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2017年12月25日 (月)

『一葉裏日誌』(上村一夫・小学館文庫)の感想

 コミック『一葉裏日誌』(上村一夫・小学館文庫)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

 相変わらず、初掲載された雑誌名と年月日が載せられていない、不親切仕様ですが、この本に収録されている作品は、次のとおり。
〇一葉裏日誌 「たけくらべの頃」「花ごもりの頃」「にごりえの頃」
 樋口一葉がヒロインの、3つの短編マンガです。
〇うたまる
〇帯の男 第一話~第六話
 後書きは、何と作者の娘さんの、上村汀という方で、「父との思い出」という形で語ってくれています。それこそ、幼い頃から死の間近まで。私自身、上村作品を読むと(わずかな数しか読んでいませんが)、上村一夫というクリエイター(漫画家というべき? しかし、イラストレーターのようにも思えます)は、海千山千の女性の扱いや気持ちにたけた、女心のプロフェッショナルと感じられていたのですが、なかなかおもしろそうな人柄のようで、実に意外でした。

 作品の感想としては、「うたまる」は、習作っぽい感じがしました。蔦重、歌麿、おひさのキャラクターはいいのですが、もっと掘り下げてほしかったですね。
「一葉裏日誌」は、雰囲気的に、かなりドロドロというか、暗いといいましょうか。一葉が推理していく展開なのですけれども、ストーリーはシンプルです。ひらめいた時の一葉、みどりのおませっぷり、イケメンの桃水のずるさなど、印象的な場面が多いです。一葉は文才があって聡明ながらも、桃水なんぞに惚れているし、完全に正しい人物があまり登場しませんね。
「帯の男」でも思いましたが、むしろ、優秀なようで、欠点があるような人々のお話ゆえに、読了すると、ほろ苦いものが胸に広がります。読後感はよくないかもしれません。しかし、私はこの妙にリアルで、しかもロマンティックな雰囲気が好きです。
 さて、「帯の男」ですが、私は「一葉裏日誌」よりも気に入っています。主人公の帯師(着付け師といってもいいのではないかと思うのですが、彼は花柳界の女性の帯を結ぶのが専門なのです)、源さんという五十代くらいの男が、様々な男女と出会い、帯を結び、その帯で切り裂いたり、刃物を防いだり(作品を読んでみてください)、涙を流したり、微笑み合ったりする短編集です。
 源さん自身もわけありの人生を送っています(第二話、第四話)が、穏やかそうな人柄の、割烹か一杯飲み屋風のお店、伊勢屋のお涼さんという年配の女将さえ、京都で激しい恋情に燃えて、新進がボロボロになった過去を抱えています(第二話)。
 レギュラーキャラは、源さんとお涼さんですが、ゲストキャラもとても魅力的です。第一話の、正ちゃん(予想外に好人物)、第二話の暴走族出身の桂、第五話の顔師の由紀、第六話の荒縄結びの今日子など、一話限りの登場がもったいない、とさえ思ってしまいます。
 何よりも、源さんが伊勢屋、もしくは自宅で自らつくる、酒の肴が、ものすごくおいしそう! 精緻な絵ゆえに、飲めない私も、味わいたくなります。特に、第五話ラストの粋な趣向(酒肴?)は、本当にすばらしい!
 私が特に好きなのは、困った人、怖そうな人が、好ましくまとまって明るい未来を感じさせる第一話、京都が舞台の第五話、黄八丈に荒縄結びの今日子が、自らの津軽三味線によって情熱的な異国の音楽と運命を結びつける、第六話です。お勧めですよ。また上村作品を集めて読んで、こちらにアップするつもりです。それでは。

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