『聖隷』(山本夜羽音・富士美出版)の感想
成年コミック『聖隷』(山本夜羽音・富士美出版)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
女性一人称モノローグが多めなのです。加えて、男性向けエロコミックは、基本、男は邪魔っぽく、性器を除けば、適当に描かれることさえあるのですが、ストーリーには大きく関わるものです。けれども、この作品集では、男性に性感を開発されながらも(「蕾」「蠱惑」など)、主体は女性にあるように感じられるのです。
それがいっそうエスカレートしているような作品は、ヒロインと息子の嫁の禁断の交わりを描いた「淫嫁猥母」、「アリエナイハナシ」もまた、女子学生と、ニューハーフ女性教師のエロスという、レズビアン的なお話も含まれています。よく表現されている、野獣のような男に、清純無垢な少女が蹂躙されて、精液まみれで半死半生になる、という、非常にムカつくストーリーがないのは、実にうれしいです。
レディコミも含めたエロ漫画は、読んで興奮すれば、それでオシマイ、なのかもしれませんが、心理描写や伏線など、演出が凝っているのも、いいポイントです。
残念なところは、作者様のあらすじなのですけれども、小さな文字ビッシリで、読みにくいです。まあ、作品と直接関係がないのですが。
それでは、特に私の好きな作品の感想をちょこっと。
「蕾」、冒頭から、飛ばして(?)います。愛らしい女子学生が下品猥褻な言葉を話すって、エロいですね。
「蠱惑」、タイトルがたまらなくいい! ネタバレなので、あまり言えなくて残念です。
「仮面の独白」、締めくくりあたり、女帝の台詞が恐ろしいようで、エロいです。母、妻、女帝か。
「淫嫁猥母」、しとやかに優しく、しかし確実に、忍び寄り、姦淫のわなにはめる若嫁に、ぞくっとします。
「NYMPH(ニンフ)」、夫のいる隣室で、他の男と、手当たり次第に関係する、最低の妻。この作品は珍しく、バッドエンドで、夫のモノローグで締めくくられています。「愛しているなら 憎んでほしかった 縛ってほしかった」と、ラスト近くで涙ながらに語る、妻の台詞が胸にしみます。
この作者様の他、いいエロ漫画は少ないながらもありますので、また感想を述べられたらいいなと思います。それでは。
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