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2013年6月12日 (水)

『空が灰色だから』2巻(阿部共実・秋田書店)の感想

 漫画『空が灰色だから』2巻(阿部共実・秋田書店)の感想を申します。いくらかのネタバレがありますので、ご注意ください。

 感想は1巻で述べたことと、ほぼ同じ・・・・って、そんな表現では、苦情が来そうですね。2巻の表紙は、白地に黄色の水玉に、灰色っぽく描かれている、作中の少女が一人(たぶん、第20話の鬼ケ原樹里子)。下手じゃないし、タイトルにもぴったりですけれども、1巻のようなインパクトに乏しいかも。

 作風は相変わらず、かわいかったり、切なかったり、笑えたり、泣けたり。いやぁ、すばらしいものです。ショートなのに、これだけバラエティに富んだディープな内容なのですから。よくある、いつ終わるのかわからない、不動の人気に支えられた、ダラダラ長編漫画の作者様は、どうぞ見習っていただきたい。
 12篇の中で、特に印象に残ったのは、第18話「信じていた」。女子高生の若葉は、野球部でケガのために挫折している涼に対し、奮起してほしくて、わざと厳しく叱咤します。一方、涼へ思いを寄せている、ある計算高い女子もいて・・・・というお話。タイトルの「信じていた」は、若葉の叱咤の十八番であると同時に、秘められた思い、純情が涼へ通じることでもあったのですが・・・・ラストページの冷酷さは、もう絶句ものです。
 もう一つは、第19話「黒」。文字通り、主人公の沢村亘理の回想を除いて、背景は真っ黒なままの不気味なお話。一人芝居のように、彼女は声高に話し、笑ううちに、事態はどんどん恐ろしいことに・・・・。これは、そんじょそこらのホラーよりも怖い!
 他にも、ひらすらキュートな第14話、万華鏡のような表現が複雑な心理にピッタリの第21話、これは天国かそれとも地獄なのか、という第24話もいいですね。
 ところで、私は作者様の絵の特異性に、ようやく気づきました。作風はいろいろであっても、絵柄は皆、かわいらしいのです。大きな目がパッチリしていて、丸顔というパターンが多いようです。そんなキャラクターの愛らしさに油断していると、作風の底にあるダークな部分に、ぎょっと、させられる羽目になるわけですわ。さらに、目の描き方なのですけれども、一見、黒目がちでかわいいのです。が、瞳孔が描かれていなかったり、あいまいだったりで、こちらもまた、登場人物達のどす黒い心情が垣間見えた刹那、戸惑い、うろたえさせられるわけですよ。作者様にとって、日常とは恐怖の塊、不条理そのもの、優しい天使のいる温かな場所ということでしょうかね。それでは。

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