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2017年1月20日 (金)

『わたしが鳴こうホトトギス』(戸川純 with Vampilla)の感想

 CDアルバム、『わたしが鳴こうホトトギス』(戸川純 with Vampilla)の感想を申します。いくつかのネタバレに加えて、私は戸川純もVampillaもあまりよく知らない(特にVampillaは初耳でした。ごめんなさい)ので、無意識にひどい間違いをしている恐れがあります。ゆえに、悪意ある誹謗中傷はおことわりですけれども、ミスに気づいた方は、コメント欄に投稿してください。

 さて、これは、戸川純の歌手活動35周年記念のアルバムです。CDのデザインはもちろん、ブックレットにも本人らしい、かわいらしい幼女・少女の写真が多く掲載されていて、ほっこりした気分になれます。さらに、CDが通常のケースはめこみ式ではなくて、薄い袋にくるまれていて、レコードっぽいというか、レトロな雰囲気の外見です。
 収録曲は次のとおり。

 1.赤い戦車
 2.好き好き大好き
 3.バーバラ・セクサロイド
 4.肉屋のように
 5.蛹化の女
 6.12階の一番奥
 7.諦念プシガンガ
 8.Men's Junan
 9.わたしが鳴こうホトトギス
 10.怒濤の恋愛

 はぁ、なつかしい。紅林実家には、2008年発売のアルバム以外は全部そろっていて(ただし、どこにあるのか不明。うぅ、私は最低のファンです。すみませぬ)、耳の奥や頭の中で、あれやこれやのフレーズやリズムがよみがえってくるのを感じました。
 そのような現象自体、他の歌手様や歌であろうと、当然ながら起こるものなのですが、戸川純の歌詞と歌は、かなり独特です。
 加えて、本人のいつまでも少女のような、時には切れた怖い女性、または、どことなくエロかったり、天然のような、聡明なようだったりと、そんな不思議なキャラクターとあいまって、歌が歌を超えて、叙情詩やドラマのように感じられるのです。
 村上龍が『ラッフルズホテル』の解説で述べたところの、「イメージ喚起力」というものを持っているのだと思います。
 だから、私は「蛹化の女」の後半のフレーズで、虫に変わり果てた女性が、思いがけない彼氏との再会で、虫の目のまま涙を流す情景が思い浮かびました。胸が熱くなります。恋の甘さ以上に、痛みと辛さが身にしみます。
 このように、美しくも不思議な映像や想像を生み出してくれる歌だからこそ、戸川純はいいと思います。
 ただ、正確な音程や美声といった、スタンダードな歌を求める方には、ちょいときついかな? 今まで行ったライブも、はじけていたものがありましたからね。
 しかしながら、自殺未遂騒動で、「皆憎」というメッセージを知った際、私は、「あ、この皆は私という端くれのファンも含まれているのだろうな」と思って、一時、ファンをやめていたのですが。
 このアルバムの発売を知り、また、大阪でライブがあるとわかって、即刻、購入&申し込むや、私の頭の中に、かつて以上のイメージや音が復活してきました。
 とても楽しいし、エキサイティングな内容ですよ。
 何よりも、戸川純が同じような声で、また異なるアレンジの歌い方をしてくれているのが、すごくうれしく、世界が広がったような気分になれました。
 その上で、「わたしが鳴こうホトトギス」を聞いてみますと、彼女が来し方行く末を静かに見据えつつ、これからも歌っていこうと、さりげない決意表明をしているようで、またまた喜んでしまいました。
 けれども、ホトトギスって、インパクトのあるきれいな鳴き方をするのですが、托卵をする鳥で、民話や伝説では、元は人間だったのに鳥に変わっても、昼夜を問わず、血を吐くほど鳴き続ける、悲劇の存在なのですよ。
 戸川純の活動を喜ぶ一方、私は彼女が必要以上に傷つかないよう、応援せずにはいられませぬ。私もまた、ファンに戻ります。それでは。
 

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