紙の質がいいと、怖さがパワーアップしますのう。
『怪眼』は、伊藤三巳華さんの短編集ともいうべきもの。2008年から2010年までの『ほんとにあった怖い話』に収録されたお話で、私は一応、すべて読了したはずですが、それでも怖かった! 『HONKOWA』で連載されている、『スピ☆散歩』と異なり、シリアスタッチの絵柄です。ただ、合間に入る、『はじめに』『おわりに』(前記と後記ですな)、『晴れのち禍々』という日常エッセイ風漫画は、なかなかかわいい。
そういうわけで、『ほんとにあった怖い話』中にある感想と重複してしまうかもしれませんが、それでも、きれいな紙であらためて見る、読むのも悪くはありませんね。ささっと、簡単に感想を申しますよ。
『自殺の連鎖』、なぜか、自殺の多い踏み切りで、高校生だった伊藤三巳華さんが体験たり、他の人々が見聞したりした、怪奇譚。自殺名所という怖い場所がありますが、やはり、大勢を引っ張りこもうとする、悪霊とも言える存在がいるのでしょうか。
『呪いの果て』、伊藤さんと知人のスピリチュアル・カウンセラー、コザクラさんの怖い体験。だーかーら、人を呪ってはダメ! 呪いに手を貸すなんて、最低! そして、気になるのが、最後の「このお話は 今なお続いています/正直 私もどこまで関わっていいか わかりません」というモノローグの締め。霊が見える霊能者という人達は、呪いまで受ける恐れがあるのでしょうか。
『佇む女たち』、伊藤さんコザクラさん、それぞれによる、旅先での怖いお話。コザクラさんの出会った霊は、悪意がない? 伊藤さんが話を聞いた、ギャル風の女の子は、気の毒でした。人それぞれ、霊もそれぞれということでしょうか。でも、怖い。
『死を待つ女』、収録作品中、もっとも恐ろしいお話です。コザクラさんが、本当に危なかった。上記とは異なり、強烈な霊が登場します。そいつの台詞も怖いですが、ラストページは、本当に怖くて、あまり開けられませぬ。
『怪眼』、伊藤さんと、友人の川原有稀さんが、子どもの頃、別個に奇妙な体験をします。しかし、「異様にピンク色の空」「髪の長い、白い袴の巨大な青年」という点で一致し、二人は霊感を得るようになりました。後半、伊藤さんが夜の神社で体験する、不可思議な出来事。これらは、伊藤さんの推測するとおり、パラレルワールド現象でしょうか? 見えるからといって、霊的なことが何でもできるわけではないようです。怖い思いをしないと、霊感は生まれないのかな?
『祈りの声』伊藤さんが、旅先の長崎と特攻隊資料館で、不思議かつ生々しい体験をしました。怨念どころか、すべてが真っ白く感じられる長崎。死の瞬間の記憶と、強い熱気に包まれ、当時の隊員達から応援のように、背中をたたかれる感覚に見舞われる、資料館。後者の人達は、できれば、早くあがっていただきたいと思いましたね。
はい、以上、すこぶる怖いので、お休み前に読まないことをお勧めします。それでは。
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コメント
怪眼、私も持っています。あれは、チョー、こえー!って感じです。どの場面、どの話も背筋が凍る怖さなのですが、私が一番こんな目にあったらどうしよう・・と思ったのは、線路での自殺者の女性の霊。自転車の荷台を抑えて、ニヤニヤしているなんて。ミミカさん、助かって良かったー。
呪いの話も怖すぎ。でも、呪う方も命懸けですね。自分の死を覚悟して呪うんだから。まあ、そういう人はそんな事どうでも良いんでしょうけど、呪われる方はたまったもんじゃないですね。
マンションの話も悪霊が出てきて怖かったです。でも、ちょっとかわいそうな気もしますね。永遠に彼氏を待っているんですから。他の人たちを巻き込むのは良くないですけど。
感想が上手くまとまらなくて、すみません・・・。
投稿: ビョーク | 2013年3月10日 (日) 13時59分
ビョーク様、コメント、ありがとうございます。
いやいや、わかりやすい感想ですよ、心配しないでください。
「うわぁ、この辺、いやな感じがする」という感覚、直感は、霊感のない人でも持っているそうなので、ゾクゾクしたら、素直にそれに従ったらいいらしいですよ。
伊藤三巳華さんのこういうシリアス系のお話は、かなり怖いですが、それでも作品化して読めるのは、ラッキーですよね。
やはり、才能や守護天使様のおかげなのかな、と思ってしまいます。それでは。
投稿: 紅林真緒 | 2013年4月 3日 (水) 23時54分