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2012年2月12日 (日)

『激マン!』5巻(永井豪&ダイナミックプロ)の感想

 漫画『激マン!』5巻(永井豪&ダイナミックプロ・日本文芸社)の感想を申します。本作以外にも、『デビルマン』のネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 5巻も「デビルマンの章」続行。表紙自体、不動明と飛鳥了が激しく対立している雰囲気濃厚で、漫画家ながい激の物語というよりも、新装『デビルマン』みたい。いや、実際にそうなのですけどね。『激マン!』は、現在休載中でしたっけ。惜しいなあ。

 

 あらすじとしましては、漫画『デビルマン』は、クライマックス&ラストスパート。ロシアが奇怪な光の珠に包まれて消失し、核戦争は回避できたものの、日本の世界的な教授が、とんでもない発表を。
「悪魔の正体は人間だ!!」
「現代社会生活の不満が増大した結果・・・・そのやり場のない不満を別生物になることで満たそうとしたのだ!!」
「(中略)社会に不満を持つ人間がいるかぎり 悪魔化する人間は増え続ける!」
「その種の人間を 社会の中から狩り出さなければならない!」
 そして、中世の魔女狩りをほうふつとさせる、地獄の人間狩りが始まります。ここで疑われるのは、無実の人間か、悪魔と合体したデビルマンばかり。明はデビルマン軍団を結成して、デーモンとの最終戦争に備えようとします。一方、了はすべての事態が自分の考えどおりに進むことに愕然とし、再び、すべての発端となった自宅へ戻りますが、なぜか父の研究成果は失われていて、アルバムの中の了なる少年は、了とは別人で、しかも交通事故で死亡していました。自らの存在すらも信じられなくなり、半狂乱になる了の前に、突然、多くの悪魔が来襲。その中心たるサイコジェニーは、「お迎えに参りました!」と、了に告げるのでした。
 アニメの方は無事に終了し、最終回にて美樹の目の前で、デビルマンに変身するシーンに、ながい激は強い印象を受けます。また、大学生、菊地タダアキ(後のジュニア小説家、団龍彦)と出会い、彼と話すうちに、『デビルマン』に入れる聖書のエピソード、古代の核戦争、天使のイメージ等を、ながい激はふくらませていきます。「オレは計画的にストーリーを作る人間ではないよ・・・・いき当たりバッタリさ」と、言っていた彼は、ついに重要人物、飛鳥了の正体を見定めたのでした。

 ここまで盛り上げておいて、休載ですかぁ? ながい激は、『デビルマン』を描いていて、妙に疲れていますが、現在の永井豪さんでは、体力がついていかなかったのでしょうか?
 とにかく、「現代社会に不満を持つ人々=悪魔、あるいは悪魔化しやすい人々」という勘違いのまま、罪のない人々がむごたらしく殺され、一般市民同士が殺し合う場面は、秀逸です。

「白人はやはり悪魔だ(中略)/だから黒人を差別していたんだ!」
「黒人は 我々白人への不満が頂点にきている/すべての黒人は悪魔化するに違いない!」
「ユダヤ人はアウシュビッツの怨みを忘れていない!/悪魔化してドイツ人を襲うぞ!」
「ドイツ人は悪魔だ!」
「日本人は悪魔化しやすい!/日中戦争を忘れるな」

 今さらですが、私の読んだ漫画作品で、『デビルマン』は、非常に暗く重いテーマを扱っています。私は『デビルマン』とは、新約聖書のヨハネの黙示録以上に、不動明の絶望の物語だと見なしております。悲惨なお話、バッドエンドが苦手な方には、お勧めできませんが、ここまで徹底すると、もう精神的土下座をするしかないです。デーモンの侵略よりも、疑心暗鬼におちいった人間ほど、恐ろしいものはありませんね。
 ここまで描いてくださったのですから、永井豪さんの復帰を、心から願っております。それでは。
 

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