『ベルセルク』7巻(三浦建太郎)の感想
漫画『ベルセルク』7巻(三浦建太郎・白泉社)の感想を申します。ネタバレがありますので、ご注意ください。
黄金時代篇の続きです。7巻に収録されているのは、「キャスカ(3)」「決死行(1)~(3)」「生還」「夢のかがり火」、そして、メインである(最近の映画でも、ここがテーマだったようですね)、「ドルドレイ攻略戦(1)~(4)」。では、あらすじを簡単に述べましょう。
グリフィスの出現によって、穏やかだったキャスカの人生が、死と隣り合わせに、戦士として生きることに激変します。キャスカは古参として頭角を現しながらも、グリフィスの心の陰り、プライドをも捨てた姿、激しい動揺をも見聞きし、いっそう彼を崇拝していったのです。けれども、突如として出現したガッツの方を、グリフィスは選び、特別扱いしたゆえ、キャスカはその憤懣を涙ながらに、ガッツにぶつけます。そうこうするうちに、二人へ追っ手がせまります。6巻の因縁あるアドンに、その弟で、巨体・怪力の鉄球使い、サムソンが襲撃。ガッツはキャスカをかばって逃がし、負傷しながらも、単身で彼らに挑みます。ようやく、鷹の団と合流できたキャスカは、ジュドー達をともなって、救援に駆けつけますが、真っ先に目にしたのは、おびただしい敵兵士達の死骸。何と、ガッツは百人斬りを行なって、無事に生き残っていたのでした。
その後、本音をぶつけ合い、生死を共にしたためか、ガッツとキャスカの距離がわずかに縮まります。ガッツは、キャスカやグリフィスの生き方に比べれば、自分は大したことはない、「グリフィスというでっけえ炎」に引きつけられただけないのかもしれない、と言い捨てていきます。そんな彼に、キャスカはいやな予感に見舞われるのでした。
そして、ミッドランド王国対チューダー帝国の戦いも大詰めに。チューダー最強の紫犀(シサイ)聖騎士団が守る、難攻不落のドルドレイ城塞攻略にかかります。王にそれを命じられたのは、鷹の団で、しかもグリフィスは、援軍をことわって、5千の騎兵で、3万の城塞駐屯軍にあたろうとします。
また、チューダー内部では、紫犀聖騎士団トップのボスコーン将軍ではなく、かつてグリフィスと肌を合わせたことのある(!)ゲノンが最高責任者に。加えて、弱いくせにしぶとく、ガッツやキャスカを難渋させた、あのアドンが参戦。開戦するや、チューダーは圧倒的な兵力で鷹の団を追撃し、自然と、ボスコーンとガッツの一騎打ちへと展開していきます。同時に、キャスカ率いる部隊は、ひそかにドルドレイ内部へ進攻し、アドンと三度目の戦いに。ガッツVSボスコーン、キャスカVSアドン、決着はどちらに? そして、グリフィスと鷹の団は運命を切り開けるのでしょうか?
実に惜しい! あらすじだけでは、ガッツ百人斬りの迫力、ガッツがキャスカへ話す、問わず語りのかっこよさ、深くていい話っぷりが、百分の一も表せません。それから、ボーイズラブファンの女子の方に朗報なのですが、7巻はグリフィスが軍資金援助のため、ゲノンというハゲ、ヒゲ、メタボの男色家のオッサンに、やむなく身を任せたらしいと、キャスカの目を通じて表現されています。そのものズバリな場面はありませんけれども、意外と、『ベルセルク』は、ガッツとグリフィスの愛憎関係を初めとして、BL率が高いのです。ま、あくまで、におわせる程度ですが。
冒頭では、キャスカの半生を語っていたはずが、いつの間にか、グリフィスの生き方、心情へとスライドしていて、この演出が本当にニクい! よく考えれば、主人公ガッツは、赤ん坊の頃から描かれていますが、グリフィスの方がずっと謎が多いのですよ。あの貴族然とした容姿であっても、実際は庶民の子らしい、ということくらいしか、わかっていません。だからこそ、皆、謎めいたグリフィスに引きつけられるのでしょうかね?
まあ、ちょっと妄想してみても、ガッツとキャスカの決死行とドルドレイ攻略戦の描写はイイ! 迫力満点! 甲冑の描写は、西洋の武器と武具の事典を見ているようですし、ガッツの戦い方こそ、パワー全開の力任せバージョンですが、キャスカは甲冑のすき間や露出した部分をねらい、斬りこんで戦っており、リアリティーを感じられます。恥ずかしいほど、ほめまくって、失礼しました。それでは。
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