『信長の忍び』5巻(重野なおき)の感想
『信長の忍び』5巻(重野なおき・白泉社)の感想を申します。いくらかのネタバレを含んでいますので、ご注意ください。
うわぁ、やばいです。5巻ともなると、ストーリー展開が落ち着いてきて、ややダレ気味になる・・・・どころか、風雲急を告げます! 表現上のこととはいえ、失礼なことを申して、ごめんなさい、作者様! 精神的土下座! さらに、表紙の千鳥が返り血を浴びて、愛刀の風切も血にまみれ、やや苦しげな表情で表されているように、戦国時武士の情け容赦のない厳しさも示されています。
ストーリーは大きく分けて、前半の姉川の戦いと、石山合戦の前哨戦。前者は織田・徳川連合軍VS浅井・朝倉連合軍。信長は妹の市の夫、浅井長政と、千鳥は恩義ある遠藤直経(えんどう なおつね)と、戦わなくてはならなくなります。以前に子ども向け歴史漫画で、姉川の戦いを読んだことのある私は(頭のスキルが・・・・)、織田側は楽勝できたように思っていたのですが、まるっきりの錯覚のようで! 浅井・朝倉連合軍には、4巻で暴れ回って千鳥さえも苦戦した、大太刀使いの真柄直隆(まがら なおたか)の他に、織田軍への陣中突破で信長の首を取らんとする、磯野員昌(いその かずまさ)、命懸けの奇策で信長を襲撃する、遠藤直経といった面々は濃い! 強い! 現に、磯野は、織田軍第六陣までの(木下秀吉、竹中半兵衛、森可成までいながら)強行急襲突破に成功し、本陣に迫りました。一方、真柄と激突した徳川軍は多大の犠牲を出しますが、本田忠勝が当たります。真柄VS本田、朝倉と徳川の最強同士の一騎打ち、さあ、勝敗の行方は?
と、このように、ネタバレを懸命にこらえておりますが、近頃の展開ダレダレ作品よりも、ずっとおもしろい! そして、千鳥は裏表紙の紹介文のとおり。
「・・・私は 信長様の忍び・『千鳥』!!
それが あなたを殺す者の名前です」(「84 拙者の屍を越えてゆけ」P58より)
そう涙ながらに名乗って、風切でとどめを刺すのでした。
このようにして、姉川の合戦後は、織田軍が横山城を獲得するのですが、森可成とその一家(妻のえい、息子の長可と蘭丸)のエピソードがなかなかに長いです。巻末の予告では、どうやら、森可成が命の危険のある大ピンチに直面する様子。その伏線なのでしょうかね? さらに、信長より年長のはずの森が、なぜかイケメンに表現されているのはなぜかと思っておりましたけれども、あの美少年の名高い、蘭丸の父親だったからですか! 初登場の彼(P75)は、わずか5歳ですが、なかなか利発でかわいいです。
そして、信長がなぜか石山本願寺を明け渡せと、無茶な要求をして、本願寺宗主、顕如と激突する、石山合戦前のお話ですが、頭の輝きがまぶしすぎて、まともに見られない顕如も存在感アリアリで強烈ですが、私はその妻、如春尼こそインパクトがありすぎだと思います。見かけ、リボンのかわいい、ツインテールで、暴走族のレディースみたい。しかも、「じゃ (信長の石山本願寺)明け渡し要求 どーすんだ?」「信長が引き下がるとは 思えねーけどな」(「89 光の射す方へ」P86) と、強気な男言葉! 男勝りな女の子が好きな私には、かなりツボです。6巻以降も、楽しみです。ところで、姉川合戦後、「だが 信長も織田兵も大した事は無い・・・」と、うそぶいて去る、謎の人物がいる(「85 それぞれの姉川」P65より) のですが、これは如春でしょうか?
この前哨戦も、因縁深い斉藤龍興、三好三人衆に、鉄砲傭兵集団、雑賀衆頭領の雑賀孫市が織田軍と敵対して、本願寺の目の前で、争い続けます。柴田勝家、松永久秀らも織田軍に加わって、信長の勝利は間違いなしと、予想された時、本願寺門徒が織田軍に押し寄せてきます。今までの穏健な姿勢を一変させ、顕如が信長を仏敵と見なしたのでした。全国の門徒が信長の敵に? 一体、どうなるの? 信長に勝ち目はあるのでしょうか?
ここで、5巻終わり。姉川の合戦という身内の争いに続いて、打ち倒しにくい、宗教者との戦いと、信長の戦は、どんどんハードルが上がっていくようです。次回も、戦国四コマギャグを楽しませていただきましょう。それでは。
参照
『信長の忍び』3巻(重野なおき)の感想(加筆修正版)
『信長の忍び』2巻(重野なおき)の感想
『信長の忍び』1巻(重野なおき)の感想
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