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2017年11月27日 (月)

『凍鶴』(上村一夫・小学館文庫)の感想

 コミック『凍鶴』(上村一夫・小学館文庫)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 私はずっと、「とうかく」と読んできましたが、「いてづる」でした。ごめんなさい。
 お話は、こごえた足を温めようとして、片足立ちをする癖のある少女、「つる」が成長し、やがて、「鶴菊」と名乗る、一人前の芸者となる、というもの。最初、故郷から売られて、置屋の「仕込みっ子」だったのが、あでやかな姿の芸者となる様子が、なかなか見事に描かれています。
 緩くつながっていますが、ほぼ一話完結で、どこから読んでも大丈夫な構成です。時代的には、昭和初期から太平洋戦争の渦中まででしょうか。後半は、客に兵隊が多くなり、暗い世相を感じさせながら、やや唐突な感じで終わります。休載なのか、普通に連載終了したのか、よくわかりません。私はおもしろい、いい内容だと思ったので、終戦か、芸者のつるについた仕込みっ子、お春(美貌のつると違って、器量は今一歩)が独り立ちするまで、続いていたらなあ、と思いました。
 何年頃、どこに掲載されていたのか、この本だけでは不明という、やや不親切な作りですが、後書きは阿久悠がエッセイを載せています。読了してから思うに、阿久悠と上村一夫、天才二巨頭が親しかったって、ものすごいことがあるのですね。そして、天才ゆえに、この作者様は早く亡くなったのでしょうか。実に惜しい!

 そのようなわけで、私はつい最近まで、上村一夫の名前も作風も知らずにいたのですが、そのままだったら、マンガファンとして大きな損失だったでしょう。本当に、ページから抜け出して読み手に語りかけてきそうな、存在感のある人物を描かれています。表情の細やかさもさることながら、モノローグやセリフも印象的で、特に、女性は美しく上品で、しかも、つやめいています。実際、少女のつるが、病気の少年に乞われて着物を脱ぎ捨てたり(第一話)、手ひどいいじめと、全裸で踊ったり(第六話)、おつるの姫やかな恋と、お春の体の秘密(第九話)など、エロいシーンは満載です。
 ジェットコースターストーリーや、驚くほどのどんでん返しはなく、話の筋自体は地味かもしれません。しかし、じっとりと、熱が伝わってくるような、生々しさが感じられ、つるを含めた登場人物達も、憎たらしくも愛嬌があり、賢いようで、どうしようもない愚か者ばかり。各話を読んで、笑わされたり呆れたり、むかつき、笑っているうちに、「ああ、人間て、男女を問わず、孤独なんだ。温もりや優しさが欲しくてたまらないのだな」と、切ない気分になってきます。
 私は、芸者を目指し、芸を磨くという、あまりブレのないヒロインのつるももちろん好きですが、不器量なくせに口達者な仕込みっ子、お春も好きです。どちらかというと、きれいな姐さんにおべっかを使う(第三話)、そんな小生意気な少女だった前半の方が好きですね。これからも、この作者の作品を読んでみようと思います。それでは。

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