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2013年7月 2日 (火)

『星界の戦旗Ⅴ 宿命の調べ』(森岡浩之・早川書房)の感想

 スペース・オペラ小説『星界の戦旗Ⅴ 宿命の調べ』(森岡浩之・早川書房)の感想を申します。いくらかのネタバレが含まれておりますので、ご注意ください。

 後書きを読んで思いましたが、作者様、どうぞ体調に気をつけてください。本当にもう、前作『軋む時空』(どこへいったか、不明)から、何年ぶりの新刊ですか! 読みながら、確か、星界軍の敵、三カ国連合(ハニア連邦だそうで)が、思いがけない強烈な反撃を開始したのだったっけ、と考えておりました。簡単なあらすじとしては、次のとおり。

 帝都ラクファカールから、ソトリュール鎮守府への緊急遷都計画発動。要するに、アーヴ帝国民の大規模一斉退避行動が、皇帝ラマージュによって発令、実施されるわけです。主人公のラフィール(ヒロインだが、らしくないですな)、ジント(地上人。苦労人)は、忘れじの広間の英雄芳名碑を運搬するという、翔士らしからぬ平和な命令を実行するのですが、皇帝や上皇達、ジントと以前に縁があったフェブダーシュ前男爵など、年長者達は若い人々を守るため、捨て身の防御を行ないます。結果、ラフィールの祖母である皇帝ラマージュ、曾祖母ラメーム、最年長上皇のドゥスーム、ドゥセーフ、フェブダーシュ前男爵と、次々に亡くなります。それでも、ラフィールとジントは無事で、初陣ながらも危なかった、ラフィールの弟、ドゥヒール(姉とは正反対のクールな人柄)も生き残りました。多大の犠牲を払いながらも、遷都は成功し、かくして、ソトリュールのラクファカール・セラにて、皇太子ドゥサーニュの即位式が行なわれます。そして、第28代皇帝ドゥサーニュは暫定的ながらも、ラフィールを皇太女に指名し、提督に昇進させます。キャリアのないラフィールですが、拒否することはできません。彼女は指揮杖を受け取り、その重さを痛感するのでした。
 ここで、戦旗シリーズの第一部完結だそうです。まあ、皇帝の孫にあたるラフィールが、昇進しないわけなかろうと予想していたのですが、すさまじい段階まで及んだものです。それにしても、ラフィールやジントと関わりの深い人々が、圧倒的に不利な戦いの中で命を落とすというのは、やはり、胸が痛くなりました。今回、そのような永別の場面の印象が強くて、戦友以上のこの二人の場面が少ないのが、短所かもしれません。
 でも、私はアーヴの、忘れじの広間のこと、自己を犠牲にして大勢を助けることに対するアーヴのこだわりなど、様々な設定はさすがだなと、精神的土下座をせずにいられませんでした。前半の、ラフィールの入浴場面(雪を降らせて楽しんでいるところへ、ラマージュが入ってくる)は、想像すると、なかなか色っぽいと思うのですが、どうでしょうか。
 もっとも、私が一番おもしろく感じたのは、上皇ドゥスームとドゥセーフのやり取りです。命がけの戦闘中なのに、育ちがよすぎるせいか、土壇場で見苦しく取り乱すのは彼らの価値観や美学に反するからなのか、妙におっとりしていています。

「ほう」ドゥスームは興味深げに、「まだ状況に悪化する余地があるとは驚きだ。なにがまずいと仰せなのだ、猊下(ニソス)?」
「よもや地上戦に持ちこむつもりとは思わず、もてなしの準備ができておりません。アブリアルの名に傷がつく。それに・・・・」
「それに?」
「予想外のことをされると、敵が好きになってしまいそうです」
「なるほど。深刻だな」ドゥスームは心から同意した。

「われらの故郷を破壊するのに、戦列艦(アレーク)三隻か。ずいぶん安上がりに済ませてくれる」ドゥセーフは悔しげにいった。
「そなたが感情をあらわにするのは珍しいな、猊下(ニソス)」とドゥスーム。
(中略)「しかし、お言葉をそのままお返しいたしますよ。わたしは猊下(ニソス)が目を開いているところを初めて見ました」
(中略)「そなたの泣き顔にはそれだけの価値がある、猊下(ニソス)」

 いずれも、「5 宿命の調べ(リネーブ・ファゼトラグ)」からですが、お貴族様の漫才のようで、私は笑ってしまいました。
 さて、進みそうで足踏み状態の、ラフィールとジント。将来的に、「そなたの遺伝子が欲しい」と、ラフィールが告げる日が来るのでしょうか。ドゥヒールは、今後、誰と、どのように接していくのでしょうか。あの無愛想なコトポニー元帥と??
 今回は、コトポニーが一言主、アブリアル王家の一つ、バルケーが、「はるけき」という語源ではないかと思いましたね。私の好きな、スポール大公爵が出演していて(参謀クファディス、またもや大苦労!)よかったのですが、トライフは出番なし。次こそは、登場してほしいものです・・・・。いや、ぜいたくは申しません。作者様、健康に気をつけて、次はもっと早く発行してください。と、冒頭の繰り返しになりつつ、それでは。

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