『シドニアの騎士』1巻(弐瓶勉)の感想
漫画『シドニアの騎士』1巻(弐瓶勉・講談社)の感想を申します。いくらかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
未来SF漫画ですね。あらすじを申しますと、西暦等は不明、どころか、謎の宇宙生命体、「奇居子(ガウナ)」に太陽系を破壊されて、すでに千年も経っています。人類(地球人)は巨大な播種船で恒星間宇宙船、シドニアで宇宙を旅しながら、襲来する奇居子と、必死で戦っているという、かなり絶望的な状況にあります。
そのような中、シドニア最下層で成長した、主人公の少年、谷風長道(たにかぜ ながて)は、ちょっとした偶然から訓練生となり、名機である継衛(つぐもり)に搭乗します。同じ岐神(くなと)班にも、山野栄子、リーダーの岐神海苔夫(くなと のりお)と、、常識知らずの長道を毛嫌いし、はねつける者もいれば、男女以外の性を持つ、科斗瀬(しなとせ)イズナ、最強らしい赤井持国(あかい もちくに)、雪白など、長道を気にかけ、親切にしてくれる者も。不器用ながらも、長道は初めて奇居子と接触し、雪白の助けもありますが、奇跡の生還を果たします(山野栄子は戦死)。しかし、岐神はなおも長道を見下しており、追い払った奇居子が再び接近中。今度は対奇居子必殺武器、ガザビシを用意します。赤井達四人、そして長道は、無事に生きて還れるのでしょうか。
作者様に関しては、不勉強ゆえ、知りません。全体的に静かながら、読後に深く心に残るお話です。SFというと、サイエンス・フィクション、サイエンス・ファンタジー、いずれにせよ、メカニックで派手で、壮大、爽快というのが王道かと思いますが、この『シドニアの騎士』には、不思議なノスタルジーがただよっています。つまり、未来のお話なのに、まるで太平洋戦争の出征した大学生達の姿を連想させるような、長道達の出で立ち、戦死者の墓碑銘。そして、後半には重力祭というイベントがありますが、格闘である重力杯を除けば、これはまるっきり、昭和世代のお祭なのですよ。星白は浴衣を着、イズナは、リンゴ飴をかじっておりましたからね。
それでいて、重要な存在である、奇居子のデザインが、すばらしくエグい。巨大な触手の塊のような、のっぺりした人の頭の頭部を持っているような? よくわからない方は、購入して見てください。加えて、シドニア自体、巨大すぎて、システムなどが謎のまま。たぶん、これから長道視線で、解明されていくのでしょうね。長道は光合成ができないから、三十人前を食べる(P166)とか、からかわれていましたが、シドニアの人類は光合成ができるようです。
そういうわけで、ノスタルジー、宇宙の恐怖生物、斬新なメカニック、宇宙船の設定と、いくつもの要素が渾然一体となった、じわじわと熱い物語の開始です。これからの展開が楽しみ。それでは。
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