『田中圭一のペンと箸~漫画家の好物』(小学館)の感想
『田中圭一のペンと箸~漫画家の好物』(小学館)の感想を申します。いくつかのネタバレが含まれていますので、ご注意ください。
内容としては、有名な漫画家のご子息やお嬢さんをお招きし、その漫画家の好物を紹介しつつ、その思い出を語ってもらう、グルメレポートマンガです。登場される漫画家は、一大ブームを起こした方々ばかり。それらを、田中圭一さんが、その漫画家とそっくりなタッチで描いていくというもの。さらっと読めますが、一つ一つ、奥が深いです!
登場する漫画家は、かなり多いので、amazonで調べてみてください。
では、最初にいただけない点ですが、少女漫画家さんが少なくて残念、ということですね。できれば、2巻目が発行される時、大家の方々も登場してほしいです。
この本のお得な点としては、つぎのとおり。
1.好きな、もしくは興味のある漫画家のプライベートを知ることができる。
2.ファンである漫画家の好物を知り、そのお店(場所も紹介されています)に行って、感動を共有し合える。
3.その漫画家の好物が、自分の嫌いな食べ物ならば、好き嫌いを克服できる(あいにく、私には無理でしたが)。
4.知らない漫画家の作風、作品を田中圭一さんのタッチで知ることができ、新たな名作に出会えるチャンスとなる。
5.おいしそうな食べ物と同時に、漫画家の描いたエッセイとは異なる、等身大の人となりを知ることができる。
6.漫画家の創作の秘密が、多少なりとも明かされている。
特に、私が好きなエピソードは、赤塚不二夫、ジョージ秋山、上村一夫、かわぐちかいじです。
赤塚不二夫のお嬢さんは、めったにないような不幸な出来事にあうのですが、それを救ったのが、他ならない、父上の作品であったということ。
ジョージ秋山は、この本の中で、もっとも怖い容姿ながらも、ちゃんと息子さんのことを思っていた、ということ。
シャイで不器用な父親だった上村一夫は、生前に別な顔も持っており、娘さんがそれを少し残念そうに語っていたこと。
魂の半身ともいうべき弟さんと、かわぐちかいじが、ホームで別れる場面で、私は完全に田中圭一さんの漫画であることを忘れていました。淡々と語り、励ます弟さんに対して、かわぐちかいじは、一言も言わず、ただ見つめているだけなのですが、どれほど強い感動と、漫画という創作の世界に突き進む決意を固めたことでしょうか。
何作品かで、私は胸がジーンとしたり、涙ぐんだりもしてしまいました。やはり、できれば、続編や2巻が発行されてほしいところです。それでは。
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