『凍鶴』(上村一夫・小学館文庫)の感想
コミック『凍鶴』(上村一夫・小学館文庫)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
お話は、こごえた足を温めようとして、片足立ちをする癖のある少女、「つる」が成長し、やがて、「鶴菊」と名乗る、一人前の芸者となる、というもの。最初、故郷から売られて、置屋の「仕込みっ子」だったのが、あでやかな姿の芸者となる様子が、なかなか見事に描かれています。
緩くつながっていますが、ほぼ一話完結で、どこから読んでも大丈夫な構成です。時代的には、昭和初期から太平洋戦争の渦中まででしょうか。後半は、客に兵隊が多くなり、暗い世相を感じさせながら、やや唐突な感じで終わります。休載なのか、普通に連載終了したのか、よくわかりません。私はおもしろい、いい内容だと思ったので、終戦か、芸者のつるについた仕込みっ子、お春(美貌のつると違って、器量は今一歩)が独り立ちするまで、続いていたらなあ、と思いました。
何年頃、どこに掲載されていたのか、この本だけでは不明という、やや不親切な作りですが、後書きは阿久悠がエッセイを載せています。読了してから思うに、阿久悠と上村一夫、天才二巨頭が親しかったって、ものすごいことがあるのですね。そして、天才ゆえに、この作者様は早く亡くなったのでしょうか。実に惜しい!
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