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2013年6月15日 (土)

『激マン!』6巻(永井豪&ダイナミックプロ・日本文芸社)の感想

 漫画『激マン!』6巻(永井豪&ダイナミックプロ・日本文芸社)の感想を申します。相変わらずのネタバレに加えて、作者様をやや批判的に述べる箇所がありますので、ご注意ください。作者様とこの作品を尊敬していらっしゃる方は、あまり読まれぬ方がよいかと思います。

「デビルマンの章」最終巻です。おめでとうございますと、申し上げたいところですが、残念な点がたった一つ、しかし大きな一つが。現在の作者様の絵は、文句ないのですよ。精緻だし、女性はグラマーだし、悪魔はとことんおぞましいし。ラストの『激マン!』製作裏話では、主人公のイケメンながい激誕生、『デビルマン』のあの難解なラストページに続く本当のラスト、当時の読者達の反響の声、ひるがえって、現代社会の未来を暗示するかのような、『デビルマン』の設定や展開について、作者様が思うことなど、非常に興味深いエピソードの山です。ただ、それでも。
「永井豪さん、悪い意味で年をとってしまわれたな!」と、思わずにいられませんでした。
 ながい激と編集者との論争など、製作側の場面はいいのですが、『デビルマン』の各シーンは迫力ある、エグい、むごい・・・・と、いい感じのはずなのに、上滑りというか、表面だけを似せて改良したもののように思われてなりません。やはり、ラストのサタンの描き方ゆえなのでしょうけど。私が原作で彼を見た時、悪魔というより、ヨハネの黙示録に登場する天使を思い浮かべたのでした。まぎれもない、美しい天使、しかし冷酷で恐ろしい存在! それでいながら、見栄や俗っぽい想念はかけらもなく、極めて純粋な心の持ち主であるサタン。そんなサタンを怖く思いながらも、最終ページ直前のその涙には、私も胸がジンと痺れたものでした。そんな当時を思い起こしはしましたが、今の作者様のタッチでは、有無を言わさず魅了する力を感じられませんでした。やはり、当時の作者様であればこそ、『デビルマン』は描けたのでしょうね。
 それでも、この6巻は掲載雑誌にふさわしく、『デビルマン』の各エピソードがアダルト向けに演出されており、それはそれで楽しめますね。美樹は少年誌向けにあいまいに表現されていましたが、悲惨な殺され方でした。暴徒の手にかかる女性は、皆、そうなのでしょうね。彼女はもっとも気の毒ですが、明も痛ましい。せっかく、デビルマンになったのに、かけがえのない人達を次々と、しかも自分が守ろうとした人間によって殺されていったのですから。私のお気に入りの場面は、後半の、疲労困憊したながい激を懸命に励ます、明と了のやり取りです。作中では敵同士になるものの、プライベートでは仲の良い、俳優同士のようで、暗いエピソード、ハードな製作現場が連続する中で、とても心温まる場面です。
 そんな『激マン!』6巻のラストは、主人公が明から、あの荒野にたたずむ謎の巨人へと変わっていました。ともあれ、製作秘話はおもしろかったので、次の章も描いていただければと、私は願っております。それでは。

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