『花のズボラ飯1、2巻』(原作:久住昌之 漫画:水沢悦子 秋田書店)の感想
『花のズボラ飯1、2巻』(原作:久住昌之 漫画:水沢悦子 秋田書店)の感想を申します。いくらかのネタバレが含まれておりますので、ご注意ください。
なかなか、おもしろかったです。メジャーうけもするのではないかと、思います。
主人公は、30歳の主婦、駒沢花。夫のゴロは単身赴任で、子供はおらず、本屋で働きながら、日々を一人ですごしています。勢い、家事が手抜きで、部屋中に物が散乱している、ズボラな有様なのですが、おいしいものへの探求はやめられず、手抜きなりに、楽しくおもしろく、パパッと料理をしている、というお笑いエッセイ風漫画。ほぼ一話完結ですが、2巻から緩くつながっています。
アマゾンのマイナス評価では、花がズボラすぎる、食べ方が汚い、という感じでしたが、私は許容範囲でした。だらしなくはあっても、不潔でなければ、いいのではなかろうか。花のたるんだ表情も、よく見かける漫画上の表現だし、ということで、スカ(自主規制)やエネ(同じく)系に走っていなくて、ホッとしましたよ。
でも、ワタシ的マイナス評価はあるのです。1巻の16皿めで、花は大阪の黒蜜ところてんを、オーバーアクションで絶叫して拒否しておりますが、味覚は大阪である私からすると、彼女の醤油、お酢、練りからし、青海苔のところてんは、信じられへん世界です! なぜ、あんなおいしい真夏の伝統的スイーツであるところてんを、春雨サラダもどきみたいにして食べるん? さっぱり、わからへん!
もう一つ、細かいことかもしれませんが、2巻の21皿めで、ビシソワーズのエピソードがあったのですが、一瞬、私、何ソレ状態でした。これは、ヴィシソワーズ! いや、花も私も、ヴィの発音が言えなくて、ビになっていることは百も承知。けれども、あの夏の冷たいスープ、ヴィシソワーズは、ビシッと、ヴィと表してこそ、ヴィシソワーズであって、ビシソワーズでは、特別感も高級感も、ビッと、即座に逃げていくような気がします。
2巻ねえ・・・・いっぱい食材を使用していて、ちっともズボラ飯ではないエピソードがあったり、花の個人的事情や、彼女と関わりのある人々のことにも触れられていて、1巻のおもしろさに慣れ、期待していると、と惑わされてしまいます。本当のところ、3巻は買おうか買うまいかと、迷っているほどなのです。
その代わり(?)、1巻はおもしろい。花のしゃべくりと、ギャグタッチの動作がナイスです。しかも、彼女は一人きりで、ボケとツッコミみたいな自問自答を行なっています。今まで、私はこんな明るくて大笑いできる、モノローグ作品を見たり読んだりしたことがありません。例えば、1巻4皿めの、カレーを食べようとする場面では。
「・・・・こりゃごはんに対して さすがにルー多すぎでしょ ルー大柴でしょ
ごはん増量やむなし!!
ですよねーっ
うwwん もうちょい追加・・・・ ・・・・
もう気持ち・・・・」
「結局普通盛りに・・・・
いや・・・・やや大森貝塚・・・・?」
(中略)
「このうまさには 大盛り貝塚 やむを得ず!!」
「・・・・あ 花らっきょう 忘れてた 花が花らっきょう忘れてどうする!!」
その他にも、1巻には、スポーツ実況中継風のキムチチャーハンを料理しているところもあるのです。
で、繰り返しになりますが、1巻の、花の軽快なワンマンショーというか、パフォーマンス舞台が、2巻では、グルメ漫画によくあるパターンにおちいりかけているように思われ、とても惜しい気がします。やはり、2巻の雰囲気というか作風の方が、万人受けするということなのでしょうかね。そういうわけで、猛烈によかったけれども、続きは不安を感じる、実に微妙な感想なのでありました。それでは。
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