『ベルセルク』5巻(三浦建太郎)の感想
漫画『ベルセルク』5巻(三浦建太郎・白泉社)の感想を申します。ネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
5巻は、「黄金時代(7)(8)」、「剣風」、「不死(ノスフェラトゥ)のゾッド(1)~(4)」、「剣の主(1)」という章で構成されています。ガッツの怨敵、あるいはライバルの一人、ゾッドが初登場。しかし、ゾッドって、「ノスフェラトゥのゾッド」という通り名だったのですね。すっかり、「不死のゾッド」と思いこんでいましたよ。
鷹の団でのガッツの初陣とも呼ぶべき、殿作戦は成功。かたくなに皆を拒絶していたガッツでしたが、勝利の宴、グリフィスとの二人きりの会話等によって、少しずつ心を開いていきます。一方、ガッツは、グリフィスが持つ、“覇王の卵”という、奇妙なペンダントトップ(実は、深紅のベヘリット)が、妙に気にかかるのでした。
三年後(ガッツ18歳?)、鷹の団は、チューダー王朝との百年戦争にあえぐ、ミッドランド王国に加勢します。ガッツも、危険な最前線に立つ、切り込み隊隊長として、すぐれた戦功を立てていく一方、千人長のキャスカとは犬猿の仲で、グリフィスがいつも取り成しています。鷹の団はミッドランド国王に認められ、グリフィスは騎士の位を得るのでした。
ところが、別の戦で、ある敵のために切り込み隊が城内に釘付けとなり、大半が斬殺される異常事態が起こります。その敵とは、伝説的存在の「不死(ノスフェラトゥ)のゾッド」。ガッツは焦れて、その半人半獣のような大男に一騎打ちを挑みますが、わずか一撃当てただけで、ゾッドは二本角を生やした、直立する牛のような、恐ろしい真の姿を現します。グリフィスも加勢しますが、逆にゾッドに気絶させられます。とどめを刺そうと近づくゾッドですが、グリフィスの“覇王の卵”を見るや、態度を豹変。ガッツに対して、「この男(グリフィス)の野望が潰(つい)える時・・・・貴様に死がおとずれる!! 決して逃れられぬ死が!!!」と告げるや、巨翼を開いて飛び去ります。
そして、ミッドランドで療養するグリフィスは、ガッツから経緯を聞いて、この世には人智の及ばない巨大な何かが存在しているのかもしれない、と言います。さらに、ガッツは、どうして自分一人を助けようとした、と問うたところ、グリフィスは平然と、「・・・・オレが おまえのために命をはることに・・・・いちいち理由が・・・・必要なのか・・・・?」と、たずね返すのでした。
ひたすら無愛想で心を閉ざしていたガッツが、徐々にグリフィスとの間に信頼をはぐくんでいく過程がいい! 眼前の敵以外、ろくに見ていなかったのが、ラスト近くでは、グリフィスのみを見つめているようです。まあ、男同士の心地よい友情ということですね(青春時代編後半の展開が辛いよぅ!)。けれども、グリフィスには参りましたね。自分の美形ぶりは自覚しているのでしょうから、いくら男同士だからって、マッパになって水浴びするなよ。しかも、隠しもしないのですから(あ、表現上は、あいまいにされています)。グリフィスは腐女子仕様かと思ったのですが、ずっとこういう青年でしたから、仕方ないです。
男らしいといえば、キャスカとのケンカは、口論はしょっちゅうで、一方的にガッツがなぐられています。グリフィスがガッツを甘やかすのが気に入らないと、キャスカは半ば嫉妬しているのでしょう。予備知識がないと、キャスカは男に見えますが、こういう強い少女は好きです。ガッツのようなパワーはありませんが、器用さと機転で戦うタイプですね。
5巻はグリフィスとガッツの関係の他、ゾッドの描写が迫力もの。とても、私ごときの文章では表現できません。牛、巨人、悪魔を合わせたかのように、人間を引き裂いて殺す描写は、すさまじい。流血やむごいシーンが苦手な方は、ご注意ください。まあ、『ベルセルク』では、ほぼすべての巻で生々しくもパワフルな描写に圧倒されますけどね。それでいながら、心理描写もあるのですから、もう脱帽です。さあ、6巻も楽しみ。それでは。
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