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2014年1月 5日 (日)

『鬼平犯科帳~金太郎蕎麦~』(原作:池波正太郎 脚色:久保千太郎 劇画:さいとう・たかを リイド社)読後の感じ

『鬼平犯科帳~金太郎蕎麦~』(原作:池波正太郎 脚色:久保千太郎 劇画:さいとう・たかを リイド社)読後の感じを、簡単に申します。いくらかのネタバレがありますので、ご注意ください。

 このシリーズ本も3冊目で、読み慣れてきたかな、という感じです。が、相変わらずながらも、ストーリーのどんでん返しや思いがけない伏線には、驚かされてしまいます。これはもう、ぜひとも、なるべく早く、原作の小説版を読むべきなのでしょうね。

 収録されているのは、3編です。まずは、金太郎の彫物をしている、蕎麦屋の美人女将の深い事情と、それにまつわる盗賊の謎を描いた、「金太郎蕎麦」。これは、蕎麦の描写がおいしそうです。登場人物の一人が語る、美味な蕎麦にする工夫など、時代ミステリーファンと蕎麦好きの方にはお勧めです。
 次の「殿さま栄五郎」では、盗賊一味を一網打尽にすべく、鬼平こと長谷川平蔵は、「殿さま栄五郎」の異名を取る、見た目が立派な盗賊の浪人になりすますのですが、思いがけず、正体が露見してしまい・・・・というお話。私は3編の中で、このお話が一番好きです。皆から鬼平と恐れられる平蔵が、自分は涼やかな目つきの殿さまに見えるかと、久栄やお園に、恥ずかしそうにたずねる表情が、何だか憎めません。一応、結末では悪を懲らしていますけれども、元盗賊とはいえ、ほぼ堅気の花屋の主人が、本人もわけがわからないまま、惨死するあたり、情け容赦のない和風ハードボイルドの雰囲気を感じます。
「師走の湯豆腐」、酉の市で起こった、連続刺殺事件の謎。平蔵が出会った香具師の元締から、湯豆腐を出してもてなされるのですが、この美味な一品が刺殺事件と結びついて・・・・というもの。おとなしい人物の、静かな憎悪と復讐が、空恐ろしいお話です。これもまた、悪は懲らされましたが、真の被害者の空虚な心は、果たして満たされたのでしょうか。
 蕎麦に湯豆腐、それから、平蔵と密偵達が集まる店の軍鶏鍋など、おいしそうな江戸料理のオンパレードです。でも、読後はなかなか、ほろ苦いですね。それでは。

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