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2011年9月 4日 (日)

『進撃の巨人』5巻(諫山創)の感想

 漫画『進撃の巨人』5巻(諫山創・講談社)の感想を申します。あらすじ紹介における、いくらかのネタバレに加え、かなり批判的に表現しておりますので、「『進撃の巨人』最高!」「諫山先生は神!」と、純粋に思っておられる方は、充分にご注意ください。もしかしたら、私一人が唯一、第35回講談社漫画賞少年部門受賞のこの作品を、否定的にとらえているかもしれませぬ。自分が浅学で、ひねくれていることは、存分に自覚しておりますので、「ふーん、こういう妙なことを感じるやつもいるのか」と、さらっと、読み流していただいた方がよいかと思います。

 構成は、『特別編 イルゼの手帳』と、本編第19話~第22話。『特別編』は、週刊少年マガジンにでも掲載されたのでしょうかね? 調査兵団の生き残り、イルゼが書き残した手帳には、突如として現われた巨人が「ユミルの民」「ユミル様」などと、言葉を発したことを記していましたが、彼女自身は・・・・というもの。確かに、重要な伏線のようですが、わざわざ、『特別編』とするほどのもの? 本編に登場する、ハンジ分隊長の話のエピソードに含めれば、すっきりするのに。イルゼはノートに、「私は屈しない」と、繰り返していますが、それほど強靭な精神の持ち主なら、どうして、後半、巨人と出会ってキレる? 死に物狂いで、ユミルと言ったその巨人のことを調べるか、生き延びるための方法を考えるべきではないでしょうか? キレて脅えるくらいなら、「怖くてたまらない」と、正直に認めた上で、それでも最期の瞬間まで、書きつづりたい、と述べればいい。一人きりになって、格好をつける必要があるの? 本編もそうですが、諫山創さん、台詞やナレーションが垢抜けていませんよ。もう少し、がんばってください。
 本編のあらすじは、予想外に、エレンは巨人の仲間ではないかと、有力者から裁判で糾弾されますが、リヴァイ兵士長の蹴り、エルヴィン・スミス団長の弁護のおかげで、調査兵団に身柄をあずれかれることになります。ミカサやアルミンなどの他の仲間の訓練兵は、憲兵団に入ることにしたアニを除いて、全員が調査兵団を志願。彼らの最初の任務は、長距離索敵陣形(説明が難しいので、興味のある方は単行本を購入してください)による壁外調査。何体かの巨人と遭遇したものの、順調だったはずが、右翼から、知性を持つ女型の巨人が、巨人の大群とともに来襲。女型はネス班長とシスを瞬殺した後、アルミンを追ってきた!

 こうやって書くと、おもしろそうだし、楽しめなくもないのですが。すでに、5巻の表紙からして、「エレンが二人?」と、首をひねってしまった私は、巨人に対して恐怖、絶望する前に、冒頭の登場人物紹介や、あちらこちらの場面で頭を抱えて、うめきました。もう5巻なのに、私が再三指摘してきた、人物の描き分けが、あまりできていないようです。だったら、コマ割、ロングやアップの活用、もっとていねいに効果線を描くなど、創意工夫すべき点はあるはずなのですが。5巻は背景が白っぽいことが多かったせいか、欠点が浮き彫りに! せめて、男女の体格の違いは、あってもよさそうなのに。調査兵団が乗馬する場面、こんな太っていて足の細すぎる馬で、本当に役に立つの?
 最初の裁判の場面では、有力者達のエゴ、特異な価値観、王政府と、いくらでもダークにディープに感じたり、考えさせられたりするはず。そんなずるがしこい人々が、存在感が薄いのです。何よりも、ストーリー展開と直接関わらないだろうと思いますが、巨人の恐怖を熟知しているはずの訓練兵達が、激しい葛藤の末に、生存率の低い調査兵団を志願し、敬礼するシーン。感動すべきところが、「ミカサとアルミンて、姉弟みたい」「ライナーとジャンて、今一歩区別が・・・・」と、先にツッコミを入れてしまいました。ぽんぽんと心地よく、ドキドキと盛り上がるはずが、この不安定な画力のため、水を差されてしまいます。画力、画力と、しつこいですか? 下手ウマな漫画家様はかなり少数ですし、サイレント漫画というものもあります。漫画スクールで、「画力なんて、なくてもいい。そんなの、二の次だからね」と、教える先生なんて、考えられますか? 画力は漫画の命なのですよ。今後、『進撃の巨人』を読み続けていくためには、この絵柄と妥協するしかない?
 さらに、5巻でいただけないと思ったのは、先に申した、文章がパッとしないこと。よく言えばナチュラル、悪く言えば無雑作。第20話で、エレンがしみじみと、「変革を求める集団・・・・それこそが調査兵団なんだ」と、もっともらしく言っています(変人集団というだけなのにね。それにしても、恥ずかしい台詞)が、変革を求める集団=変人?? 世界的偉人は、確かに変人的エピソードは多いですが、変人ぶりだけを追及して、その業績、研究成果は、どうでもいいって、おかしくない? 私としては、ハンジもオルオも、もっとはじけたエピソードが欲しいです。クールそうでいながら、清掃係みたいな格好をしたリヴァイには、笑えましたけどね(ようやく、初めて、ほめた・・・・)。
 そう、いいところは、相変わらず、先行きが読めないところでしょう。いきなり、リヴァイが、拘束されて身動きできないエレンの顔を蹴りつける場面には、驚かされました。調査兵団にしては、常識人と思われた、エルヴィン・スミス団長は、エレンを使って、何か秘密を探ろうとしている模様。加えて、エレンと反目し合っていたジャンは、皆を代表するかのように、エレンに対して、その能力を発揮することを求めてきます。憎たらしい印象のあったジャンですが、ミカサには我を忘れるというほどでもなさそうだし、好感度が上がりました(むしろ、暴走気味のエレンがうっとうしい)。やっと、ジャンとエレンは和解するのでしょうか。エレン巨人化は、自傷行為がきっかけになるそうですが、リヴァイに折られた歯は、またたく間に生えましたし、謎も増えた反面、伏線は回収されており、ストーリーは間延びしていません。むしろ、スピーディーで熱いです。
 そういうわけで、辛辣に述べましたが、私は『進撃の巨人』に期待していますし、次は表現面、文章系で、ぜひとも、あっと言わせていただきたいと望んでおります。それでは。

(参照)
『進撃の巨人』4巻(諫山創)の感想

『進撃の巨人』3巻(諫山創)の感想

『進撃の巨人』2巻(諫山創)の感想

『進撃の巨人』1巻(諫山創)の感想

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