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2018年5月28日 (月)

『僕はサラ金の星です!』(安部慎一・青林工藝舎)の感想

 コミック『僕はサラ金の星です!』(安部慎一・青林工藝舎)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。

『エロマンガ・マニアックス』を読了してから、安部慎一作品をこつこつ入手しまして、何とか3冊になりました。この『僕はサラ金の星です!』は、一冊目です。
 そんなマイブームが起きている、安部慎一(槇一と印刷されている本もあります。どちらが正しいのかな?)作品ですが、一番にお勧めするとすれば、私はこちらですね。
 収録されている作品は、大半がエロマンガに分類されるのでしょうが、作風も画風も、かなり癖? 個性? があるゆえ、ついていけない方もおられると思います。このように言う私も、頭の中が、「????」だらけで、感想のカの字も出ないお話もありますから。
 少なくとも、通常の、読者サービス満載のエロマンガ、怒涛のような展開、独創的な設定といった、メジャー王道漫画的なものは、ほとんど含まれていないかと思います。

 冒頭の、『僕はサラ金の星です!』にしても、ストイックな主人公の室井と対照的に、あっさり身を持ち崩す人妻、せっかく室井に助けられたのに、悲惨なことになる女子高生と、エロいにはエロい、のですが、スクリーントーンを使っていないような緻密すぎる描きこみ、デフォルメしすぎのような女体の描かれ方に、頭がクラクラしてきます。
『やさしい人』は、1970年のデビュー作だそうで、ストーリー的には、「え、もう終わり?」という感じなのですが、わびしいような余韻が残ります。
『久しぶり』は、私小説ならぬ私マンガ? 登場人物達の視線が、妙にぼやけているのが気になります。
『殺人事件』、淡々としたナレーションやモノローグが流れる一方、事件の描写はすさまじいです。
『15才のミヨちゃん』、転校してきた美少女に、こんなむごい仕打ちが待っていたのでしょうか? それとも、彼女に恋する三村の、想像物語? 『やさしい人』からこちらまで、まるで漫画家志望者が一生懸命描いたっぽい、ラフな感じで描かれています。それから、一転して、リアルで精密な劇画絵に。
『剣道劇場』、少女の揺るがない、強い眼差しが好きです。彼女も、美代子という名です。

『遠い激情』、鬼畜なのは、登場する男と女、どっち? 巻末の、「安部慎一自作解題インタビュー」で、顔が変、と言っておられますが、私はこの救いのなさがリアルでいいと思います。
『結婚物語』、また驚くほどのシンプル絵に。おでん屋から、男の一人暮らしの一室へと移動しながら、行きずりの男女が語り合います。うらわびしい、寒々しい感じから、ほっこり温かく、未来に希望が持てるような雰囲気に変わるのがいい。この本の中で、私の一番のお気に入りです。
『いらっしゃいませ』、ラフっぽい絵です。風俗のドロドロ話? 怪談? と思いきや、ハッピーエンド? 幽霊がかわいそう。
『炭鉱情話』、未発表の短編6作です。炭鉱のことは、歴史の教科書か歌ぐらいしか知らないので、その凄惨な境遇については、私はただ、絶句するしかないのですが・・・・エロいです。男女は、地獄の底にいようとも、互いに求め合い、つながり合うものだと、痛感させてくれます。

 以上、たどたどしい文章でしか書き表せず、残念です。しかしながら、漫画というよりは、純文学の小説を読んだかのような、心にずっしり残る気分にさせてくれる、稀有な作品だと思います。私はとても好きですね。それでは。

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